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コロンビア戦勝利は安全運転の賜物。セネガル戦に必要な「修正力」とは?

中山淳サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人
(写真:ロイター/アフロ)

グループ突破のカギとなる「修正力」

 大会前はグループリーグ突破が絶望視されていた日本が、グループ最強と目されていたコロンビアを相手に2-1で勝利を収め、予想外の白星スタートを切ることに成功した。

 1998年大会から6大会連続出場中の日本にとって、W杯初戦を白星で飾ったのは2010年大会以来2度目のこと。その8年前の南アフリカ大会のようにベスト16入りの可能性が急浮上したわけだ。

 期待薄と見られたW杯開幕前の状況から一転、日本国内がお祭りムード一色に染まるのも当然である。

 そのコロンビア戦の勝因は、主にふたつあった。ひとつは、日本が11人vs10人という数的優位な状況でほぼ1試合を戦えたという外的要因。そしてもうひとつは、1-1で迎えた後半に見せた日本のゲーム運びという内的要因だ。

 まず外的要因にあたる“神風”が吹いたのは、試合開始早々3分のことだった。

 相手左サイドバックのアーリークロスを昌子源がヘディングでクリアすると、香川真司がそのまま前方にキック。しかし、相手CBのダビンソン・サンチェスがそのハイボールの処理を誤り、抜け出した大迫勇也がGKと1対1の場面を迎える。

 幸運に恵まれたのは、その後だ。絶好のチャンスを迎えた大迫が放ったシュートはGKダビド・オスピナにセーブされるも、そのこぼれ球に詰めていた香川の左足シュートはカバーに入ったMFカルロス・サンチェスの腕に当たってハンドの判定。

 すると、スロベニア人のダミル・スコミナ主審は迷わずPKスポットを指差し、さらにカルロス・サンチェスが決定機阻止のハンドを犯したとしてレッドカードを突きつけた。

「11vs11人で戦うはずが、最初の3分で重要な選手を失ってしまった」と嘆いたのは、試合後の敵将ホセ・ペケルマン。一方、相手のミスが発端とはいえ、いきなりPKと退場という大きなプレゼントを手にした日本にとっては、願ってもない形で試合をスタートすることができたわけだ。

 もし大迫と香川のシュートのどちらかがネットを揺らしていたら、カルロス・サンチェスの退場は起こらなかったわけで、それを考えると、改めてこの日の日本は運に恵まれていたと言わざるを得ない。

 ただ、サッカーは運だけで勝てるわけでもない。数的優位の日本はその後、ひとり少ないコロンビアに苦しめられて前半39分に直接FKから同点ゴールを献上するが、ハーフタイムでひと呼吸置いてから迎えた後半は、前半とは異なる流れで試合が進んだ。

 ここで思い出されたのは、4年前のW杯ブラジル大会での対戦だ。グループリーグ3戦目で対戦したその時も、両チームは1-1で後半を迎えている。しかし1分1敗で後がなかった日本は、後半にリスクをかけてゴールを目指さなければいけない状況にあったため、結局コロンビアのカウンターの餌食となって1-4で完敗を喫した。

 しかし今回は初戦ということもあり、数的優位の状況でありながら4-4-1のブロックを敷くコロンビアに対して無理に仕掛けず、相手のプレッシャーのかからないディフェンスラインとボランチのエリアを中心にボールをキープすることに徹した。

 この件について、センターバックを務めた昌子も試合後に「しっかりボールを保持して、隙を突いて1点を取ろうと(ハーフタイムに)みんなで話していた」とコメントしたが、その「安全なゲーム運び」をしたことにより、最終的にコロンビアは自滅の方向に舵を切る羽目に陥っている。

「私が投入した選手を見れば、我々が守ろうとしていなかったことはわかると思う。サイドでのプレーを増やして、なるべく前にボールを運ぶことで日本を苦しめたかったが、うまくいかなかった」(ペケルマン監督)

 後半、コロンビアは故障が癒えない10番ハメス・ロドリゲス、そして点取り屋のカルロス・バッカを投入してゴールを目指すも、78分の大迫がブロックしたハメス・ロドリゲスのシュートシーン以外にチャンスを作ることはできなかった。なかなか守備の網にかかってこない日本に焦らされるように、ただただ時間の経過とともに消耗するだけだった。

 結局、安全策が奏功して日本は勝ち点3を手にすることになった。そういう点では、試合後の会見で西野朗監督が口にした「修正力」という言葉の意味も重要性を増す。コロンビアに勝利したのは偶然ではなく、必然だったと言ってもいい。

 ただし、それはあくまでもこの試合に限っての話だ。この日は、ほぼ1試合を11人vs10人で戦えたという「珍しい状況」にあったことを忘れてはいけない。しかも相手のエース、ハメス・ロドリゲスが負傷によりベンチスタートという幸運もあった。

 これだけの好条件が揃っているなら、前半にリードを広げた上で後半の安全策に持ち込むのが本来あるべき姿である。しかし、日本の実力はそこまでのレベルにはないのが現実だった。とりわけ前半の戦いぶりを見る限り、そのことだけははっきりとした。

 試合をトータルで振り返っても、決定的なチャンスを作れたのは前半15分の乾のシュートシーンと、決勝点につながるコーナーキックを生んだ酒井宏樹のシュートシーンのみ。数的有利な状況でほぼ1試合を戦えたにもかかわらず、それだけでは寂しすぎる。

 個人のパフォーマンスを振り返ってみても、大迫以外に際立って存在感を示せた攻撃陣はほとんどいない。香川も先制点を決めた後は次第にゲームから消え、代わってトップ下に入った本田圭佑は決勝点のアシストを記録したが、それ以外ではピンチを招く原因となるほど低調だった。

 また、戦術的な部分を切り取っても日本の守備のオーガナイズは極めて怪しいレベルにあり、まだコロンビアが元気だった前半は自由に縦パスを使われて劣勢な状況が続いた。前半のうちに少しでも西野監督の言う「修正力」を見せていれば、ゲームの流れを変えることもできたはずだが、しかし指揮官はその状況を傍観するだけだった。

 現在の日本が11人vs11人で90分を戦った場合、果たしてゴールを決められるのか。落ち着いたゲーム運びとコロンビア戦のようなポゼッションはできるのかーー。

 この勝利だけで歓喜に浸るのは早計だ。次のセネガル戦、そしてポーランド戦で勝ち点をもぎ取らなければこの大金星は無意味となるだけに初戦で見えた課題をいかに修正できるかが、グループリーグ突破のカギとなるだろう。

(集英社 週プレNEWS 6月22日掲載)

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サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人

1970年生まれ、山梨県甲府市出身。明治学院大学国際学部卒業後、「ワールドサッカーグラフィック」誌編集部に入り、編集長を経て2005年に独立。紙・WEB媒体に寄稿する他、CS放送のサッカー番組に出演する。雑誌、書籍、WEBなどを制作する有限会社アルマンド代表。同社が発行する「フットボールライフ・ゼロ」の編集発行人でもある。

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