Yahoo!ニュース

「人間の都合でなく畑の都合。採れた野菜を見て料理を考える」規格外を捨てずに活かすターブルオギノの挑戦

井出留美食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)
ターブルオギノの規格外野菜をデリにした色とりどりの料理(荻野伸也さん提供)

豚肉用の豚は、基準体重の枠を超えると処分されてしまい、食肉として流通できない。そんな肉を仕入れてシャルキュトリー(肉の加工品)にし、美味しく提供しているのが、ターブルオギノ。東京・池尻大橋でフレンチレストラン「オギノ」を営む荻野伸也さんが手掛ける、パテやソーセージなどの手作りシャルキュトリーや、全国の契約農家から送られてくる旬の野菜のフレンチデリをテイクアウトできるお店だ。荻野さんは、規格外の野菜を、直接、農家から仕入れ、美味しく提供している。

筆者は、荻野さんの取り組みを知って以来、国内外の食品ロスの講演でご紹介している。先日、あるレストラン雑誌の取材で荻野さんをご紹介したところ、荻野さんの方からご連絡を頂いた。そこで、この機会に、インタビューさせて頂くことになった。

レストラン「オギノ」の荻野伸也さん(筆者撮影)
レストラン「オギノ」の荻野伸也さん(筆者撮影)

畑の都合に合わせて農家から直接仕入れる

荻野:本当に単純なお話になっちゃうんですけど、年間2,000万トン食料を買っている日本、海外から食料を輸入している日本。2,000万トンぐらい買っている日本が、年間2,000万トン近く捨てているっていうのって、どうなんだろうと。それで自給率が4割に満たないっていう国って、異常だろうなという。

じゃあ、僕ら料理人が一体できることって何だろう、と考えたときに、なるべく市場に流通しにくい物だったり、していない物というのを発掘して、お金を払って農家さんから買わせていただく。

日本にも、そういったフェアトレードみたいな話って、あるんではないかなというのは思っていて。

福岡へ行ったときも、柿の農家さんは、柿をもう出荷するところがなくて、もう木になったまま、立ち枯れしちゃっているんです。「あれ、何で収穫しないんですか」と言ったら、収穫する人手も、人件費も出ない。1ケース20キロ箱で20円とか30円にしかならないときもあるんですって。それだとやっぱり、もう収穫することがもうリスクになっちゃう。

―そうですね。

荻野:「高齢化も進んでいるし、なかなか採れずに、ああやって木が腐っていくんだよ」という話も伺い、何か、柿でうまいことできないかなということも、お友達と考えてみたりとか。

でも、これって一個一個つぶしていくというよりかは、井出先生が書かれているように、食品ロス、家庭だったりとか、飲食店から出てくるロスというのは、意識を変えることだったりをしないと、多分、駄目でしょうし。僕ら料理人ができることとして、一次産業から出てくるその規格外の物のとかいうのも、僕らが持っている加工技術というのを生かして、商品に仕立てることは可能なんですけど。やっぱりそこで出てくる、一次産業から出るその食品ロスというのは、多分カウントされてないような気がするんです。

―カウントされていないです。

荻野:ですよね。そこって、やっぱりすごく、いろんなハードルがあるんで、何から手をつければいいのかよく分からない。行政もそうですし、農協さんもそうですし、漁協さんもそうですし。とりあえず、うちはなるべく農家さんから買うということで、もう大体、いま、7割、8割ぐらいは、農家さんから直で入れてもらっている。

しかも、例えば「明日、ニンジンの料理を作りたいから、ニンジンください」ということは、もうなるべく、ほぼ言わず、基本的には、もう農家さんがそのとき、入れたい物を、例えば、「1万円分ください」と言うと、1万円分入れてくれるということだったり。それを、僕らは見てから料理を考えよう、というスタイルでやって来たので。

―なるほど。

荻野:それで、僕らも勉強になりますし、大変ですけど。農家さんはそのとき、畑にある物で畑の都合によって箱を作れるので、すごく鮮度もいいですし、彼らが自信を持った物を入れてくれる。

 

