10月30日は食品ロス削減デー 食品ロス削減推進法が施行され10月1日で一周年 何か変わったのか?

(写真:アフロ)

10月30日は食品ロス削減デー。宴会の食べ残しをなくすため、宴会の最初の30分間と最後の10分間は席について食べ尽くそうという「3010(さんまるいちまる)運動」から「3010」を逆にして10月30日が制定された。

毎年この日には政府も都道府県とともに主催する「食品ロス削減全国大会」が開催され、2017年には長野県松本市、2018年には京都市、2019年には徳島市が開催場所に選ばれた。2020年はコロナ禍のため2020年12月16日に富山県で食品ロス削減全国大会 in 富山が開催予定で、筆者も「賞味期限のウソ 食品ロスはなぜ生まれるのか」と題して基調講演の予定である。

では、一年前と比べて何が変わったのか。

「食品ロス」のメディア登場回数は増えた?

メディアに「食品ロス」という用語が登場する回数は増えたのか?答えは「Yes」。

日本最大のビジネスデータベースサービス「G-Search(ジーサーチ)」によると、法律が施行される前の一年間(2018.10.1~2019.9.30)には「食品ロス」という言葉が主要150紙誌に登場した回数は3,325件。対して、施行後の一年間(2019.10.1~2020.9.30)は4,329件で、1,000件以上増えている。

昨今、「フードロス」という表現が散見されるが、これはFAO(国際連合食糧農業機関)の定義を見ると、下記のように「小売や外食、消費者段階で発生するロスは含まない」とされており、日本で使われている「食品ロス」の意味とは異なっている。

Food loss and waste reduction, measurement and policy(FAO official website)
Food loss and waste reduction, measurement and policy(FAO official website)

Food Lossとは、小売業者・外食事業者・消費者を除く、フードサプライチェーン内の食品供給者の決定や行動に起因する、食品の量や質の低下のことである(SOFA、2019年)。

Food Wasteとは、小売業者・外食事業者・消費者による決定や行動の結果、食品の量や質が減少することを指す(SOFA、2019年)。

世界の高所得国と同様、日本では、小売・外食・家庭で発生する食品ロスは多く、日本政府はそのロスも含め、家庭系・事業系ともに「2030年までに半減」(2000年比)を目標としている。そこで筆者は、日本語では「食品ロス」という表現を使うようにしている。

念のため、「フードロス」という用語がメディアにどれくらい出現したか、前述のG-Searchで調べると、施行前の一年が336件、施行後の一年が723件。やはり法律名にあり、政府が使っている「食品ロス」という表現の方が圧倒的に多い。

恵方巻の食品ロスは減ったのか?

テレビの映像で廃棄の様子が毎年使われるようになった恵方巻。これに関し、施行前と施行後では変わったのか?

筆者は「変わった」と見ている。

2020年2月3日夜、閉店前あるいは夜間の101店舗の売れ残り本数を調べたところ、2019年に調査した時より減っていた。また、完売店舗も増えていた。

参考:

2020年、恵方巻の食品ロスはどう変わったか?101店舗の調査結果

消費者が家で捨てる食べ物は減ったのか?

消費者が家で食べ物を捨てる行為は、法律の施行前と後で変わったのだろうか。

ハウス食品の調査によれば、「1ヶ月に1回以上捨てた」と答えた人は、2019年7月調査に比べて、2020年7月調査では10%近く減っている。これは客観的に捨てた食品の量を計測したわけではなく、調査対象者の主観で答えたものである。

参考:

家で捨てる食材6,990名調査 納豆、豆腐、もやし、パン、キャベツ、レタス…1位は?

ただし、これは法律の影響というよりコロナの影響ではないだろうか。イギリス・イタリア・オーストラリアの調査でも同様の傾向が見られるが、買い物が制限されたため、家にあるものを使う、買い物リストを作る、などの消費者行動によるもので、新型コロナウイルス感染症拡大予防の策が影響していると推察される。

消費者の賢い購買行動に結びついたのと並行し、2020年春にはパニック買いなどの消費者行動も見られた。

参考:

コロナ禍の世界各国で売り切れた食品は? コロナの時代の食品ロス(イギリス編)SDGs世界レポ(44)

「余るのがデフォルト」ではなく、適量作って売って買うが基本

先日、ツイッターで「食品ロスを減らすこと=安売りになってしまっている風潮を変えたい」といった趣旨の発言を目にした。確かに、コロナ禍以前にも増して「食品ロスにならないよう、売れ残りを買ってください!」みたいな呼びかけをよく見るようになった。

今日30日の12時半過ぎにもTBSラジオに出演するが、今月は食品ロス削減月間ということもあり、メディア出演依頼がいつもの月より多かった。

メディアでの報じられ方を見ていると、まだまだ「余る前提」で「安売りして食品ロスを減らす」と「企業も消費者もwin-win」みたいな流れが非常に多い。もちろん、プラスマイナスゼロにするのは難しいわけだが、日本は食品の安全性や品質管理が他の先進国に比べて厳しく、再利用がしづらい。だから、年間で東京都民が食べる量(612万トン)と同じくらい発生している食品ロスすべてを再利用しきれていない。この発生量(ロス)それ自体を減らすことが先決で、それでも余ってしまったら再利用という流れにしなくては、いつまで経ってもロスは減らせない。

事業者にとっても、安売りや値引き販売するより、本来は定価で売り切れたほうが、利益は大きくなる。

適量作って適量売り、われわれ消費者は適量を買う、という社会に、少しずつでも近づけていきたい。

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン(株)、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。311食料支援で廃棄に衝撃を受け誕生日を冠した(株)office3.11設立。「食品ロス削減推進法」成立に協力した。食品ロス削減を目指す、政府・企業・国際機関・研究機関のリーダーによる世界的連合Champions12.3メンバー。著書に『賞味期限のウソ』『あるものでまかなう生活』。食品ロスを全国的に注目されるレベルまで引き上げたとして第二回食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018受賞

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気候変動が深刻化し、SDGs(持続可能な開発目標)が注目されていますが、対応に悩む企業も多いです。著者は企業広報に14年半、NPO広報に3年従事の後、執筆や講演を通して食品ロス問題を全国に広め、数々の賞を受賞しました。SDGsが掲げる17目標のうち、貧困や飢餓、水・衛生、生産・消費など、多くの課題に関わる食品ロスの視点から、国内外の事例を紹介し、コスト削減や働き方改革も見据え、何から取り組むべきか考えます。

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