テイクアウトの横で同じ食べ物の持ち帰りを禁ずる飲食店の不思議

(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

2020年1月22日付の毎日新聞が、食べ残し持ち帰り 賛成9割も実行は2割未満 消費者庁調査を報じている。

消費者庁による1,316名対象の調査結果によれば、外食時に残った料理を持ち帰ることに対し、9割が賛成する一方、実際に持ち帰った人は2割未満に過ぎないという。

調査対象者は「持ち帰りできると店内に書いてあれば持ち帰る」「容器が準備されていれば持ち帰る」と答えた人が多かったそうだ。持ち帰りの未経験者の理由は「店の許可が取れるかわからなかった」が31.3%で最も多く、「持ち帰りの習慣が一般的ではないと思った」が次点で29.9%だった。

自ら積極的に聞いたり動いたりしようとしない、消費者の受け身な姿勢が読み取れる。

実際、店にたずねると「保健所が厳しい」「衛生上の理由で全部お断り」

毎日新聞によれば「衛藤晟一消費者担当相が、持ち帰りやすい環境整備や意識改革を進める考えを示した」そうだ。

では、消費者が店にたずねたら、店はなんと答えるだろうか。

筆者が2019年11月に行った中華料理店での会食で、店の人に余ったものを持ち帰っていいかと聞いたら「保健所が厳しいからNG」だった。

2019年12月の宴会でも「衛生上の理由でダメ」と言われた。え、フランスパンもだめなの・・・?

2020年1月9日に行った蕎麦店は天ぷらとおはぎはOKで、蕎麦はダメとの回答。

2020年1月11日の立食では、お店の人が持ち帰りパックに詰めて準備してくれた。

年末年始に4回聞いて、持ち帰りOKだったのは1回きり。

現状では、「全部お断り」というお店がとても多い印象だ。

テイクアウトOKの飲食店があるのに、なぜ、同じものを食べた客の持ち帰りは禁じるのだろう。

2019年11月から2020年1月にかけて、飲食店で持ち帰りを頼むこと4回目にして、ようやく許された(筆者撮影)
2019年11月から2020年1月にかけて、飲食店で持ち帰りを頼むこと4回目にして、ようやく許された(筆者撮影)

消費者の自己責任のはずが「店の責任」になると怖いから一律禁止する

本来、持ち帰りは自己責任のはずだ。ドギーバッグ普及委員会でも、ガイドラインで自己責任での持ち帰りを推奨している。

だが、店側は、万が一の食中毒などのリスクやモンスタークレーマーの苦情を恐れて、一律禁止する場合が多い。

曜日や時間単位でシフト(労働者)がめまぐるしく変わることも一因では

飲食店では、安価な労働力として、アルバイトに依存しているところも多い。月曜日のこの時間帯は誰、深夜は誰、火曜のこの時間帯は誰、といったように、労働者が多ければ多いほど、顧客に対して「これは持ち帰りOK」「これはダメ」など、細やかな対応の指示はしづらいだろう。

保健所を管轄する厚生労働省に期待したい

個人的には、日本が安全性を重視し、資源活用をそれより軽視する傾向は、ここ10年のスパンで見ても変わらない。少しずつは変わっているが、劇的に変わることは考えづらい。持ち帰りをここまで禁じるのであれば、飲食店では「適量」注文し、「適量」提供し、食べきるようにしていくことが一つの解決策だろう。

それにしても、2017年5月に消費者庁・農林水産省・環境省・厚生労働省の4省庁が連名で出した飲食店等における「食べ残し」対策に取り組むに当たっての留意事項だが、3年近く経って、当時の状況がさほど変わっていないことは残念だ。中でも、保健所を管轄する厚生労働省の顔が見えない。

持ち帰りを禁じる飲食店の多くの言い訳は「保健所が厳しくて・・・」だ。だったら、保健所を管轄する厚生労働省が、持ち帰りに関して姿勢を変える必要があるのでは?

かつてフードバンクへの協力を打診するため、直談判しに行った際、厚生労働省の職員がおっしゃった一言は

「フードバンクは農水です」

だった。

要するに、うち(厚生労働省)じゃないよ、農林水産省の仕事でしょ、向こうに言ってくれ、という話だ。厚生労働省って福祉の仕事の管轄ではなかったか。今は変わっていればいいが。

参考情報

農林水産省 外食における食品ロス対策

新年会で食べ残しの持ち帰りを禁止する飲食店やホテルはもう時代遅れ その理由とは?

「海老の天ぷらとおはぎはOKで蕎麦はダメ」という不思議

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奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン(株)青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。311食料支援で食料廃棄に憤りを覚え、誕生日を冠した(株)office3.11設立。日本初のフードバンクの広報を委託され、PRアワードグランプリソーシャルコミュニケーション部門最優秀賞へと導いた。『食品ロスをなくしたら1か月5,000円の得』『賞味期限のウソ』。食品ロス問題を全国的に注目されるレベルまで引き上げたとして2018年、第二回食生活ジャーナリスト大賞食文化部門受賞。Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018受賞

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気候変動が深刻化し、SDGs(持続可能な開発目標)が注目されていますが、対応に悩む企業も多いです。著者は企業広報に14年半、NPO広報に3年従事の後、執筆や講演を通して食品ロス問題を全国に広め、数々の賞を受賞しました。SDGsが掲げる17目標のうち、貧困や飢餓、水・衛生、生産・消費など、多くの課題に関わる食品ロスの視点から、国内外の事例を紹介し、コスト削減や働き方改革も見据え、何から取り組むべきか考えます。

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