アルトゥールの調和性に、ベイルの爆発力。クラシコ前に現実主義者の指揮官を惑わすジレンマ。
1日に2018-19シーズンのコパ・デル・レイ準決勝組み合わせ抽選会が行われ、バルセロナとレアル・マドリーの対戦が決まった。
現地時間6日のクラシコを控え、サンティアゴ・ソラーリ監督とエルネスト・バルベルデ監督はジレンマを抱えている。頭痛の種は、選手の起用法だ。
■クラシコの大敗で監督が解任
前回のクラシコで、マドリーはバルセロナに1-5と敗れた。この大敗が引き金となり、フレン・ロペテギ前監督は解任された。
「監督交代が好結果を生みだす」というのがスペインの通説だが、ソラーリ監督の就任でマドリーは完全に甦った。公式戦23試合で18勝1分け4敗。シーズン半ばの段階で、3タイトル獲得の可能性が残されている。
ソラーリ効果は確かに現れた。カンテラーノの登用と積極起用で、軸が一本通った。クリスティアーノ・ロナウドの退団がプラスに作用したように、現在のレアル・マドリーには団結力がある。
ヴィニシウス・ジュニオール、ルーカス・バスケス、セルヒオ・レギロンが代表的だが、ソラーリ監督はハードワークを厭わない選手たちを好んで起用している。「規律」と「労働」。ソラーリ・マドリーを紐解く鍵は、ここにある。
ただ、ソラーリ監督を悩ませているものがある。それはガレス・ベイルの爆発力である。13-14シーズンのコパ決勝、17-18シーズンのチャンピオンズリーグ決勝、重要な場面で決定的な仕事を完遂してきたのが、ベイルだ。
だがソラーリのフットボールで肝となるのは前線からのプレスだ。ヴィニシウス、L・バスケスと走れる選手が前からパスコースを限定し、苦し紛れに出されたボールをカセミロが回収して、そこからショートカウンターを発動させるという形をパターン化させてきた。ベイルを起用するのであれば、その戦術は完璧には機能しない。労働力か、爆発力か。指揮官は決断に迫られている。
■アルトゥールとビダル
一方、バルセロナは今回の対戦を前にリオネル・メッシとウスマン・デンベレの出場が危ぶまれてきた。デンベレに関しては、すでに招集リストから外されている。メッシについては、直前に出場可否が判断される状況だ。
メッシの在・不在が試合に大きな影響を及ぼすのは明らかだ。過去38試合のクラシコに出場しているメッシは、26得点を記録しており、この対戦における史上最多得点者となっている。だが、もうひとつ、バルベルデ監督に熟考を強いる問題がある。
イバン・ラキティッチ(リーガエスパニョーラ出場時間数1642分)とセルヒオ・ブスケッツ(1397分)の2選手と誰を組ませるか、である。
アルトゥール・メロとアルトゥーロ・ビダルの、どちらを起用するか。アルトゥールの調和性。ビダルの二列目の飛び出しとフィジカル。出場時間数では、アルトゥール(リーガ出場時間数861分)、ビダル(同820分)とほとんど互角だ。
バルセロニスタが期待するのは、アルトゥールの起用だろう。アルトゥールが先発する試合では、高いポゼッションが約束される。彼がスタメンに入ったリーガ10試合においては、ジローナ戦(ポゼッション率68%)、バレンシア戦(76%)、セビージャ戦(53%)、レアル・マドリー戦(54%)、ラージョ・バジェカーノ戦(70%)、ベティス戦(54%)、アトレティコ・マドリー戦(70%)、ヘタフェ戦(77%)、エイバル戦(59%)、レガネス戦(73%)と、それが証明されている。
■現実主義
ソラーリ政権で、イスコとマルセロは蚊帳の外に置かれている。バルベルデ監督はネイマールの退団で4-4-2へのシステム変更を断行して、「守備から入る」バルセロナを築き上げた。彼らはチームを自分の色に染めたのだ。
バルベルデ監督の就任一年目、バルセロナがリーガで敗戦したのは1回だけだった。勝利の連鎖により、バルベルデ監督はバルセロニスタを懐柔した。
また、ソラーリ監督就任後、マドリーの勝率は78%で、現指揮官はカルロ・アンチェロッティ監督(現ナポリ/75%)、ジネディーヌ・ジダン元監督(70%)、ラファエル・ベニテス監督(現ニューカッスル/64%)、ロペテギ前監督(43%)を上回る数字を残している。
つまるところ、ソラーリ監督とバルベルデ監督は現実主義者なのである。結果が喧騒を鎮め、指揮を執る時間を稼ぐのだという、ビッグクラブのロジックを深く理解している。
ベニテスとロペテギはクラシコの大敗がきっかけで解任された。屈辱的な敗戦は許されない。リスクを伴う一戦で、2人の采配に注目が集まるのは必然だ。