サステナブル・ブランド国際会議で第5回グッドライフアワード環境大臣賞最優秀賞受賞の救缶鳥プロジェクト

サステナブル・ブランド国際会議で講演するパン・アキモトの秋元義彦氏(筆者撮影)

2018年3月1日と2日の2日間開催される「サステナブル・ブランド国際会議2018東京」が、ヒルトン東京お台場で始まった。

ヒルトン東京お台場の外から見える景色(筆者撮影)
ヒルトン東京お台場の外から見える景色(筆者撮影)

開催概要は次の通り。

会期:2018年3月1日(木)~2日(金) 2日間

会場:ヒルトン東京お台場  135-8625 東京都港区台場1-9-1

来場者数:1,500名予定

内容:セッション、ワークショップ、ネットワーキング企画など

参加費:有料(事前登録制)

主催:株式会社博展

   Sustainable Life Media, Inc. (本社:米国・サンフランシスコ)

協賛:スポンサー・パートナー企業様各社

会場に掲示されたプログラムと講演タイトル、登壇者(筆者撮影)
会場に掲示されたプログラムと講演タイトル、登壇者(筆者撮影)

初日の今日は、昼の時間帯に、環境省の第5回グッドライフアワード環境大臣賞最優秀賞受賞記念プレゼンテーション「救缶鳥(きゅうかんちょう)プロジェクト」として、株式会社パン・アキモト(以下、パン・アキモト)の代表取締役、秋元義彦氏が講演を行なった。

第5回グッドライフアワード環境大臣賞最優秀賞を受賞したパン・アキモトの救缶鳥プロジェクト(筆者撮影)
第5回グッドライフアワード環境大臣賞最優秀賞を受賞したパン・アキモトの救缶鳥プロジェクト(筆者撮影)

筆者は、備蓄の大量廃棄に関する記事を何度か書いてきた。その中で、備蓄を捨てずに戦地や被災地へと寄付する「仕組み」を作り、ビジネスとして循環させているパン・アキモトの救缶鳥プロジェクトに注目し、何度か記事を配信してきた。

今日の講演の司会進行は、ラジオのJ-Waveでもおなじみの、レイチェル・チャンさん。

司会進行をつとめるレイチェル・チャンさん(筆者撮影)
司会進行をつとめるレイチェル・チャンさん(筆者撮影)

まず最初に、環境省、総合環境政策局 環境計画課 企画調査室の計画官、山田哲也氏にご挨拶いただいた。

最初に挨拶する、環境省の総合環境政策局 環境計画課 企画調査室の計画官、山田哲也氏(筆者撮影)
最初に挨拶する、環境省の総合環境政策局 環境計画課 企画調査室の計画官、山田哲也氏(筆者撮影)

環境省がグッドライフアワードを主催する意義について。これまで5回開催した。一言でいうと、「ライフスタイルのイノベーション」という思いからやらせてもらっている。「イノベーション」というと、普通は技術のイノベーションを指すと思うが、技術だけでなく、経済社会システムやライフスタイルのイノベーションもある。それを、我々からの押し付けではない形でやっていきたい。

毎年見ていると、よくまあ、こんなにも発想が出てくるなあと、意義深いと感じている。これまで5回実施しているが、受賞者は、表彰されたことによって活動をさらに広げていっている。我々も、もっとそういうことをやっていきたい。

環境省が主催するイベントなので、「環境に優しい取り組み」ということになるが、環境にいいということだけでなく、経済や社会にとってもいい、そういう取り組みがたくさん増えていると思っている。今後は、できるだけいろんな主体や世代の方にご応募いただきたい。子どもtたちや、退職されたお年寄りの方にも第二の人生になっていただくというのも狙っていけるかなと思っている。表彰しっぱなしではなく、受賞者の方が、その後、どう活躍を広げていっているかをフォローしていきたい。

講演するパン・アキモトの秋元義彦氏(筆者撮影)
講演するパン・アキモトの秋元義彦氏(筆者撮影)

次に、秋元義彦氏が登壇した。

阪神大震災がきっかけで、被災者の声で、パンの缶詰を作った。「もっと美味しいパンができないのかな?」というのが、被災者からの質問だった。「ないよ」と言うと、「ないなら作りなさいよ」「あなた、パン屋でしょ」「それがミッションでしょう」ということから、小さな会社だが、チャレンジを始めた。それから一年経ってできたのが、このパンの缶詰。信じられないほどロングライフ。

会場で試食を勧めるパン・アキモトの社員のお二人とパンの缶詰(筆者撮影)
会場で試食を勧めるパン・アキモトの社員のお二人とパンの缶詰(筆者撮影)

日本は災害の多い国。大きなターゲットは新潟中越沖地震の時。新潟の山古志(やまこし)村。あの時、大きく役に立ったのが、私たちのパンだった。被災後1週間で学校の授業は再開されたが、そこで学校で配られたのが、私たちのパンの缶詰だった。私たちの商品は、メディアの人たちにも取り上げられ、たくさん売れた。

