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日本の牛肉食が極端に外食化した理由とは

松浦達也編集者、ライター、フードアクティビスト
(写真:ペイレスイメージズ/アフロイメージマート)

官公庁のデータベースを調べていると、ときどきおもしろいデータにあたって、つい仕事そっちのけになってしまうことがあります。我ながら「仕事しろよ」以外の何物でもないのだが、興味関心が惹かれてしまうのだから仕方がない。何はともあれ、数字をとりまとめてくださる現場のみなさまに感謝を申し上げます。

データ調べとなると、僕は総務省、農林水産省、厚生労働省あたりとその外郭団体あたりが定期巡回先。なかでも畜産系のデータは調べものが多く、独立行政法人農畜産業推進機構(https://www.alic.go.jp/index.html)あたりはよく立ち寄っております。先日はこんなデータに出くわしました。

食肉消費の構成割合(http://lin.alic.go.jp/alic/statis/dome/data2/FYDate/10601aFY.xlsx

ざっくり言うと牛、豚、鶏という食肉の消費は外食や内食で行われているのか、それとも加工品に回っているのか、その比率を明らかにして数十年分まとめた調査です。

かなり切り口のはっきりした調査で、全体の消費量は完全に無視して、比率のみを追いかけています。牛、豚、鶏といった食肉が食べられているのは内食か外食かという食傾向が年次ごとに超ざっくりまとめてあるという読みやすく、ある意味親切な調査です。

半世紀前は、牛肉も家庭内で消費されていた

例えば牛肉の消費で見てみると、もっとも古い年次の1975(昭和50)年次で家計消費が70%、加工仕向が13%、その他(業務用、外食等)17%となっています。45年前の牛肉は消費の7割が精肉店などで内食向けに購入されるもので、残りの3割が加工品と外食等に振り分けられていたというわけです。

それが2018(平成30)年になると家計消費は31%、加工仕向も6%とともに半減以下。その分、伸びたのは「その他(業務用、外食等)」で全体の63%を占めました。実に43年間で3.7倍となっています。

左の軸は%
左の軸は%

ちなみにそれぞれ豚と鶏の数字を見ると1975(昭和50)年次の豚の家計消費が59%、加工仕向19%、その他(業務用、外食用)が22%だったのが、2018(平成30)年には家計50%、加工23%、業務・外食27%と、全体としての内食傾向はそれほど大きく動いていません。一方、鶏は昔、家計52%、加工3%、業務・外食45%だったのが、40%、6%、54%と家計と業務・外食が逆転しています。この理由については、後述します。

1975年当時の外食事情

さて1975(昭和50)年当時は牛肉に限らず、外食はいまほど日常的なものではありませんでした。日本の外食元年と言われる1970年から5年後のことですから無理もありません。総務省の家計調査によると1世代あたり1975年の外食費は5174円。それが2018(平成30)年になると、1万2247円。外食費もおよそ2.4倍の伸びとなっています。

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編集者、ライター、フードアクティビスト

東京都武蔵野市生まれ。食専門誌から新聞、雑誌、Webなどで「調理の仕組みと科学」「大衆食文化」「食から見た地方論/メディア論」などをテーマに広く執筆・編集業務に携わる。テレビ、ラジオで食トレンドやニュースの解説なども。新刊は『教養としての「焼肉」大全』(扶桑社)。他『大人の肉ドリル』『新しい卵ドリル』(マガジンハウス)ほか。共著のレストラン年鑑『東京最高のレストラン』(ぴあ)審査員、『マンガ大賞』の選考員もつとめる。経営者や政治家、アーティストなど多様な分野のコンテンツを手がけ、近年は「生産者と消費者の分断」、「高齢者の食事情」などにも関心を向ける。日本BBQ協会公認BBQ上級インストラクター

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