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チェルシー、リヴァプール、プレミアのクラブをなぎ倒すマドリー。「無戦術」のレッテルを、解放して。

森田泰史スポーツライター
得点を喜ぶロドリゴ(写真:ロイター/アフロ)

習慣というのは、恐ろしい。

近年、チャンピオンズリーグでの躍進が、レアル・マドリーの「習慣」になっている。先に行われた今季のチャンピオンズリーグ準々決勝で、マドリーは2試合合計スコア4−0でチェルシーを撃破。ベスト4進出を決めた。

直近の13シーズンにおいて、マドリーは、11度、ベスト4に進出している。これを「習慣」と呼ばずして、何と表現するだろう。

■アンチェロッティの暫定解

チェルシーとの2試合(ファーストレグ/セカンドレグ)は、マドリーにとって、試金石になり得るものだった。

厳密に言えば、バルセロナとの3連戦(ラ・リーガとコパ・デル・レイの2試合)から続いていたところだが、いずれにせよ、カルロ・アンチェロッティ監督は「解」を見つけようとした。シーズン終盤、タイトルが懸かる場面で、どのようなメンバーと戦術を選ぶか、が問題だった。

レアル・マドリーのアンチェロッティ監督
レアル・マドリーのアンチェロッティ監督写真:ロイター/アフロ

まず、アンチェロッティ監督は中盤の構成に変化を加えた。

オウレリアン・チュアメニがスタメンから外れ、トニ・クロース、ルカ・モドリッチ、フェデリコ・バルベルデがミドルゾーンでトライアングルを形成するようになった。

ゴールを祝うマドリーの選手たち
ゴールを祝うマドリーの選手たち写真:ロイター/アフロ

もうひとつ、ポイントになったのは左サイドだ。

マドリーは今季、フェルラン・メンディが負傷に苦しめられている。レギュラーの左サイドバックを欠く中で、ダビド・アラバ、ナチョ・フェルナンデス、エドゥアルド・カマヴィンガと複数の選手が試されてきた。

カマヴィンガとヴィニシウス
カマヴィンガとヴィニシウス写真:ロイター/アフロ

チェルシー戦で、チョイスされたのはカマヴィンガだった。

マドリーは、左ウィングにヴィニシウス・ジュニオールを置いている。 そのヴィニシウスとの連携また相性というのが、マドリーの左SBとしては重要な要素になる。

ヴィニシウスは左サイドの「支配者」であり、「突破者」だ。彼のドリブルは、相手にとって、脅威である。一瞬にして、ディフェンスラインを切り裂いて、なかったはずの「穴」を作り出してしまう。

だが、それは諸刃の剣でもある。

■諸刃の剣と左SBの重要性

ヴィニシウスは相手守備陣を「破壊」する一方で、自チームの守備陣を「破壊」しかねない。つまり、彼がいることで、マドリーの守備体型のバランスが崩れてしまう可能性が内在しているのだ。

そういった意味でマドリーの左SBには、デリケートな仕事が求められる。守備においては、ヴィニシウスの負担を軽減。攻撃に関しては、うまくヴィニシウスをサポートすることが要求される。

そのような条件下で、アンチェロッティ監督は、カマヴィンガを巧みに使った。

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スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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