―そうですね。さっきの、お店からニンジンと言うんじゃなくて、人の都合じゃないっていうことですね。畑の都合で、畑で採れた物ということで。

荻野:畑の都合で。

規格外野菜のデリ(荻野伸也さん提供)
規格外野菜のデリ(荻野伸也さん提供)

太った豚も痩せた豚も市場は受け入れてくれない

荻野:自分で直営として、ターブルオギノというブランドを作って、そこで全国の農家さんから、規格外の物をなるべく集めて、商品化をしていって、それをお客さまに楽しく、おいしく食べてもらおうというのがコンセプトではありまして。

以前から、基本的にその規格とか規格外とかということにあまり拘らず、農家が「ちょっとこれ使ってみて」って言って実験して、実験台のように僕を使ってくださいということで、何か水豚と呼ばれている、例えば暑すぎちゃって、水ばっかり飲んでいて、もう太っちゃった豚とか。

―水で?

荻野:はい。あとは逆に、あんまりご飯を食べなくて痩せ細っちゃって、ハムにできないぐらいの大きさにしか育たなかった豚というのが、やっぱり出てくるらしいんです。

―そうなんですか。

荻野:「そういった物を、ちょっと加工してもらえないかな」みたいなことで、お話いただいたりとかして、「じゃあ、分かりました」と言って、別にちっちゃいだけの話なので。僕ら、基本的にはミンチにかけたりとかってするもんですから、それはソーセージとかできるとか。ということに、結構やってはまいりました。もうこれで7年目に入りますかね。

―7年目? 2010年?

荻野:2012年からです。ターブルオギノというブランドは、その2012年からやっていまして。札幌にお総菜屋さんがあるんですけど、そこは、僕はお手伝いという形で、メニュー監修だけで入ったんですけど。そこは2011年の震災の直前です。2月に、2011年の2月にオープンして、もう8年目に入りますかね。

―そうですか。

荻野:最初レストランをちっちゃくオープンをして、お客さまに、看板メニューとして知ってもらえるような物を1個作ろうということで、その規格とか規格外とか全く意識することもなく、できれば直接農家さんとやれるほうが付加価値も高いだろうという、農家さんをお友達に紹介してもらったら、たまたまその農家さんが北海道だったというところだったんです。

農家さんを直接訪ねて、そこは循環型といって、豚も育てる。そこから出てくる糞は、堆肥に回す。その堆肥で、豚の餌だったり、農協さんに出荷する野菜も育てているというので、グルグルっとうまい循環をさせている大規模な農家さん。畜産も農業もやっているという方だったんですけど。

畑も案内してくださったときに、畑の端っこに、タマネギとかニンジンとか、山のように捨ててあるわけです。「これ、どうするんですか」と。一部は豚の餌になるけど、腐っちゃったら、もうそれは畑に戻すか、ゴミとして焼却処分するか、みたいな話だったので、「これって、何とか流通させられないんですかね」という話になったら、「農協さんは引き取ってくれないので、まとめて使ってくれるところがあれば、もちろん出荷はしたいけど」というようなお話で。「じゃあ、ちょっと1回、僕に送ってください」ということで、それをいただいて、北海道でそれをお友達の場所でキッチン借りて、お総菜にしたりとかして、お客さまに売る場をお借りして、という形で少しずつ始めたことが、お店につながってみたいな。それを東京に持ってきたというのがターブルオギノという活動だったりするんですけど。

―北海道で、それを最初に始められたのが、2011年の2月で。

荻野:2011年です。それ始めたら、もう震災が起こっちゃって大変だったんですけど。

―そうですね、(東日本大震災が)1カ月後ということですね。

規格外の豚を使ったテリーヌ(荻野伸也さん提供)
規格外の豚を使ったテリーヌ(荻野伸也さん提供)

ものはもう要らない、自分が買うことで社会にどういう影響があるのかをみんな考え始めている

荻野:スケールダウンとスピードアップって、何か最近言っている人たちはいますけど。確かにそうなのかなというのも、ちょっと思います。もうこれ以上、物は要らないので、何か自分が買うことによって、どういう影響があるかというのを、もうそろそろみんな考え始めているんじゃないかな、というのはちょっとやっぱり思うんです。

