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SMの女王様、毒母、親孝行の娘まで。今度は特殊詐欺犯の青年を手玉にとり、惑わす盲目の女性役に

水上賢治映画ライター
『ワタシの中の彼女』で主演を務めた菜 葉 菜  筆者撮影(2021年撮影)

 いったい彼女は、どれだけの顔をもっているのだろうか?

 こちらにそう思わせるほど、ここのところさまざまな顔を見せてくれているのが女優の菜 葉 菜だ。

 2022年の幕が開けて少しした2月公開の「夕方のおともだち」ではSMの女王様を演じ、続く出演作「ホテル・アイリス」では毒母がちょっと含まれたホテルの女主人、北京冬季オリンピックの期間中に流れたクボタのCMでの父想いの娘役は大きな反響を呼んだ。つい先日まで放送されていたNHK連続ドラマ「つまらない住宅地のすべての家」では物語の鍵を握る脱獄囚を演じていた。

 そして、新たな主演映画「ワタシの中の彼女」では、新たな4つのまったく違う顔を見せてくれる。

 新たにどんな顔を見せてくれているのか?菜 葉 菜に訊く。全六回。

オムニバス映画『ワタシの中の彼女』の一編『ゴーストさん』より
オムニバス映画『ワタシの中の彼女』の一編『ゴーストさん』より

あまりセクシーになりすぎてもいけないし、セクシーさがないのもダメ

 前回(第五回はこちら)に引き続き、第四章となる「だましてください、やさしいことばで」の話から。

 本作で菜 葉 菜が演じるのは40代前半の盲目の女性・トモコ。彼女の前に、弟の同僚と名乗っているが、実は特殊詐欺の受け子である若い青年、タケオが現れる。

 ただ、前にも触れたように盲目の女性が特殊詐欺にひっかかるという単純なストーリーではない。意外なドキッとする物語が進展していく。

 そして、トモコ自身もとらえどころがないというか。ちょっと怪しく、危うく、艶やかでもあるミステリアスな女性になっている。

「前回お話ししたように、トモコはどこに真意があるのかわからない人で。

 つかまえようとするとうまい具合にはぐらかせて、なかなかつかまえることができない。

 相手からすると、気づけば翻弄されているというか。知らず知らずのうちにトモコにペースを乱され、ペースを握られ、まったく自分のペースにもちこめない。特殊詐欺をする側からするとかなりやっかいな人物なんですよね。

 しかも、若いタケシに対して、母親的なアプローチをしてくるようなところもあれば、大人の女性としてちょっと官能的に惑わすようなアプローチをしてくるところもある。

 そういうことが彼女自身から自然と出てきていることなのか、それともかなりの策士で意識的にやっていることなのかも、ちょっとつかみかねる。

 だから、盲目役であることと同様にひとつの役としても難しかったです。

 あまりセクシーになりすぎてもいけないし、セクシーさがないのもダメ。

 あまり怪しくなってもいけなければ、怪しさがまったく感じられないのもダメ。

 たとえば危うさだったら、本物の危うさと偽の危うさのちょうど境界線にいるような人で、演じるのはそこをみつける作業だった気がします。

 とらえどころのないミステリアスな女性と、みなさんの目に映ってくれていたら、わたしとしては成立したのかなと思っています」

オムニバス映画『ワタシの中の彼女』の一編『だましてください、やさしいことばで』より
オムニバス映画『ワタシの中の彼女』の一編『だましてください、やさしいことばで』より

がっつりタッグを組めてよかった

 ここまで4編で構成される本作について各々の章について訊いてきたが、改めて菜 葉 菜がいろいろな顔を見せてくれる女優であることを実感する作品といっていいかもしれない。

「第三話の『ゴーストさん』のサチは、20代後半という設定だったりして、年齢的に『わたしで大丈夫か?』と思うこともあるんですけど、そういっていただけるとありがたいです。

 でも、振り返るといろいろな役に取り組めて、まったく違うタイプの女性の人生に役として触れられて楽しかったです。

 正直なことを言うと、中村真夕監督とわたしの中にある価値観って真逆といっていいぐらいかなり違う(笑)。

 だから、当然ですけど意見が合わないこともあるので、もしかしたら、ものすごく仲のいい友だちにはなれないのかもしれない(苦笑)。

 ただ、面白いんですよ。たとえば、ある物事に対して、わたしがまったく考えていない問題を感じていたり、独自の見解を見出したりしている。

 わたしが持ち合わせていない感性や視点をもっているので、ハッとさせられることもあれば、気づきを与えてくれることもある。

 ひとりの役者として立ったときに、ものすごく刺激をもらえるんですよね。

 だから、今回、こうしてがっつりタッグを組めてよかったなと思っています」

【菜 葉 菜インタビュー第一回はこちら】

【菜 葉 菜インタビュー第二回はこちら】

【菜 葉 菜インタビュー第三回はこちら】

【菜 葉 菜インタビュー第四回はこちら】

【菜 葉 菜インタビュー第五回はこちら】

『ワタシの中の彼女』ポスタービジュアルより
『ワタシの中の彼女』ポスタービジュアルより

オムニバス映画『ワタシの中の彼女』

監督・脚本 中村真夕

『4人のあいだで』 

出演:菜葉菜 占部房子 草野康太

『ワタシを見ている誰か』

出演:菜葉菜 好井まさお

『ゴーストさん』

出演:菜葉菜 浅田美代子

『だましてください、やさしいことばで』

出演:菜葉菜 上村侑

7月21日(金)SKIPシティDシネマ映画祭2023にて上映(※上映後、中村真夕監督(※オンライン出演)と菜葉菜によるトークあり)、

9月16日から横浜シネマノヴェチェントにて開催「女優 菜 葉 菜 特集」にて上映

公式サイト http://watakano4.com/

場面写真はすべて(C)T-Artist

「女優 菜 葉 菜 特集」ポスタービジュアル
「女優 菜 葉 菜 特集」ポスタービジュアル

「女優 菜 葉 菜 特集」開催決定!

9月16日(土)~10月1日(日)

横浜シネマノヴェチェントにて出演映画12作品一挙上映

詳細は劇場HP→ https://cinema1900.wixsite.com/home

映画ライター

レコード会社、雑誌編集などを経てフリーのライターに。 現在、テレビ雑誌やウェブ媒体で、監督や俳優などのインタビューおよび作品レビュー記事を執筆中。2010~13年、<PFF(ぴあフィルムフェスティバル)>のセレクション・メンバー、2015、2017年には<山形国際ドキュメンタリー映画祭>コンペティション部門の予備選考委員、2018年、2019年と<SSFF&ASIA>のノンフィクション部門の審査委員を務めた。

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