『テレビ』ではない『カーナビ』からもNHK受信料の初判断 そもそも『放送法』の目的は何?

(写真:森田直樹/アフロ)

KNNポール神田です。

【追記】2019年5月16日(木)、NHKがすべての番組を放送と同時にインターネット配信できるようにする放送法改正案が16日の衆院本会議で可決した。NHKは放送法の改正を受けて、2019年度中にも番組を放送と同時にネット配信する常時同時配信を始める。参議院も通過すれば放送法が改正され、インターネットでも『NHKのテレビのネット同時配信(サイマル放送)』が始まる。

気になるのはテレビを持っていない人からも、インターネットがあれば、受信契約となり、カーナビ同様の受信料徴収という問題だ…。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44871960W9A510C1PP8000/

□自宅にテレビを持たない女性が、自家用車に設置しているワンセグ機能付きのカーナビについて受信料契約を結ぶ義務がないことの確認をNHKに求めた訴訟の判決で、東京地裁(森田浩美裁判長)は2019年5月15日(水)、女性の訴えを退けた。NHKによると、カーナビに関する司法判断は初めてという。

□受信料契約を巡っては、最高裁は今年3月、ワンセグ機能付きの携帯電話を持つと契約義務が生じると判断した。

出典:カーナビもNHK受信料は義務 自宅にテレビ持たず、初の判断

■ワンセグ機能つきの『カーナビ』もテレビ放送の受信機である

テレビを持っていない女性が、携帯電話のワンセグではなく、クルマのナビゲーションシステムの『カーナビ』のワンセグ機能で契約義務が生じるのはおかしいという訴訟が棄却された。実際に1日に、どれだけの時間、クルマの運転をしながら、テレビを視聴できるのだろうか?道路交通法では、運転中のテレビ視聴は『注視(2秒以上)』の視聴は禁じられている(公安委員会遵守事項違反6,000円で減点なし)。それでも訴訟が、棄却されたということは『カーナビ』でも契約義務が発生するという司法判断だった。『テレビ』という受信機以外でも契約義務が発生しているのだ。

■そもそも『放送法』ってなんの目的で作られたのか?

そもそもNHKの受信料を支払い義務は『放送法』によって定められている。放送法 第64条1 (受信契約及び受信料)で受信器があると契約義務があるからだ。

1.(NHK=日本放送)協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。

放送法 第64条1 (受信契約及び受信料)

http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=325AC0000000132

よって、ワンセグ搭載の受信器等は契約をしなければならない。しかしだ。この今一度、『放送法』の目的をよく読んでみたら第64条よりも冒頭の第1条がとても気になった。放送法の根幹は第64条ではなく、第1条にあるはずだからだ…。

■『放送法』ができたのは、テレビ放送が始まる3年前

『放送法』。この法律が施行されたのは1950年(昭和25年)。終戦から5年が経過し、テレビ放送が1953年より始まる3年前の法律だった。そう、日本でテレビ放送がはじまる前に決めらた法律であることを理解いただきたい。

そして、『放送法』の第1条 原則の目的は…

放送法第1条  出典:放送法
放送法第1条 出典:放送法

https://www.nhk.or.jp/info/about/intro/broadcast-law.html

□公共の福祉に適合しているか?

※すでに『公共放送』が、政府や権力の監視になっていないのでは?

□放送が国民に最大限に普及

※すでに、十二分に普及しすぎています。

□放送の不偏不党

※税金をもらって、経営委員が国会で選ばれ、総理大臣に任命されている時点でおかしいのでは?