―そう。スーパーで私がいいなと思うのは、福岡の柳川のまるまつ

荻野:はい、はい。

―まるまつさんが、海でしけて(魚が)獲れないとき、大手は、もう数合わせで買って行くと言っていました。だけど、彼は(社長さんは)買わない。古くてまずくて高い。

荻野:確かに。

―自分がおいしいから買う、というスタンスなんです。で、野菜なんかも、ほぼ福岡産か九州産というふうになっていて、チェーンじゃないから1店舗しかない。でも、柳川の高齢化のとこで、7競合中、シェアナンバーワンです。もう穴だらけの棚とかもあって。だから欠品NGって誰のためなのかなと、ちょっと思うんです。

荻野:確かに、確かに。

―京都の八百一本館さんというスーパーも、欠品OK、というスタンス。カンブライトさんのそばです、八百一さんは。八百一本館。

荻野:確かに。僕も先日、コンサルティングに入ってほしいと言われたんで、まずは中をのぞいてみると、何十種類もお弁当があるんですけど。1日30個売れるお弁当に対して、生産量は70個だったりするんです。やっぱりスーパーの考え方をそのまま総菜に持ってくると、とにかく物がないと売れないという感覚なんでしょうね、多分。

―欠品駄目なんですね。

荻野:欠品駄目なんで。とにかく最後の最後まで、もう物があるようにするとなると、営業時間終わった時点で、残った物は全て廃棄になるんです。そうなると、1日30個しか売れてないお弁当に対して、生産量が70。ということは40個、毎日捨てていたということがあって、「それって、何とかならないんですか」と言ったところ、「僕らは、これでしかやってこなかったんで、これ以外のやり方が分かりません」と言うんです。

これは結構大変だなと思いながらも、変えていかなきゃいけないなとは思いつつ。やっぱりスーパーさんは、とにかく欠品させることっていうことに対して、ものすごい恐怖感を持っているんで。でも、それって何なのかなというと、やっぱり最終的には、そこに買いに行く消費者の意識の問題なのかなとは思います。ないことに対して怒ってしまうということが、もう最大の原因なのかなという。

―そうですね。でも、そのさっきの、九州の柳川のまるまつさんの例を見ると、「いや、いや、なんか別になくてもいいでしょ」と思うんです。なくたって、すごく応援されていて。

荻野:確かに、確かに。

―あとは、やっぱり無駄な物は、そぎ落としていますよね。紙のチラシだとか、やっぱりコストが大きいので。

荻野:ばかにならないですもんね。

―はい。(紙のチラシのコストは)何千万とかだって。

荻野さんは狩猟も手がけている。イノシシのソーセージ(荻野伸也さん提供)
荻野さんは狩猟も手がけている。イノシシのソーセージ(荻野伸也さん提供)

フランスのスーパーで奥から牛乳を取ったら言われた「あんた、手前のやつ誰が買うのよ」

荻野:何かオランダかどこかで、廃棄予定の食材だけを使ったレストランみたいなのが。

―そうですね。イギリスでもオープンしましたよね、確か。

荻野:そうなんですか。

―やっぱり、ヨーロッパはこの分野において、先進地域だと思います。

荻野:すごいなと思って。ドイツなんかだと、もう廃棄予定の野菜だけとかを集めたスーパーとかもあったりなんかして。

―そうですね。デンマークとかベルリンもあったかも。

荻野:あれって、やっぱり文化の成熟度が全然違うから。

―違いますね。去年フランスとイギリスを視察したんですけれども。スーパーに、例えばリデュース、リユース、リサイクルの(3Rのポスターが)壁に貼ってあって、ロンドンのホールフーズ、ホールフーズマーケット。でも、日本のスーパーで見ないですよね。

