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朗報?悲報? NHK『ネット同時配信』が可能に!2019年度内に放送法改正法成立!

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント
出典:いらすとや

KNNポール神田です。

□NHKにテレビ番組のインターネット常時同時配信を認める改正放送法が(2019年5月)29日の参院本会議で、与党などの賛成多数により可決、成立した。NHKは本年度中にネット向けの新サービスを始める計画。受信料契約を結ぶ人は、追加負担なしに、ネットでリアルタイムに番組を見られるようになる。

□改正前は、NHKが同時配信できるのは災害報道や一部のスポーツ中継などに限られていた。

□同時配信は遅くとも、東京五輪の聖火リレーが始まる来年3月に間に合わせる考え。

出典:NHKネット同時配信、年度内に 改正放送法が成立

NHKのインターネット同時配信が放送法の改正によって、法律で認められ、2020年3月までに、ネットのアプリやブラウザで全放送を視聴できるようになる。

□NHKのネット事業の拡大について、日本民間放送連盟(民放連)などは「民業圧迫」だとして反発してきた。NHKはネット事業の費用の上限を受信料収入の2・5%と定めており、民放連は常時同時配信が本格化する20年以降も上限を維持することを求めている。

□改正法では、ネット事業の費用などを毎年度公表することを義務化したほか、費用の上限などを定めた「実施基準」を総務相が認可し、基準が守られない場合には総務相が勧告する権限を付与した。

出典:NHKのネット常時同時配信可能に、改正放送法成立

■朗報なのか?悲報なのか?NHKのネット常時同時配信が可能になった日

ついに、この日がやってきた…。放送法が改正され、ネットでNHKがいつでも受信できる時代になるのだ…。筆者にとってはNHKが超絶に大好き過ぎてキライなほどだ。これからは、もっとネット上で『みなさまのNHK』ではなく『わたしたちのNHK』として機能させたいと思う。公共放送である以上、受信料で支えている以上、『わたしたちのNHK』として、NHKは国民のために奉仕すべきなのだ。

これからは、潤沢な『178億円』もの配信費があるので、ネットならではの公共放送のNHKの姿を国民と一緒に築くべきだと考えている。そして、NHKという公共放送を必要としていない人にとっては、ネットでも契約義務が発生し『受信料』を払えと催促される悪夢のような日々をおそらく迎えることとなるだろう…。

2019年5月29日(水)は、朗報と思える人と悲報と感じる人が『同時』に生まれた日である。

■キーとなるのは、受信料収入の2.5%の『178億円』の予算

NHKはネット事業の費用の上限を受信料収入の2.5%としている…。

□2018年度 NHK受信料収入は7,122億円(2017,年度比209億円増)で、初めて7,000億円台に達した。

事業収入全体は7332億円(同129億円増)。つまり、2.5%は『178億円』だ。

■参考にしたいのが、アベマTVのプラマイコスト『137億円』の予算だ

□24時間ネット放送局の『アベマTV』の事業費は、年間200億円で、広告収益は63億円。単純計算でプラスマイナスのコストは『▲137億円』※事業費マイナス広告収益の計算だ。

https://toyokeizai.net/articles/-/245569

もちろん『アベマTV』の『137億円』には、番組製作コストがかかっているが、 NHKのネット同時配信は、同じものをネットで流すだけなので、番組製作コストは基本的にはまったくかからない。そこの同時配信業務だけに、『アベマTV』の129%のネット同時配信コストがかけられるのだ。潤沢すぎる予算だと考えられる。

■NHKの『受信料契約』を結んでいる人には、追加負担なしの『ポイント』

□受信料契約を結ぶ人は、追加負担なしに、ネットでリアルタイムに番組を見られるようになる。

…ということは、ネットで自由に追加負担なしにネットでもNHKが視聴できる。しかしだ。受信料契約を結んでいない人はどうなるのか?この点についてはまったく触れられていない…。テレビを持っていない人でさえも改正された『放送法』ではネットそのものが『受信設備』を持っている解釈になりえそうなのだ。

1.(NHK=日本放送)協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。

放送法 第64条1 (受信契約及び受信料)

http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=325AC0000000132

その理由は、ワンセグ機能つきの『カーナビ』でさえも、『受信設備』として契約の義務があるとの判決もくだされたからだ。法律で決められた以外のことは、裁判の事例が参考とされる状況下にある。

■ネット同時配信コストの393%のコストは?…

むしろ、潤沢すぎる予算は、受信料を徴収するコストに、事業収入全体(7,332億円)の10%に値する約700億円もかけていることだ。ネット同時配信のサイマルコストの上限178億円の393%にもなる。受信料の徴収コストがこれほどにもかかっている。しかし、700億円も、かけないと維持されない公共放送って何なんだ? イギリスでは最初に『受信許可証』購入しないとテレビを販売してくれない。

■テレビがなかった頃の69年前の『放送法』の目的そのものを考える時代だ…

日本のテレビ放送が、はじまる3年前の1950年(昭和25年)の69年も前の法律なので、目的がもう完全に違う…。

放送法第一条 をシンプルにすると、この目的のためにある…。

公共の福祉に適合する、健全な発達を図る である。

1.放送が国民に最大限に普及

2.放送の不偏不党、放送による表現の自由

3.放送が健全な民主主義に発達に資する

https://www.nhk.or.jp/info/about/intro/broadcast-law.html

そう、『放送法』そのものが、1.と、3.は、もう完全に目的を達成している。2.は改正に改正で怪しくなってしまったところだが…。NHKの予算を国会で承認される時点で、放送法第一条 違反ではないだろうか?

■69年前の『放送法』だけではなく、現代の『公共放送法』を考えるべきでは?

ネットという通信の世界においても『放送法』が適応されるのかどうかが今後の注目だが、契約の義務としてのネット上での『受信料』の取り立て方の後ろ盾にしてはならない。

テレビ放送がはじまる前の『放送業界』を健全に普及させる時代の目的の『放送法』ではなく、令和時代の『正しい公共放送のありかた』を定義しなおす『公共放送法』を一から作るべきなのだ。そこで、公共放送のありかたを法律できちんと定義してはじめて、『契約の義務』が正しく議論できると思う。現在の『放送法』の目的は、すでに達成しているからだ。

残念ながら、現在の、政府に予算を認められ、国会で経営委員会を指名されているNHKでは、『国営放送』と言われても仕方がない。『国営放送』ならばすべて勝手に税金でやるべきなのだ。公共放送の一番の公共性は『権力の監視』である。政府に大事な所を握られて『権力の監視』など到底できない。つまり公共放送としてのNHKを国民に取り戻さなければならない。

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ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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