『放送法』そのものが69年前の国家をあげて、テレビをこれから普及させていこうとする時代の法律なのである。すでに、テレビ放送の普及の目的は十分にかなっている。しかも『公共放送』としての『営利を目的とせず、国家の統制からも自立して、公共の福祉のために運営する』のところが、カーナビからも受信料というと、もはや公共の福祉のためでなくなっている気さえしてくる。

NHKは、国会で予算を通してもらい、国会で推薦された経営委員会を内閣総理大臣が任命する時点で、『国家の統制からも自立した公共放送』といえるのだろうか?国会の方向を向きながら、国家権力を監督・監視する公共放送になれる訳がないのだ。

■アンテナよりも、HDMI受信器としての『テレビ』が普及

そして、今やテレビ離れが激しい時代でもある。NETFLIXに、AmazonPrimeVideo、YouTube Premium、AbemaTV にYahoo!とエンタメからニュースは、放送ではなくネット配信でも十分にある。HDMIで接続されたチャンネルとアンテナから受信されるコンテンツの支配率はかなり変化してきていることだろう。

受信設備を持たなければ契約の義務は発生しないのだが、すでに、インターネットでのNHKの配信もはじまった。同時配信のサイマル放送も時間の問題だ。いずれ、インターネットの設備もあれば受信料契約の義務が必須というフェーズが来ようとしている。いや、必ず来る。

本日、衆議院での放送法の改正案が通過したので、『ネット受信料問題』も早々に議論となるだろう。

筆者は、受信料の不払いやNHKをぶっ壊す!と唱えているのではない。『公共放送』としてのあり方を問うているのだ。ワンセグでしかも、カーナビからも受信料の契約義務という法律面だけでの議論は時代錯誤な気がしてならない。すでにワンセグはオワコン(終焉)であるが、インターネット上での『テレビのネット同時送信』は要注意である…。

■2019年5月16日(木)『NHKのテレビのネット同時配信』が衆議院通過

政府は2019年3月5日、NHKがすべての番組を放送と同時にインターネット配信できるようにする放送法改正案を閣議決定した。そして、本日、2019年5月16日(木)衆議院通過した。NHKの本来業務は放送であり、ネット業務の費用は受信料の2.5%までと定められている。

『ワンセグ』がオワコンになった今、テレビ受信機をもたないが、ネットで接続できる端末を持っている人が、とりそこなっている放送法 第64条を盾に狙われるのは当然だ。だから今こそ、『公共放送』としてのNHKのあり方を問わなければならない。

『国家の統制からも自立した公共放送』であり、『公共の福祉のために運営する』団体でないと、『放送法』で守られている意味もない。そもそも、『放送法』の目的が時代錯誤であることも明確なのにこの点こそ、放送法のあり方を議論すべきではないだろうか?

■公共放送としての『私たちのNHK』

2018年(平成30年)NHK決算の速報 令和元年5月 出典:NHK
2018年(平成30年)NHK決算の速報 令和元年5月 出典:NHK

https://www.nhk.or.jp/pr/keiei/kessan/h30/pdf/sokuho30.pdf

過去の決算資料

2018年度(平成30年)のNHKの受信料収入は7332億円 うち受信料は7122億円で97.1%の負担率だ。7060億円の事業支出は1日あたり19.3億円となる。また、受信料を徴収するために毎年、事業支出の10%の約700億円が『受信契約及び受信料の収納』に費やされる。受信料を収めている人からすれば受信料の1割が、ずっと毎年、収めない人のためのコストとして負担させられているのだ。

NHKへの意見392万件の56%は受信料 出典:NHKふれあい報告書
NHKへの意見392万件の56%は受信料 出典:NHKふれあい報告書

NHKに対する視聴者からの声は『NHK視聴者ふれあい報告書』にまとめられているが、392万件の意見・問い合わせに『受信料関係』が127万件の56%と半数を超えている。

慶応大学特任准教授などを務めるプロデューサーの若新雄純氏は、「根本的な問題は、払わなければいけないことではなくて、払わなくても見られるというケースがあること。その不公平さのために払う・払わないという議論が起きている。受信料を本当に払ってもらいたいなら、不公平がないように課金制度にする方がいいのでは」という。

元NHKのアナウンサーである堀潤氏は、NHKは『皆様のNHK』ではなく『私たちのNHK』になるべきだと唱える。まさに正論だと思う。

受信料でまかなわれている以上、NHKは、政府ではなく私たちの方向をむいて仕事をするべきだろう。

財務諸表を見ると、1兆円を超える内部留保に長期保有有価証券などの債券への投資が存在する。なぜ公共放送が投資をするのか?余るのならば株主配当同様に受信料を国民に還元すべきではないだろうか?