荻野:確かに。見切り品の何か棚があるぐらいですよね。

―そうですね。だから、非常に倫理的な、というか、震災以降、エシカルとかって言っていましたけど。そういうのがすごく多いですね。

荻野:僕もフランスに行った頃に、牛乳を買おうと思って、まだガキだった僕は、奥から取ろうとするんですよ。

棚の奥から、新しそうなやつを取ろうとしたら、隣にいた黒人のおばさんに、「あんた、手前のやつを誰が買うのよ」と言われたんです。

―ええー。

荻野:あれを僕は未だに忘れられなくて、この文化の成熟度ってすごいなっていう。もう本当、恥ずかしかったんですけど。

―フランス、子どもの頃に住んでいらっしゃったんですか。

荻野:いや、社会人に出る前です。

―社会人で。

荻野:(社会人)の前に、ちょっとフランスに留学していたことがあって、そこでスーパーで、本当に田舎のスーパーですよ。で、奥の牛乳を取ろうとしたら、隣の黒人のおばさんに、「あんた、その手前のやつは、誰が買うのよ」って、怒られたのは、未だに忘れられません。多分、一生忘れられないですね。これは、日本人は勝てないなと思いました。

―本当ですね。

東京・池尻大橋のレストラン「オギノ」(筆者撮影)
東京・池尻大橋のレストラン「オギノ」(筆者撮影)

寺の住職だったじいさんの影響が大きい

荻野:僕、その震災のときも、やりとりしていたのは、塩釜のシスターだったんです。最後の最後までやっぱり動いていたのは、シスターだったんです。

―なるほど。

荻野:僕、じいさんが寺の住職だったんです。

―そうなんですか。

荻野:だからゴリゴリの仏教徒というか、仏教の家に育って。でも、お寺さんって動かないのかなっていうのがあって。でも、やっぱりキリストのあのカルチャーに比べると、全然、やっぱりお寺の動きというのは遅いし、何もしてないところが大半ですし。話を聞くと、大体「宗教家はそういうことをするもんではない」という考え方なんです。それ、ちょっとどうなんだろうな、というのもあって、宗教の問題なのか何なのかというのは、すごく心配。心配というか、気になっていました。

―宗教は(フードバンクの背景には)ある。だけれども、宗教だけが要因じゃないかなと思います。

韓国とか台湾の事例を見ていると、分かち合いという文化、日本にももちろんあるけれど、彼らの分かち合いはもっと進んでいて。韓国は、ビビンバのお店のフランチャイズみたいなのを、廃棄される前のロスになる食べ物を使って運営している人もいます。

荻野:そうなんですか。そういうのも(韓国は)上手ですね。

―はい。日本でも、3・11の後に、宗教の人たちが何か(支援が)できないかというのがあって、私もおてらおやつクラブというのを、すごいいいな、と思ったので(全国の)講演で話していたんです。そうしたら、おてらおやつの人は、もう(私のことを)知っていて、その経緯で(おてらおやつクラブの)監事になった、という流れでして。東大寺でも講演しましたし。

「おてらおやつ」は、もう47都道府県に広がって、宗派を超えてというのが、すごくいいなと思って。

荻野:確かに、自分の寺もすごかったので、お供え物(の量)が。

―そうでしたか。都道府県で言うと、どこ(のお寺)ですか。

荻野:愛知県です。

―愛知県のお寺。

荻野:はい。それはもう、全体で見たら大した量ではないので、檀家の子どもたちとかに配っていましたけど。そのおやつクラブ的な活動じゃなくて、お寺の敷地に遊びに来た子たちに配ったりとか。

―おてらおやつの(主宰者の)奈良の松島さんに聞いたのは、もちろん子どもたちとかお母さんに喜ばれているんだけど、むしろ、お寺に喜ばれていると言って、やっぱり(寺自身が捨てることに対して)罪悪感を抱えていて。

荻野:そうみたいですね。本当にそうみたいです。僕の場合は、じいさんの影響というか教育で、本当に食べ物を捨てるということに対する、ものすごい抵抗があるんで。もちろん、うちの店では捨てることは、もちろんないですし。本当に最後の最後、どうにもできないようなスジとかも、うちの犬に食べさせるとか。だしを取った後の骨も家に持って帰って、犬に食べさせたりとか。なるべく、なるべく。ゼロではもちろんできないんですけれど、なるべくなるべくゼロにしたいなというのは、もう当たり前の話で。何か、そういったことが、株式会社として持続性を持った形で、何か新しいこと、みんなが参加しやすい形で、何かできるといいかな、っていうのは、ずっと、ずっと考えていて。

