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日本代表のW杯ベストマッチ! 最大の敗因は西野監督の無策にあり

中山淳サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人
(写真:ロイター/アフロ)

華麗なる敗戦と出場選手の採点&寸評

 過去5大会を含め、日本代表のW杯におけるベストマッチ。確かに最後の最後で日本がベルギーに逆転負けを喫してしまった試合ではあったが、そこにはサッカーの魅力がふんだんに盛り込まれていた。

 キックオフから試合終了まで、1分たりとも目が離せないスリリングかつエキサイティングな試合。見たかったのは、こういう試合だ。

 実力では及ばないと思われたベルギーに対して、挑戦者日本は、考え得る中で最高のかたちで敗れ去った。残酷に見えるその結末は、だから“華麗なる敗戦”と言える。

 もちろん負けたのだから、この試合、あるいは今大会に限って見れば、悔いは残る。力不足と多くの課題も露呈した。

 しかし、W杯という世界的ビッグイベント自体がそうであるように、日本代表もまた、観る人を魅了することを目的とするプロ集団であるべきで、それは勝敗と同じくらい重要な要素であることも紛れもない事実。

 だからこそ、「勝った、負けた」の話とは別に、日本という国にサッカーの魅力を染み渡らせることができたこのベルギー戦は、長期的に見て大きな意味がある。勝利という目的は達せられなかったが、サッカーが持つエンターテインメント性というもうひとつの目的は、確実に達することができたと思う。

 とはいえ、だ。いつものように「善戦した」、「感動をありがとう」といったお決まりの文句を並べ、この美しき敗戦を美談だけで終わらせていては、その価値も薄れてしまう。これまで続いた“日本サッカーの8年サイクル”が繰り返されるだけで終わってしまう。

 これだけ多くの人々が共有した巨大エンターテインメントを、骨の髄までしゃぶり尽くすような議論をしてこそ、本当の意味でこの国のサッカーの未来は作られる。

 ベルギーとの差は何か? 敗因はどこにあったのか? 勝負の分かれ目はどこにあったのか? そこを改めて検証する必要があるだろう。

チームを敗戦に導いた西野監督の無策

 いくつもの敗因の中で特に決定的だったのは、やはり西野監督の無策にあったと思う。

 選手任せのサッカーでは限界がある。必ずどこかでボロが出る。これまで何度も指摘してきた不安要素が、やはりこの大事な場面で露呈した格好だ。

 日本が原口と乾のスーパーゴールで後半早々に2点をリードした後、攻めてもフィニッシュが決まらない状態が続いたベルギーのロベルト・マルチネス監督は、後半65分にフェライニとシャドリを一気に投入し、システムを3-4-2-1から4-4-2に変更。左にシャドリ、右にフェライニと、いずれも高い位置をとったため、4-2-4にも見えた。

 狙いははっきりしていた。フェライニの高さを生かし、突破力のあるシャドリのサイドからクロスを入れて、長友のいるベルギーの右サイドで仕留める。高さでは対抗できない日本が、最も警戒しなければいけなかったハイクロス攻撃だ。

 実際、ガラリと攻撃スタイルを変えたベルギーを前に、日本はリズムを完全に失い、守備が混乱。防戦一方となった。そして69分、74分と、ベルギーの狙い通り、高さによって日本は同点に追いつかれてしまう。

 その間、西野監督は相変わらず指をくわえてピッチを傍観するだけだった。

「試合運び」という言葉がよく使われるが、サッカーにはピッチ内の選手だけでは解決できない問題がある。そこを解決するのが監督の采配、ベンチワークだ。高さという物理的な問題は解決できないとしても、ボールの出どころを抑える策は打って然るべき。そこが何もなかったことが、最大の敗因だった。

 たとえば原口に代えて酒井高徳を右サイドに入れ、シャドリの対応に追われた酒井宏樹のサポート役とする采配は、考えられる最善の手当てに思われる。あるいは別の方法として、長友を一列上げて、植田か槙野を左サイドでフェライニに当てる策も考えられた。

 いずれにしても、フェライニ投入後の“空中戦勝負”は、ベルギーの常套手段。その対策を、ゲームの中で何も実行できなかった罪は、指揮官としてこのうえなく大きい。

「2-0というアドバンテージをもらってひっくり返された。これは選手の非ではなく、私のベンチワークの問題。自分の采配を問うところ」

 試合後、西野監督は自身のベンチワークに問題があったことを認めた。結局、スペインのイエロ監督がロシアのチェルチェソフ監督とのベンチワークの差で涙を呑んだように、西野監督もロベルト・マルチネス監督との采配の差によって、チームを敗戦に導いてしまった。

