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大器・佐々木大地五段(24)棋王戦ベスト4進出 羽生善治九段(49)を降す

松本博文将棋ライター
佐々木大地五段はベスト4進出(記事中の画像作成:筆者)

 10月24日。東京・将棋会館において棋王戦挑戦者決定トーナメント▲羽生善治九段(49)-△佐々木大地五段(24)戦がおこなわれました。10時に始まった対局は19時55分に終局。結果は116手で佐々木五段の勝ちとなりました。

 佐々木五段はこれでベスト4に進出。羽生九段は今期棋王戦は敗退となりました。

佐々木大地五段、堂々の勝利

 羽生九段は昨年の竜王戦で広瀬章人八段(当時)に竜王位を明け渡して以来、無冠となっています。羽生九段が無冠を返上するとともに、タイトル獲得通算100期目をいつ達成するのかは、現棋界の大きな注目ポイントの一つです。

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 今年度、羽生九段のタイトル挑戦の可能性が残されている棋戦の1つは、現在リーグが佳境を迎えている王将戦。羽生九段は先日、藤井聡太七段に敗れましたが、現在は2勝1敗で、まだ挑戦権獲得の可能性は十分に残されています。仮に羽生九段と藤井七段がそれぞれ残る対戦を全勝し、5勝1敗で並んで挑戦者決定戦となれば、大変な盛り上がりを見せることでしょう。

 そしてもう1つは棋王戦。ここまで杉本昌隆八段、深浦康市九段を破って本戦トーナメントのベスト8に進出しています。羽生九段は過去に棋王位を12連覇し、通算では13期獲得。永世棋王の資格も得ています。

 一方の佐々木大地五段は、期待の大器です。2018年度には46勝13敗(勝率0.780)という成績を挙げ、最多勝利賞を獲得しています。今年度、王位戦リーグ白組で、後に王位となる木村一基九段に唯一土をつけたのは、佐々木五段でした。また王座戦では本戦1回戦で藤井聡太七段を破っています。

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 佐々木五段が藤井七段に勝利した後、2回戦で対戦したのが羽生九段でした。両者の過去の対戦は、その一局だけです。羽生九段が優勢と見られた終盤戦、佐々木五段は追い上げて、千日手に持ち込んでいます。指し直し局は羽生九段がうまく攻めをつなげ、日付が変わった後に勝利を収めています。

 羽生九段は王座戦でベスト4に進出しましたが、準決勝で豊島名人に敗れています。

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 佐々木五段の師匠は、深浦九段です。棋王戦では、羽生九段は前局で深浦九段を破っています。佐々木五段にとっては、師匠を破った相手との対戦にもなります。

 振り駒の結果、先手は羽生九段となりました。戦形は互いに飛車先の歩を伸ばして交換し合う、相掛かりとなりました。佐々木五段は相手陣に打ち込んだ一歩を犠牲とする代償に、攻めの銀を前に進めました。羽生九段もまた銀を押し出し、早い段階で戦いが始まりました。

 押したり引いたりの中盤戦。いつしかリードを奪っていたのは、佐々木五段でした。羽生九段は居玉のままで、そう長くは粘りの効かない形です。

 最後、羽生九段も手段を尽くして佐々木玉に迫りましたが、正確に玉を逃げられて、届きません。攻防ともに見込みがなくなったと見て、羽生九段は投了しました。

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 棋王戦は敗者復活戦という独自のシステムを採用しているところに特徴があります。ベスト4まで進めば、1敗までは許されます。しかしそれ以前に敗れてしまうと、それまでとなります。羽生九段は今期棋王戦では敗退が決まりました。

 一方の佐々木五段は堂々のベスト4進出。そして公式戦は9連勝と勢いに乗っています。

 もう片方の山からは、やはり大型新人と目される本田奎四段(22歳)が勝ち上がっています。まだタイトル戦未経験の両者のいずれかが、渡辺明棋王(35歳)に挑戦する可能性も、十分にありそうです。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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