Yahoo!ニュース

藤井竜王(21)を追う新世代の大一番 5月21日、竜王戦6組決勝・藤本五段(18)-山下三段(15)

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 5月21日。大阪・関西将棋会館において第37期竜王戦6組ランキング戦決勝、藤本渚五段(18歳)-山下数毅三段(15歳)戦がおこなわれます。

 勝者は竜王戦6組優勝。決勝トーナメントに進み、藤井聡太竜王への挑戦権を争います。

 また、三段リーグで次点1を獲得している山下三段は、竜王戦6組で優勝を果たすと、規定により四段昇段(フリークラス編入)の権利を得ます。(現在進行中の三段リーグ終了後、降段点を取っていない場合に次点1付与)

藤井竜王を追いかける藤本五段

 藤本五段は現在18歳で、現役中の最年少棋士です。フルシーズン参戦1年目の2023年度は大活躍を収め、将棋大賞・新人賞を受賞しました。勝率0.850(51勝9敗)は史上4位のハイアベレージです。

 藤本五段は竜王戦の参加は2期目です。

 1期目は3回戦の神谷広志八段戦において、対局場が東京・将棋会館だったところ、確認不足で間違えて大阪・関西将棋会館に行ってしまい、不戦敗になるというアクシデントがありました。

 藤本五段は2期目となる今期、齊藤裕也四段、冨田誠也四段(現五段)、黒田尭之五段、小山怜央四段、古森悠太五段と強敵を連破。決勝まで駆け上がってきました。

 現在将棋界に君臨する藤井竜王(八冠)のあとを追う存在として、いつタイトル戦の大舞台に登場しても、なんら不思議ではありません。

 藤本五段の今年度成績は7勝2敗です。

 王座戦挑戦者決定トーナメント1回戦では鈴木大介九段に敗れ、前年から続いていた連勝が11でストップしました。

 直近の王位戦リーグ最終戦では斎藤慎太郎八段に敗れ、挑戦者決定戦進出を逃しました。

 竜王戦でタイトル初挑戦となるでしょうか。

超新星・山下三段

 山下三段は、小学生の頃から注目される存在でした。

 現在15歳の山下三段は、4期目の三段リーグを戦っています。

 山下三段は2023年度前期三段リーグで13勝5敗の成績をあげ、3位で次点となりました。

 年度前期の三段リーグで次点だった三段は、竜王戦6組に参加できます。

 山下三段は小林康太郎アマ、浦野真彦八段、今泉健司五段、長沼洋八段、瀬川晶司六段、井出隼平五段を破って、決勝まで勝ち上がってきました。

 長沼八段戦では終盤、絶体絶命のピンチに陥ったものの、そこから大逆転を収めています。

 奨励会員として、また棋士以外の立場として、6組決勝に進んだのは史上初の快挙です。

 山下三段は5組への昇級が決まったと公式に発表されています。もし6組決勝で敗れても、来期は5組から出場できます。

 しかしここまで来たからには、それ以上の歴史的快挙を望むファンも多いでしょう。三段リーグで次点1回を取り、公式戦で竜王戦6組優勝などの「優秀な成績」を収めるというルートで四段昇段(フリークラス編入)の権利を獲得した奨励会員は、まだ一人もいません。

 現役最年少棋士の藤本五段がステップアップを重ねていくのか。それとも、藤本五段よりもさらに若い山下三段が、超ビッグサプライズを起こすのか。ポスト藤井のゆくえをもうらなう、必見の大一番といえるでしょう。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

松本博文の最近の記事