―そうですよね。やっぱり持続しないと駄目ですよね。

荻野:はい。もちろんNPOとか、そういった形でもいいとは思うんですけれども。僕は株式会社しかやったことがないので。なるべく持続性を持たせた形で、そういったロスをバッともらって、加工して売って行く。食べる人はおいしいね、それを安いね、と思っていただけるかどうか分からないですけれども。東京という場所だったりとか、都市というところが、消費というのが一つの仕事であれば、それを利用というか、なるべくいい循環を生むような形でやっていけないかなと。

レストランオギノの近くにある池尻稲荷神社(筆者撮影)
レストランオギノの近くにある池尻稲荷神社(筆者撮影)

 

新しいものを立ち上げるにしても、既存の物を使ってエコな形で

荻野:なるべく新しい物は作りたくない。ある物でやりたいというのは、もうずっと思っているところで。メディアと一緒にやっているところでも、新しいことはもう全て何も作らない。ある物を発掘して行って、それを紹介していくというのが一つのコンセプトなんで。どうしても、それで風前の灯火で消えていくカルチャーとかも、やっぱり食に関してはあるので、それを通り越してみんなに知ってもらうということで、選択肢の一つとして入れてもらおうというのが、一つのコンセプトなんで。

何か新しいことを立ち上げるにしても、既存の物を使いながら、なるべくエコな形で、環境負荷の少ない形でやりたいなっていう。

―なるほど。買い取る野菜に関しては、さっき(北海道から)メールが来ていたのだと、それは期間限定ということなのかな。それとも。。。

荻野:いや、もう、ずっと。

―ずっと。

荻野:ずっと、もう7~8年前から、北海道のお店を始めるときからのお付き合いなんで、ずっとそれ(北海道の野菜)は来ています。

―今回、量的に、(北海道の)地震があったから増えているということですか。

荻野:そうですね。北海道で取引しているレストランさんとかが、買いたくても、お客さんが少ないから買えないんで、産地に余っちゃっている。それを、できれば内地の東京のほうで使ってもらいたい。でも、うち(オギノ)じゃあ、あまりにも全然少なすぎるんで、問屋のほうに、僕が仲良くしている、いい問屋があるんです、本当に生産地のことを考えた。年間通して、同じ金額で買うという契約を必ずするんです。

―いいですね。

荻野:だから大量にできようが、同じ金額で買うんで、生産者さんは、もう安心して作れる。

―安心ですね。

荻野:だから、その問屋のためだけに価格を1つ作れる、というところがメリットで。逆に物が少ないときも同じ金額で買うというので、ほとんど問屋とすると、すごく年間を通して、安定して紹介ができるというので、お互いにとってメリットがある。市場のその、あれに左右されないという、直接やるという、志の高い問屋があるので。

レストランオギノそばの池尻稲荷神社に掲げられていた言葉(筆者撮影)
レストランオギノそばの池尻稲荷神社に掲げられていた言葉(筆者撮影)

インタビューを終えて

「ニンジンの料理作りたいからニンジンください、ではなく、農家さんがその時入れたいものを1万円分入れてもらう。それを僕らは見てから料理を考える」という言葉が最も印象に残った。料理人の都合ではなく、畑の都合、農家の都合に合わせる、というスタイルは、以前取材した、規格外の魚を仕入れて当日にメニューを考えるという居酒屋魚治(うおはる)と共通性を感じた。

「料理人にできることは、なるべく市場に流通しにくい物や流通していない物を発掘して、お金を払って農家さんから買わせていただく」という、生き物や命に対する敬意と謙虚な姿勢。人間が決めた規格から外れた食べ物を捨てないで活かしていくという荻野伸也さんの、これからの活動に寄り添っていきたい。

食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。3.11食料支援で廃棄に衝撃を受け、誕生日を冠した(株)office3.11設立。食品ロス削減推進法成立に協力した。著書に『食料危機』『あるものでまかなう生活』『賞味期限のウソ』『捨てないパン屋の挑戦』他。食品ロスを全国的に注目させたとして食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。https://iderumi.theletter.jp/about

井出留美の最近の記事