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第一次森保ジャパンの時代から明らかに変化した戦術的傾向とは何か?【カナダ戦出場選手採点&寸評】

中山淳サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人
(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

アジアカップに向けた注目ポイント

 6月15日のエルサルバドル戦から数えると5試合で22ゴール。1試合平均4ゴール以上というゴール量産ぶりを発揮する日本代表は、今回のカナダ戦でも開始早々からハイプレスを仕掛けて2分に先制すると、前半で3ゴール、後半に1ゴールを決めて完勝した。

「最終スコアが我々のパフォーマンスを必ずしも反映していないという気持ちもある。ディフレクションでゴールを決められたが、良いパフォーマンスをしている時間もあった。特に左サイドのアルフォンソ(・デービス)が活躍をしてくれた」

 試合後、カナダ代表率いるビエロ暫定監督がそのように試合を振り返った通り、確かに1-0になった後からジョナサン・デービッドのPK失敗までの時間帯は、カナダが丁寧なビルドアップから日本陣内に侵入し、ボールを支配していた。

 そんな中、試合の流れに変化を与えたのが日本の守備方法の修正だった。

 それまではインサイドハーフに配置された南野が前に出るかたちの4-4-2で3-5-2のカナダに対応していたが、前からの守備がハマらず自陣に押し込まれる時間が続いたことで、4-2-3-1のかたちに修正。

 3トップが相手の3バック、南野が相手のアンカー、遠藤と田中が相手の2列目の中盤2枚、そして両SBが相手の両WBにマッチアップするかたちに変更したことで、カナダのビルドアップからの前進回数は減少することとなった。

 PKにつながるVAR判定の待ち時間があったという幸運もあったが、いずれにしても以前と比べると躊躇なく布陣変更を行えるようになったことは確かで、それが現在の日本の強みにもなっている。

 第一次森保ジャパンの時代では、ほとんどの試合で4-2-3-1を維持し、森保監督がサンフレッチェ広島を率いた時代に採用していた3バックを長期にわたって封印していたことを考えると、これは小さくない変化と捉えることができる。

 この傾向はカタールW杯から見え始めていたことだが、今年に入ってからの第二次森保ジャパンでは、よりその傾向が色濃く見える。

 たとえば、3月の2試合では4-2-3-1で戦い、コロンビア戦の終盤には初めて中盤ダイヤモンド型の4-4-2(4-1-3-2)に布陣変更。続く6月の2試合は4-3-3(4-1-4-1)で戦い、9月のドイツ戦では後半開始から4-2-3-1を3-4-2-1に変更し、トルコ戦では再び4-2-3-1で戦った。

 つまり第二次森保ジャパンでは、4-2-3-1、4-3-3(4-1-4-1)、3-4-2-1、そして中盤ダイヤモンド型の4-4-2(4-1-3-2)と、すでに計4種類の布陣を使い分けながらチームの強化を進めていることになる。

 カナダ戦後の会見で森保監督は「選手はもちろん、コーチ陣の働きかけも大きい」と準備段階におけるコーチングスタッフの仕事ぶりを称えていたが、ドイツ戦とカナダ戦における試合中の布陣変更はどちらも守備の修正に重きを置いたものであったことを考えると、主に守備を担当する齊藤俊秀コーチのサポートが大きいのだろう。

 そうなると、これから確認してみたいのは、攻撃の修正のための布陣変更だ。コロンビア戦の中盤ダイヤモンド型へのシフトチェンジがその例として挙げられるが、その時は上手く機能できずに1-2のスコアをひっくり返せなかった。

 次に対戦するチュニジア、そして11月からのW杯アジア2次予選の相手は、自陣で守ることを受け入れるかたちでゲームに入ってくる可能性が高い。そこでなかなかゴールをこじ開けられない時間が続いた場合、まさしく布陣変更で攻撃を活性化させることができるかどうかが問われる状況を迎える。

 来年1月のアジアカップを見据える意味においても、今後はそこが注目ポイントのひとつになりそうだ。

※以下、出場選手の採点と寸評(採点は10点満点で、平均点は6.0点)

【GK】大迫敬介=5.5点

前半19分にA・デービスを倒してPKを与えたが、J・デービッドのPKを足でブロック。試合終盤の失点の場面ではパンチングしたボールが相手に渡ってしまうという不運もあった。

