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ロシアW杯22日目。フランス決勝進出にみる、今大会の必勝条件は1.空中戦、2.GK、3. カウンター

木村浩嗣在スペイン・ジャーナリスト
ちょっと感動的なほどのジルーのプレス。平均年齢25歳代の若いチームを引っ張る(写真:ロイター/アフロ)

マッチレビューではなく大きな視点でのW杯レポートの21回目。大会22日目準決勝のフランス勝利で見えたのは、今大会の必勝条件1.空中戦、2.GK、3. カウンター。となると、今夜の試合で有利なのは……。

フランス対ベルギー(1-0)のフランスは強かった。特に51分に先制して以降はまったくベルギーを寄せ付けなかった。ただ、これはフランスが強いというよりも、先制して守りを固めカウンター狙いに切り替えたチームが強い、と言い換えた方がいいかもしれない。もしベルギーが先制していたら逆の形になっていた可能性はある。

だが、今大会の必勝条件である1.空中戦、2.GK、3. カウンターをより高いレベルで満たしているのはフランスである。

どちらも必殺のカウンターを持っているが、試合開始のホイッスルが鳴れば、ボールを持つのはベルギー、引いて待つのはフランスだった。

ベルギーの方がここまで見せた攻撃のパターンは多く、しかも組織的だ。この日は4バックだったが3バックもできる。選手は複数のポジションと役割をこなせ、マルティネス監督の選手交代は、たいがいシステムチェンジやポジションチェンジ、戦術変更を伴う。

戦術的な面白さと、強さとは別

対して、デシャン監督のフランスは[4-2-3-1]だけで、戦い方もカウンター一辺倒、選手交代はほぼ同ポジションの選手を入れ替えるだけ。グループステージ第2節でジルーを1トップにして以来、システム変更の理由がなく、アルゼンチン戦での48分から57分までの10分間足らずしかリードされた局面がない。リードされれば下がっているわけにはいかない、カウンター狙いというわけにもいかない。

だから、フランスの別の顔を見る機会はなかった。ポゼッションだってできるのかもしれないが、その必要がなく自分たちの得意な形だけを貫けば良かった。

対して、ベルギーはそういうわけにはいかなかった。日本戦では2点リードされて高さを使ったパワープレーにシフトしなければならなかったし、ブラジル戦では4バックに変えてボールを譲渡しなければならなかった。

見ている方にはベルギーの方が面白い。戦術的にも語ることが多い。だが、だからといって強いとは限らない。

世界を征服しそうな、フランスの最適解

フランスの“最適解”の方が、ベルギーの“解答力”を上回った。

ジルーの献身、エムバペの速さ、グリーズマンの閃き、マテュイディとポグバの強さと高さ、カンテのボール回復力……ならば、カウンターが大正解。世界の頂点を征服しそうなほどの絶対的な正しさである。

一方、ベルギーの方はなまじ器用なテクニシャンがそろっているだけに守り合い、カウンターのし合いというフランスの土俵上ではやはり劣勢だった。ベルギーならやれる、と試合前は思っていたが、ほぼ手も足も出ないまま守り切られた。日本戦で猛威を振るった空中戦でさえも五分に持ち込めなかった。

今大会では影をひそめていた新興国特有のメンタルの弱さも影響したのかもしれない。逆境を跳ね返そうとして奮闘していたのはアザールくらい。フランスの選手に挑発されると、それに乗ってファウルを犯してしまい、6分間のロスタイムを何もしないまま浪費してしまった。

まだ大会を総括するのは早いが、スペインが優勝した南アフリカW杯、ドイツが優勝したブラジルW杯に比べ、パスサッカーが劣勢でカウンターサッカーが優勢なことは確かなようだ。

短期決戦に強いカウンターだから当たり前?

そのカウンターサッカーの必須条件である、フィジカルが強く高さのあるCFを擁するチーム(フランスならジルー、ベルギーならルカク)の躍進が目に付いた。それとフランス対ベルギーの決勝点もそうであったように、セットプレーに強いチーム(高さがあり、絶対的なキッカーがいる)も有利である。今大会の計158点のうちセットプレーから生まれた得点は69点で、実に44%に及んでいる。攻守ともここに弱さがあるチームは行き詰ってしまう。それとGK。フランスのロリス、ベルギーのクルトワはそれぞれ準々決勝のウルグアイ戦、ブラジル戦で決定的なセーブでチームを救っている。このポジションに不安、特にハイボールとPKに対して不安を抱えているチームはすでに敗退済みである。

なぜ、今大会でパスサッカーが後退したように見え、カウンターサッカーが前進したかのように見えるのかはわからない。もともと短期決戦、一発勝負に強いのはカウンターなのだから、前2大会が例外だっただけなのかもしれない。

3条件を満たし切れないが、イングランド有利

そこで今晩のもう1つの準決勝、クロアチア対イングランドである。ともに空中戦に強く(特にイングランドには絶対的なマグワイアがいる)、モドリッチ、トリッピアーという信頼できるキッカーがいる。

ただ、クロアチアには高さと強さのあるCFマンジュキッチがいるのに対し、イングランドのケインは足元へのパスを必要とし、スターリングはスペースへのパスを必要とする。繋ぎの意識はともにフランスとベルギーよりは高く、カウンターもできるのだろうが、今大会ではロングカウンターからの見事なゴールはまだ見ていない。GKのレベルとはともに高くて互角。

以上、今大会の必勝条件1.空中戦、2.GK、3. カウンターのうち最初の2つはクリアできているが、3番目が両チームとも未知数。3つともクリアのフランスとベルギーとはそこが違う。先制点を挙げても逃げ切れるほどの守備力はともに無いから、点の取り合いの末、パワープレーでやや優勢で、延長戦の疲労がないイングランドが有利とみる。

在スペイン・ジャーナリスト

編集者、コピーライターを経て94年からスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟のコーチライセンスを取得し少年チームを指導。2006年に帰国し『footballista フットボリスタ』編集長に就任。08年からスペイン・セビージャに拠点を移し特派員兼編集長に。15年7月編集長を辞しスペインサッカーを追いつつ、セビージャ市王者となった少年チームを率いる。サラマンカ大学映像コミュニケーション学部に聴講生として5年間在籍。趣味は映画(スペイン映画数百本鑑賞済み)、踊り(セビジャーナス)、おしゃべり、料理を通して人と深くつき合うこと。スペインのシッチェス映画祭とサン・セバスティアン映画祭を毎年取材

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