なぜレアルはCL決勝に進めたのか?土壇場で出現したホセル...セカンド・ユニットとラーションの記憶。
レアル・マドリーは、レアル・マドリーだった。
今季のチャンピオンズリーグ準決勝で、マドリーはバイエルン・ミュンヘンと対戦した。ファーストレグを2−2で終えた後、セカンドレグで2−1と逆転勝ちして、ファイナルに駒を進めている。
勝負を決めたのは、ホセル・マトの2ゴールだった。ホセルは現在、34歳。この夏、エスパニョールからレンタルでマドリーに移籍した選手だ。
カリム・ベンゼマの退団で、ストライカーの補強を検討していたマドリーだが、パリ・サンジェルマンのキリアン・エムバペ獲得は実現に至らなかった。そこでマドリーが関心を示したのが、ラ・ファブリカ(マドリーのカンテラ)出身で、エスパニョールで2部降格の憂き目に遭ったホセルだった。
■ラーションの記憶
ホセルの活躍で、思い起こすところがある。2005−06シーズンのバルセロナ、そしてヘンリク・ラーションだ。
05−06シーズン、バルセロナは悲願のビッグイヤー獲得に向け、チャンピオンズリーグ決勝でアーセナルと対戦した。その試合、途中出場で2アシストを記録して、勝利に大きく貢献したのがラーションである。
フランク・ライカールト当時監督は、アーセナルとの決勝直前、成長著しかったリオネル・メッシとラーションのどちらをベンチ入りさせるか悩んでいた。最終的にはラーションがベンチ入り、メッシがスタンド観戦となり、バルセロナの劇的な逆転勝利とタイトル獲得が成し遂げられた。
ラーションは2004年から2006年までバルセロナでプレーした。その間、59試合で19得点。短い期間、それにゴールを量産したわけでもない。しかしながら彼はクレとスペインのファンに、大きなインパクトを残した。
■セカンド・ユニットの躍動
今季のマドリーは、シーズン序盤から負傷者が続出していた。GKティボ・クルトワ、エデル・ミリトン、ダビド・アラバが相次いで長期離脱を強いられ、苦境に立たされた。
そのような状況で、「セカンド・ユニット」が躍動した。
今季公式戦17得点のホセルだけではない。先のエル・クラシコでは、ルーカス・バスケスが大活躍。また、ジュード・ベリンガムの得点ペースが落ちてきたところで、ブラヒム・ディアス(公式戦42試合10得点6アシスト)が出場機会を伸ばして輝いた。
「過去の出来事が、自分をフットボーラーとして成長させてくれた。シーズンがスタートした時、僕のことを疑っていた人もいたと思う。だけど、監督やチームメートから信頼を得て、僕は働き続けた」とはホセルの言葉だ。
「ハードワークに、褒章が届いた。どれだけ素晴らしい夢を思い描こうとしても、こういう夜は想像できないだろう。監督が言っていたけど、こういうゲームはハートで勝ち取るものだ」
■90分の先に
マドリーがホセルの得点で逆転したのは91分だった。
アディショナルタイムのゴール。これもまた、マドリーの“DNA”だと言える。
2013−14シーズン、チャンピオンズリーグ決勝で、マドリーはアトレティコ・マドリーと対戦した。1点ビハインドで迎えた93分、セットプレーからセルヒオ・ラモスがヘディングで同点弾。そこから盛り返したマドリーは延長戦の末に4−1でアトレティコを下した。
スペインで『ノベンタ・イ・ラモス(90分のラモス)』は語り草になっている。90分の先に勝利を得る、そのDNAは脈々とマドリディスタに受け継がれている。
「説明できないことが、再び起こった。これまでもあったが、また起こったんだ。説明は不可能だよ。そして、また、サポーターは信じられないくらいに素晴らしかった。選手たちは信じ続けた。それが不可能を可能にしたのだと思う」
「選手たちは、予期できなかったようなシーズンを送っている。私でさえ、予想できなかった。決勝に辿り着いたというのが、ひとつの成功だ。どんな結果になってもね。ファイナルまで、良い形で過ごせるだろう。幸せな空気が充満すると思うからね。私自身、今後に向けて、いい準備をしなければいけない」
これはカルロ・アンチェロッティ監督のコメントだ。
もうひとつの準決勝では、ボルシア・ドルトムントがパリ・サンジェルマンを倒して、決勝進出を決めている。
マドリーは18度目のチャンピオンズリーグ決勝で、ドルトムントと激突する。デシモ・キンタ(15回目のチャンピオンズリーグ制覇)を目指す旅は、終焉を迎えようとしている。