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アトレティコのプレースタイル変貌に思う、「ダブルスタンダード」の本質。

森田泰史スポーツライター
好調を維持するアトレティコ(写真:ロイター/アフロ)

強いチームに勝つためには、何が必要なのだろう。

近年、リーガエスパニョーラで強さを誇示しているのはレアル・マドリーとバルセロナだ。「2強時代」と揶揄された時期を越えて、しかし今なお、やはり予算やブランディングの面で、この2チームには分がある。「優劣」で言えば、間違いなく彼らが「優」なのだ。

今季のリーガで、その2チームに割って入ろうとしているのが、ジローナ、そしてアトレティコ・マドリーである。

■アトレティコに感じる興味深さ

今季のアトレティコは興味深い。

確かに、リーガのタイトルレースの上では、1位・2位と差が付き始めている。だが今季、マドリーに唯一黒星がついたのは、シビータス・メトロポリターノでのアトレティコ戦なのだ。

写真:ロイター/アフロ

そして、コパ・デル・レイのラウンド16で、アトレティコはマドリーを撃破した。スペイン・スーペル・コパでは苦杯を舐めたが、リーガとコパで1勝ずつ。今季、チャンピオンズリーグ・グループステージで6戦6勝と全勝していたマドリーを考慮すると、その事実は決して軽視できない。

■デ・パウルのパフォーマンス向上

今季のアトレティコの好調の要因の一つに、ロドリゴ・デ・パウルのパフォーマンス向上が挙げられる。

デ・パウルは2021年夏にアトレティコに加入。アトレティコがウディネーゼに移籍金3500万ユーロ(約52億円)を支払い、移籍が成立した。

2022年のカタール・ワールドカップでは、アルゼンチン代表の優勝に大きく貢献したデ・パウルだが、アトレティコでは真価を発揮しているとは言い難い状況だった。

「何が起きたかは分からない。だけど、あるべき自分の姿が、見られるようになってきたと思う。クラブ、監督、チームメートは僕を信頼してくれていた」とはデ・パウルの言葉だ。

「僕はアトレティコで一歩踏み出さなければいけないと思っていた。自分自身にそう要求していた。それでチームを助けられているとしたら、本望だ」

■インテリオールの重要性

アトレティコは今夏、ボランチの補強を検討していた。コケの代役を務められる選手として、マルコ・ヴェッラッティ、ピエール・ホイビュルクらが候補に挙げられていた。

だが最終的には、彼らの到着はなかった。一方、マルコス・ジョレンテの不調、パブロ・バリオスの負傷などで、中盤のやりくりは難しくなった。そのような状況で、「一歩踏み出した」のがデ・パウルだった。

アトレティコは現在、【3−5ー2】のアンカーシステムを敷いている。【5―3−2】の可変システムで、ディエゴ・シメオネ監督は戦っている。

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スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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