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藤井聡太王位に挑戦するのは渡辺明九段か? 斎藤慎太郎八段か? 5月30日、挑戦者決定戦

松本博文将棋ライター

 5月30日。東京・将棋会館において伊藤園お~いお茶杯第65期王位戦・挑戦者決定戦、渡辺明九段(40歳)-斎藤慎太郎八段(31歳)戦がおこなわれます。

 本局の勝者が藤井聡太王位(21歳)への挑戦権を獲得します。

 渡辺九段と斎藤八段は名人戦七番勝負での2回の激闘を含め、過去に19局対戦。渡辺13勝、斎藤6勝という成績が残されています。

渡辺九段、今期王位戦の足取り

 渡辺九段は前期リーグは白組4勝1敗で優勝に届かず。しかし残留を果たし、今期はシードで白組に参加しました。

 渡辺九段は今期、飯島栄治八段、西川和宏六段に勝って連勝スタートを切ります。3局目では羽生善治九段に敗れました。その羽生戦も含めて、渡辺九段は3月から4月にかけて、公式戦5連敗を喫していました。王位リーグ4局目の森内俊之九段戦では勝って公式戦連敗をストップ。最終5局目の木村一基九段戦にも勝って、4勝1敗で優勝となりました。

 渡辺九段の王位リーグ優勝、挑戦者決定戦進出は、2007年度と2012年度に続いて3回目となります。しかし七番勝負進出、および王位獲得の経験はまだありません。

 2017年に8番目のタイトル戦に昇格した叡王戦をのぞけば、もし渡辺九段が王位戦七番勝負に進むと、以前から存在した7つのタイトル戦番勝負に登場することになります。

 渡辺九段は過去に5回、藤井王位(八冠)とタイトル戦で戦っています。

斎藤八段、今期王位戦の足取り

 斎藤八段は今期、予選から参加。横山友紀四段、服部慎一郎六段、石川優太五段、山崎隆之八段に勝って予選を抜けました。

 この予選のトーナメント表を眺めているだけでも、リーグ入りの大変さがわかります。多くの棋戦でコンスタントに上位に進出している斎藤八段も、王位リーグ入りは3期ぶり、2回目でした。

 斎藤八段は紅組に参加。1局目は石井健太郎六段(現七段)に勝ったものの2局目で豊島将之九段に敗れます。しかしそこから崩れることなく、3局目で前期挑戦者・佐々木大地七段に勝ち。4局目は佐藤天彦九段に勝って、3勝1敗で最終5局目を迎えました。

 斎藤慎太郎八段-藤本渚五段戦は3勝1敗同士の決戦。藤本五段先手で、定跡形をはずれた相居飛車の戦いとなりました。藤本五段が積極的に動いて戦いが始まったあと、斎藤八段は攻めを受け止め、的確に反撃。最後は斎藤八段が藤本玉を正確に寄せ切って、102手で勝ちとなりました。

 最終的に、紅組は斎藤八段が4勝1敗で優勝。挑戦者決定戦へと進んでいます。

 タイトル戦には何度も出場している斎藤八段ですが、まだ王位戦では七番勝負に進んだことはありません。

 今回、挑戦権を獲得すると、藤井王位(八冠)とはタイトル戦で初めて戦うことになります。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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