また、どの番組をいくらで制作したかまでも報告する義務を求めたい。民放と同様の番組を『公共放送』が作ることも望まないし、情報番組なのに企業名は出さないという中途半端な報道のあり方も異様だ。CMは流れないが、NHKの番組については、番組宣伝をこれでもかというほど日々、展開している。

同時に、適切な価格で番組が作られているのかを国民が審査をする機会もないのだ。当然、受信料が本当に適正な料金なのか、どうかも審査できない。『放送法』を盾に受信料を徴収するだけでなく、真摯に公共放送の役割についての満足度を国民に真を問うべきではないだろうか?少なくとも国民の選挙によって『NHK経営委員会』のメンバーが選ばれるか、BBCのような外部の第三者機関が必要ではないだろうか?

■英公共放送のBBCとNHKとの比較

現在の英BBCのガバナンス体制  出典:NHK
現在の英BBCのガバナンス体制 出典:NHK

https://www.nhk.or.jp/bunken/research/oversea/pdf/20180130_1.pdf

よく参考にされる公共放送の英BBCの場合は、政府や権力を監視するために免許(特許状:Royal Charter)は、政府からではなく、英王室から渡される。だから政府への批判もBBCは自由にできる。それは国民がお客様の『公共放送』だからだ。それに10年に一度更新があるため、常に『公共性』が求められる。現在の放送免許は2027年12月31日まで。

さらに『受信許可証(TV Licensing)』を買わないとテレビが買えないため、支払い率も増える。さらに高額な罰金制度(1,000ポンド約14万円)までがある。日本でも『テレビ』を購入する際には、NHKの受信料がかかることを懇切丁寧に説明して販売する『説明責任』がなければならないと思う。

2015年には、ネットの普及でテレビの保有者が減りBBCの『受信許可証』収入が減ったので1,000人ものリストラ(BBC職員 約1万8000人の6%弱)にも踏み切った。ちなみにBBCでは『受信許可証』があればネットでの再放送の視聴とサイマル放送が『BBC iPlayer(2007年開始)』でスマホやタブレットでも可能だ。『受信許可証』がなければ視聴できないというスタンスなので明確だ。

NHKでは、受信料とは別の有料の『NHKオンデマンド(単品108円~月額972円~1944円)』に加盟しなければ再放送を視聴できない。

NHKの不祥事による処分は数あれど、リストラは聞いたことがない。

NHKは誰もが見れてあとから料金請求、BBCは『受信許可証』を購入してから視聴。根本的な受信料に対する考え方が同じ公共放送でもまったく違う。

さらにBBCは、2017年度の免許更新でBBC内部のBBCトラストが廃止され、BBCの監督機能が初めて外部の独立規制機関Ofcom(Office of Communications:放送通信庁)に移された。『オフコム(Ofcom)』は、英国の放送と通信分野の独立規制機関。放送通信業界の経済活動を活性化し、市民と消費者の利益を促進することを目的としている。日本の『BPO放送倫理・番組向上機構』との違いは、放送倫理にかかわらず、英BBCから英商業放送の規制監督を担える権限にある。日本の電波の権利は、すべて政府側の『総務省』の規制と監督管轄となるので、『公共放送』はありえないのである。ある意味、公共放送を目指すという『放送法』の原理原則にはすでに齟齬が見られるので見直すべきだと思う。

BBC NEWS Japan

https://www.bbc.com/japanese

■日本での都道府県別受信料

都道府県別でもこれだけ受信料の支払い率が違う。広くあまねく公平にとは、とてもいえない状況だ。

都道府県別NHK受信料支払いMAP 出典:KNN
都道府県別NHK受信料支払いMAP 出典:KNN

平成29年度末 受信料の推計世帯支払率(全国・都道府県別)についてより『カラム地図メーカー』で作成。

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