【右SB】毎熊晟矢=6.0点

デビュー2試合目だったが、唯一の国内組として上々のプレー。特に攻撃では右サイドで縦パスやクロスを供給しながら勢いをつけた。逆に守備では背後をとられるなど課題も散見。

【右CB】冨安健洋(HT途中交代)=6.0点

まだ代表経験の浅い町田とCBコンビを組んで最終ラインを統率し、守備陣に安心感を与えていた。対人の強さは相変わらずでミスもなく、疲労を考慮してハーフタイムで退いた。

【左CB】町田浩樹=6.0点

前半は冨安、後半は谷口とCBコンビを組んだ。試合序盤から積極的に縦パスを供給するなど、ベルギーで自信をつけていることをピッチで証明した。守備では細かい修正が必要か。

【左SB】中山雄太=6.0点

W杯前の負傷から久しぶりに代表復帰。以前よりパワーを増し、タイミングの良い攻撃参加とクロス供給で左サイドを活性化させた。今後はレギュラー候補として真価が問われる。

【アンカー】遠藤航(61分途中交代)=6.5点

キャプテン就任により以前より全体を俯瞰しながらプレーを選択している印象。要所をおさえた守備と両インサイドハーフを補完する動きが際立った。後半の61分でお役御免に。

【右インサイドハーフ】南野拓実(83分途中交代)=6.0点

カタールW杯以来の招集。インサイドハーフとトップ下をスムーズにこなすなど特徴を生かし、前線の守備で効果的な働きを見せた。不足したのはゴールのみで上々の内容だった。

【左インサイドハーフ】田中碧(72分途中交代)=7.0点

開始早々に先制点を決め、後半立ち上がり49分には伊東の秀逸なお膳立てを逃さずにネットに突き刺し2ゴールを記録。その他にもチャンスメイクに関わるなどMOM級の活躍ぶり。

【右ウイング】伊東純也=6.5点

主戦場の右の大外だけでなく、中央でも相手の脅威となった。とりわけ4点目のアシストは最近の伊東の万能ぶりを証明するテクニカルなパスだった。終盤には左サイドでプレー。

【左ウイング】中村敬斗(61分途中交代)=6.5点

代表4キャップにもかかわらず、42分に決めたゴールは代表通算4得点目という量産ぶり。その決定力は見事のひと言。後半途中に相手に削られて足首を負傷する不運に遭った。

【CF】浅野拓磨(72分途中交代)=7.0点

40分にオウンゴールを誘うクロスを入れ、42分には単独プレスで相手のミスを誘発して中村のゴールをアシスト。くさびの縦パスを収める回数が増加するなど成長の跡も見せた。

【DF】谷口彰悟(HT途中出場)=6.0点

冨安に代わって後半開始からCBでプレー。持ち味の縦パス供給はいつもより少なめだったが、守備では初めてコンビを組む町田をサポートした。対人の勝負で後手に回るシーンも。

【MF】旗手怜央(61分途中出場)=6.0点

負傷した中村に代わって後半途中から左ウイングで、終盤には1トップ下でプレー。相変わらずのマルチロールぶりを発揮した。72分の浅野へのパスは判断力と技術の高さの証。

【MF】伊藤敦樹(61分途中出場)=5.5点

遠藤に代わって後半途中から4-2-3-1のダブルボランチの一角でプレー。とりわけインパクトを残したわけではないが、無難にプレーしていた。今後の進化も期待できそうだ。

【FW】古橋亨梧(72分途中出場)=5.5点

浅野に代わって後半途中から1トップでプレー。何度かチャンスに絡むシーンはあったが、試合展開もあってまたしてもゴールはお預けに。古巣神戸での次戦では結果を残したい。

【MF】川辺駿(72分途中出場)=5.5点

田中に代わって後半途中から4-2-3-1のダブルボランチの一角でプレー。久しぶりの代表戦ということもあり、少し気合が空回りした部分は否めないが、積極的に攻撃に絡んだ。

【DF】橋岡大樹(83分途中出場)=採点なし

南野に代わって後半途中から右SBでプレー。出場時間が短く採点不能。

サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人

1970年生まれ、山梨県甲府市出身。明治学院大学国際学部卒業後、「ワールドサッカーグラフィック」誌編集部に入り、編集長を経て2005年に独立。紙・WEB媒体に寄稿する他、CS放送のサッカー番組に出演する。雑誌、書籍、WEBなどを制作する有限会社アルマンド代表。同社が発行する「フットボールライフ・ゼロ」の編集発行人でもある。

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