でも「秋元のパンの缶詰、いいんだけど、賞味期限が切れたらどうなるんだ?」それを知った時、私はショックを受けた。お客さまに捨てられる運命にある、と知った時、なんとかならないかなと思った。

学生時代、私はアメリカ人の宣教師の元にいた。その頃は、まだたくさん髪の毛があった。宣教師に連れられて行ったのが、アメリカだけでなく、インドや、ネパール、バングラデシュなど。そこで目の当たりにしたのが、今日の食事すらないストリートチルドレンや、今日にでも命を無くしてしまう人だった。パン屋の息子だから、パンは売るほどある。サンドウィッチも含めて、パンには消費期限があるから、翌日には捨ててしまう。一方で、もう命を無くしてしまう子がいるのに、明日にはパンを捨ててしまう。このギャップが、私たちにとってはショックだった。

会場で販売されているパン・アキモトのパンの缶詰(筆者撮影)
会場で販売されているパン・アキモトのパンの缶詰(筆者撮影)

パンの缶詰が少しずつ売れ始まった時、スマトラ沖地震が起こった。津波のシーンを覚えていらっしゃる方も多いと思う。私の友達が現地で日本語学校を経営していた。被災地から電話がきた。「秋元、売れ残ったパンないか?そのパンあったら送って欲しい」「中古でいいから」と。中古でいい、と聞いた時にひらめいた。そうだ!中古でいいのであれば、日本じゅうにある。タイミングよくパンの缶詰を回収して、現地に届けられないだろうか?そうだ。全国から集めればいいんだ。美味しいパンを食べて欲しい。しかし、問題がある。誰が、どうやって全国から集めればいいんだろう?ヤマトさん、佐川さん、(日本)郵政さん。送料負担をすれば、全国から集まるでしょう。でも、私たちのスキームは、「ただで集めて、ただで送って、ただで配れないだろうか?」と考えて、考えて、考え抜いて。どうしたらいいのかな?

ふと、悩んだ時に、こんな思いがあった。「『私』がやりたい、からうまくいかないんだ。『私』じゃなくて、『私たち』がやりたくなればいいんだ。物流会社のプロや、海外に送る輸送会社、NPO、NGOと、一緒にできないかどうか、頼んでみよう。ただで宅配業者に頼める?」

答えはノー。お金を払ってもらえば集めますよ。・・・そんな葛藤や、やり取りをしている時、こんなずるい発想を考えた。「これはヤマトさんのためにもなるんだ」と。

会場に掲示されたサステナブル・ブランド国際会議2018東京のポスター(筆者撮影)
会場に掲示されたサステナブル・ブランド国際会議2018東京のポスター(筆者撮影)

救缶鳥プロジェクトは、2009年から始まっているが、実際にはその数年前からこのプロジェクトの準備は始まっていた。当時、ヤマトは、まだ往復の宅急便というのをやっていなかった。そこで、ヤマトさんに「我が社の商品を送った後、帰り便の(トラックの)スペースというのは空いていますよね?そこに、無償で載せてもらえませんか?」とヤマトさんに頼んだ。それは、ヤマトさんのためなんです。往復宅急便のヤマトさんのスキームになりますよ、と。飛行機の例を考えても、飛行機は半分の金額でも見合うようになっている。ヤマトさんに「帰り便に、リーズナブルな値段でのせてもらえませんか?」と言ったところ、「面白い!」と言ってくれた。「よし、わかった」と。関東以外の担当者にも、全部話をしてくれた。まさに、サントリーさんのように「やってみなはれ」(の精神)。

サステナブル・ブランド国際会議2018東京用に作られた、パン・アキモトのパンの缶詰。会場で2個で1,000円で購入できる(筆者撮影)
サステナブル・ブランド国際会議2018東京用に作られた、パン・アキモトのパンの缶詰。会場で2個で1,000円で購入できる(筆者撮影)

大阪にJIFH(日本国際飢餓対策機構)というNGOがある。言ってみれば、JICAの民間版のようなNGO。農業支援や教育支援、食料支援をやっている。その食糧支援の部門に、パンの缶詰を託すことにした。

ある時、一枚の写真を見せられた。それは、あるアフリカの少年だった。その少年が座って、何かを食べている写真だった。「秋元、これ、何を食べているかわかるか?」「エチオピアの少年だ。お腹がすきすぎて、土を食べているシーンなんだ」ショックを受けた。その子は、2日後に亡くなったと聞いた。

今、私たちに求められているのは、ソーシャルビジネス。21世紀に「よい会社」。利益を上げることは当たり前。それは、次なる投資のために、次なるステージに行くためには、必ず収益を上げなければならない。しかし、私たちは、社会に対するお返し(CSR)が求められているのではないか。