 確かに、選手と話し合いながらチーム作りを進めたことで、このチームが大化けしたことは間違いないし、それは西野監督の功績かもしれない。しかし、逆に選手の顔色を窺うような“定番の交代策”に終始したことが仇となって出たのが、ベルギー戦の後半だったことも事実だった。

 その責任を、西野監督はどのように受け止めているのか? 今後の身の振り方も含めて、そこは厳しい視線を向けておく必要がある。

※以下、出場選手の採点と寸評(採点は10点満点で、平均点は6.0点)

【GK】川島永嗣(GK)=5.0点

86分の連続シュートストップは光ったが、1失点目のパンチングとその後のポジショニングミスは痛恨。その他、1、2戦の影響なのか、全体的にゴールに閉じこもるプレーに終始。

【右SB】酒井宏樹=5.5点

チームの攻撃を右サイドから活性化させることができた。過去3試合の中ではベストな攻撃参加を見せたが、逆に守備面ではアザール、カラスコ、シャドリに振り回された。

【右CB】吉田麻也=6.5点

数々の危険な場面で最後の砦となってシュートを阻止。ゴール前でのギリギリの対応、リスク管理と、ほぼパーフェクトと言える守備で違いを見せた。経験値の高さを示した。

【左CB】昌子源=6.0点

今大会で最も成長を見せた選手の1人。最後の失点シーンでも、ゴール前から全力疾走で戻りながらシャドリを見てシュート阻止を試みた。74分のシュートブロックも光った。

【左SB】長友佑都=6.0点

フェライニが投入されてからは身長差もあって苦戦を強いられたが、積極的に攻撃参加を見せてチャンスを作った。最後まで運動量も落ちず、この試合でも重要なピースとなった。

【右ボランチ】柴崎岳(81分途中交代)=6.5点

原口の先制ゴールを生んだスルーパスは絶品。今大会における柴崎の存在価値を改めて証明した。今大会で、攻撃の起点としてパスを配給できるボランチとしての地位を確立した。

【左ボランチ】長谷部誠=5.5点

相手が3トップだったことも影響し、CBの間に落ちてビルドアップの起点となることはできなかった。守備面では身体を張ったが、ミスパスなど細かい部分のエラーは否めず。

【右ウイング】原口元気(81分途中交代)=6.5点

試合の流れを劇的に変えた先制ゴールはスーパーだった。あの一発がなければ試合は違った展開になっていたはず。守備面でも貢献し、ガス欠状態になるまで走り続けた。

【トップ下】香川真司=6.0点

スペースに顔を出してパスを受けた他、セカンドボールにも対応。自身の特長を生かした。ただ、前半はデブライネとヴィッツェルを自由にさせ過ぎてしまった点がマイナス0.5点。

【左ウイング】乾貴士=6.5点

セネガル戦に続き、スーパーゴールで追加点を決めた。攻撃のアクセントとなり、相手に脅威を与えるなど、この試合以外でも大会を通してハイレベルなパフォーマンスを見せた。

【1トップ】大迫勇也(85分途中交代)=6.0点

コンパニの厳しいプレッシャーに対してもハイレベルなポストプレーを見せ、前線でポイントになった。貢献度は高かったが、その一方でCFとしてシュートを狙いたかった。

【MF】本田圭佑(81分途中出場)=5.5点

終盤に投入され、2010年大会のデンマーク戦を彷彿させる惜しいフリーキックを見せた。逆に、最後のCKのシーンでは、GKにキャッチされる安易なボールを蹴ってしまった。

【MF】山口蛍(81分途中出場)=5.5点

守備面を落ち着かせるために柴崎に代わって途中出場。しかし、その任務を果たすことができず、効果的なプレーを見せられないまま試合が終わってしまった。

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サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人

1970年生まれ、山梨県甲府市出身。明治学院大学国際学部卒業後、「ワールドサッカーグラフィック」誌編集部に入り、編集長を経て2005年に独立。紙・WEB媒体に寄稿する他、CS放送のサッカー番組に出演する。雑誌、書籍、WEBなどを制作する有限会社アルマンド代表。同社が発行する「フットボールライフ・ゼロ」の編集発行人でもある。

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