Yahoo!ニュース

「謝ったら死ぬ病」の検察 喉元過ぎれば平然と熱さを忘れるのか

前田恒彦元特捜部主任検事
(写真:イメージマート)

 袴田事件の再審で検察が袴田巌氏の有罪を立証する方針だ。検察が起訴を取り消した大川原化工機事件の国賠訴訟では、捜査主任検事が非を認めず、謝罪も拒否した。河井克行元法相らを巡る選挙買収事件でも、特捜検事が取調べで利益誘導をしたり、証人テストで証言を押し付けたりした事実が明るみに出た。そもそも検察改革の原点は何だったのか。「謝ったら死ぬ病」におかされ、喉元過ぎれば平然と熱さを忘れるということでは困る。

袴田事件について

 まず、袴田事件についてだが、すでにこの連載でも次のとおり繰り返し取り上げてきたところだ。

 50年以上も前の事件であり、現場を見ていたわけでもないから、真相は分からない。それでも、DNA型鑑定の問題以外に、検察にとってマイナスに傾き、袴田氏にとってプラスに傾く証拠が数多く存在している。1968年の一審判決時に全て裁判所に示されていたら、間違いなく無罪になっていた。

 違法不当で前近代的な取調べや卑劣な証拠隠しが二度と行われないようにするとともに、「疑わしきは罰せず」という刑事司法の基本原則に立ち返り、虚心坦懐にこの事案を見れば、無罪判決が導かれてしかるべきだ。検察としても、率直に非を認め、無罪論告をすべきではないかというのが持論である。

この記事は有料です。
元特捜部主任検事の被疑者ノートのバックナンバーをお申し込みください。

元特捜部主任検事の被疑者ノートのバックナンバー 2023年7月

税込1,100(記事3本)

※すでに購入済みの方はログインしてください。

購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。
元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

前田恒彦の最近の記事