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立夏のこどもの日 そろそろ夏の気配ではなく既に夏の様相

饒村曜気象予報士
立夏 蛙始鳴(提供:アフロ)

こどもの日は「立夏」

 今年、令和6年(2024年)5月5日のこどもの日は、二十四節気の「立夏」です。

 約15日間ある節季を初候、二候、三候と3等分したのが七十二候ですが、そろそろ夏の気配という「立夏」は、初候が蛙始鳴(かわずはじめてなく:タイトル画像)、二候が蚯蚓出(きゅういんいずる)、三候が竹笋生(ちくかんしょうず)に分けられています。

 気温が高まって植物が茂る「小満(今年は5月20日)」までの間に、カエルが鳴き、ミミズ(蚯蚓)が地上に這いだし、竹の子が生え始めるという意味ですが、今年の場合は、カエルもミミズもびっくりするほど早く気温が高くなっています。

 5月5日12時の衛星画像を見ると黄海にある低気圧に向かって暖かくて湿った空気が流入し、九州北部には雨雲がかかっていますが、その他の所は、日本の東にある大きな高気圧におおわれ、晴れとなっています(図1)。

図1 晴天域が広がる日本列島と地上天気図(5月5日12時)
図1 晴天域が広がる日本列島と地上天気図(5月5日12時)

 このため、強い日射と南からの暖気流入で、各地で気温が上昇しています。

 5月5日のこどもの日に、最も気温が高かったのは、石川県・加賀中津原の33.8度で、4月29日に沖縄県石垣島の伊原間(イバルマ)で観測した32.8度を上回り、今年一番の気温となりました。

 また、関東・北陸・東北を中心に20県の116地点(気温を観測している全国914地点の約13パーセント)で最高気温が30度以上の真夏日を観測しました(図2)。

図2 こどもの日(5月5日)に真夏日を観測した20県
図2 こどもの日(5月5日)に真夏日を観測した20県

 また、最高気温が25度以上の夏日は、524地点(約57パーセント)もあり、真夏日とともに、これまで最多だった4月28日を上回り、今年最多となりました。

 4月10日には、最低気温が0度未満の冬日を270地点(約30パーセント)で観測していますので、約1か月で様変わりです(図3)。

図3 全国の真夏日、夏日、冬日の観測地点数の推移(5月6日と7日は予想)
図3 全国の真夏日、夏日、冬日の観測地点数の推移(5月6日と7日は予想)

振り替え休日(5月6日)の天気

 振り替え休日の5月6日は、黄海の低気圧が発達しながら日本海へ進んでくる見込みです。

 このため、九州や中国・四国は雨で、雷を伴って激しく降る所もあるでしょう。近畿から東海も午後は雨の見込みです(図4)。

図4 振り替え休日(5月6日)の昼過ぎの天気分布予報
図4 振り替え休日(5月6日)の昼過ぎの天気分布予報

 関東から北陸・東北は曇りですが、夜は雨の所もありそうです。

 また、北海道は雨、南西諸島も曇りか雨というように、ほぼ全国的な雨になりそうです。

 曇りや雨で日射がないことから、こどもの日ほどは気温が上がらず、真夏日、夏日の観測地点数は大幅に減りそうですが、減っても、これでほぼ平年並みです。

 東京の16日先の天気予報をみると、雨の降りだしが夜になる5月6日は最高気温が25度と、夏日の予報となっています。ただ、低気圧の通過後は前線が残って曇りや雨の天気となり、下層寒気の影響で、9日の予想最高気温は20度と、久しぶりに平年より低くなる見込みです(図5)。

図5 東京の16日先までの天気予報(ウェザーマップの予報)
図5 東京の16日先までの天気予報(ウェザーマップの予報)

 ただ、そのあとは、お日様マーク(晴れ)と白雲マーク(雨の可能性が少ない曇り)が続くときと、傘マーク(雨)と黒雲マーク(雨の可能性がある曇り)が続くときが交互に出現する予報です。

 降水の有無の信頼度が5段階で1番低いEが多く含まれている予報ですが、気温は高めに経過する見込みです。

 今年の東京の最高気温は、平年より高い日が多く、しかも、2月20日に23.7度、3月31日に25.1度、4月28日に28.2度と極端に平年より高い日がある一方、平年を大きく下回る日は少なく、気温が高めに経過しているということができます(図6)。

図6 東京の最高気温と最低気温の推移(5月6日以降はウェザーマップの予報)
図6 東京の最高気温と最低気温の推移(5月6日以降はウェザーマップの予報)

 最低気温についても同じです。

 気温が平年より高い日が多い傾向は、東京だけでなく全国的です。

 年平均気温は、年によって上下がありますが、長期変化をみると、どんどん上昇しています。

 平年からの気温偏差が一番大きかったのは、去年、令和5年(2023年)の1.29度とずば抜けて高い値となっています。

 全国の1か月間の平均ですから、なかなか0.1度は上昇しません。このため、気象庁では、小数2位まで計算しているのですが、高い値は去年だけではありません。

 歴代2位が令和2年(2020年)の0.65度、3位が令和元年(2019年)の0.62度、4位が令和3年(2021年)の0.61度、5位は令和4年(2022年)の0.60度と、年平均気温偏差の高い年の上位5位まで令和が独占しています。

 つまり、令和という年は、これまですべてでランクインです。

 気温偏差を月別に見ると、令和5年(2023年)は、1月こそ-0.03度と僅かにマイナスでしたが、その他の月はプラスで、特に3月と9月は大きなプラスでした(図7)。

図7 令和4年(2022年)1月から令和6年(2024年)4月までの月別気温偏差
図7 令和4年(2022年)1月から令和6年(2024年)4月までの月別気温偏差

 今年、令和6年(2024年)も、4月まで各月で平年を上回っています。しかも、4月は2.76度と大きく上回っており、1月から4月までを単純に比べれば、令和6年(2024年)は、記録的な暑さの歴代一位の昨年、令和5年(2023年)を上回っています。

 近年は、昔の夏期間の始まりの気温は、気温上昇によって1か月ほど早い時期になり、昔の夏期間の終わりの気温も、気温上昇によって半月から1か月遅くなっています。その結果、夏期間は昔に比べてかなり長くなっています。

 また、夏が早く始まりますが、春に気温上昇量が一番大きいことから、春の終わりの時期の早まりより、春の始まりの時期が大きく早まることで、春期間も長くなっています。

 これに対し、厳しい残暑によって秋が始まる時期が大きく遅くなるわりには、秋が終わって冬になる時期が遅くならないため、秋期間は短くなります。

 そして、冬期間は始まりが遅く、終わりは早いということで、寒い時期は昔に比べてかなり短くなり、寒くなっても一時的ということになります。

 令和は記録的な暑さの時代で、これまでの「春夏秋冬の四季」というイメージとは違い、「春と夏の二季」というイメージになりそうです。

図1、図4、図5の出典:ウェザーマップ提供。

図2、図3、図6の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

図7の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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