本業はパン屋。海外に出てボランティアをするのは本業から外れている。パン屋ができることを、考えた。

救缶鳥というのはパンの缶詰である。個人、学校、企業、たくさんの方々がこれを備蓄しており、我々は賞味期限3年のものを送っている。賞味期限切れる前(1年前)になって、再購入していただく場合(同意をしてもらったら)責任を持って回収し、チェックをし、NGOに託して、世界に送る、というスキームを作った。そこで私たちが気をつけているのは、送ったものが、必ず届くという保証。私たちのパートナー(提携会社)にお願いしているのは、写真とレポートを送ってもらうこと。それがパン・アキモトに返ってきた時、参加者の皆さんに、インターネットを通して結果を伝える。いわば「義援の見える化」を確立している。世界のお腹のすいている子たちにパンの缶詰が届くということ。

会場ではサステナブル・ブランド国際会議2018東京のロゴやイラストが入った限定版のパンの缶詰も販売されている。2缶で1,000円(筆者撮影)
会場ではサステナブル・ブランド国際会議2018東京のロゴやイラストが入った限定版のパンの缶詰も販売されている。2缶で1,000円(筆者撮影)

本田宗一郎さんに、若かりし頃、こんなことをアドバイスされた。

「不常識を、生真面目に続けろ」

つまり、常識から外れていることを、楽しく続けよう、ということ。

私たちのやっていることは、ルール的に、ちょっとおかしいかもしれない。でも、必ずや、世界のためになるんだ、と。やっていることが、企業の発展にも繋がる。今回のビジネスを通して、我が社の社員を巻き込んだ。社員という「私たち」、そして、世界のみんなのネットワークが、この「パン」の缶詰で繋がった。日本人にとって、今や、備蓄をすることは常識になった。でも、(パン・アキモトは)ごみになる備蓄ではなく、世界の人を助ける備蓄になった。メディアの人は、田舎のパン屋(であるパン・アキモト)をクローズアップすることによって、小さい会社でも社会にお返しのできる活動ができる、ということを示すために私たちを取り上げてくださっているのではないか。

今後、環境省を含めて、自分たちが備蓄する、救缶鳥(の仕組み)にのっとって備蓄をしていただければ、毎年のように、世界へ(備蓄が)行くモデルができるのではないか。

賞味期限が3年(37ヶ月)あるパン・アキモトのパンの缶詰(写真:パン・アキモト提供)
賞味期限が3年(37ヶ月)あるパン・アキモトのパンの缶詰(写真:パン・アキモト提供)

2017年10月に『世界を救うパンの缶詰』(文:菅聖子、絵:やましたこうへい、ほるぷ出版)という本が出版された。小学5年生以上が読める、わかりやすい本。もしかすると、今年の読書感想文の(指定の)本になるかもしれない。今日は菅(すが)先生も会場にいらっしゃっている。

書籍『世界を救うパンの缶詰』(筆者撮影)
書籍『世界を救うパンの缶詰』(筆者撮影)

私には4人の子供がいて、この子(パンの缶詰)が5番目の子だと思っている。日・米・中・台湾で特許をとっていて、宇宙へも2回、飛んで行っている。NASAも認めた商品だと言える。備蓄をすることが、世界の子どもたちのお腹を満たすことになるのだとも言える。

今日は、古いパンを持ってきた。賞味期限が、もうそろそろ切れるもの。2年前に作ったパンだが、ふかふかしているパン。こんな技術が日本から出てきた。

会場で試食として提供されたパン・アキモトのパンの缶詰。手前がブルーベリー、それ以外がオレンジ。作ってから2年経ったものだが、ふわふわと柔らかく、香りもよかった(筆者撮影)
会場で試食として提供されたパン・アキモトのパンの缶詰。手前がブルーベリー、それ以外がオレンジ。作ってから2年経ったものだが、ふわふわと柔らかく、香りもよかった(筆者撮影)

私たちは米国サンフランシスコでビジネスパートナーを見つけた。皆さんも、NGO、NPOを通して、世界に繋がっているということを確信して欲しい。遠慮なく皆さんの活動をメディアに訴えて見てはいかがだろうか。積極的にアクションを起こして欲しい。日本人は、リアクション(反応)が怖くて活動をしない。たとえば失敗、反対など、いろんなリアクションがある。リアクションを知ったら、「リ・リアクション」(する)。一度で諦めないで、二度、三度と挑戦する。諦めないこと。皆さんの活動がブラッシュアップされることを確信している。

これまでパン・アキモトがパンの缶詰を届けてきた国や地域(筆者撮影)
これまでパン・アキモトがパンの缶詰を届けてきた国や地域(筆者撮影)

ここで、こんなちっぽけな会社をサポートしてくださっている大きな会社、北越紀州製紙株式会社の荒井芳晴さんにご登場いただく。

北越紀州製紙株式会社の荒井芳晴氏(筆者撮影)
北越紀州製紙株式会社の荒井芳晴氏(筆者撮影)

私は紙を作っている会社に勤めている。入社以来、ずっと、紙の原料になる森林に携わってきて、2014年まで南アフリカに駐在していた。どちらかというと、森林管理一筋でやってきた。

この救缶鳥プロジェクトは、すごいタイミングだった。2014年に日本に帰国し、帰国と同時に、秋元さんが営業で私たちの会社に来た。この時、初めてパン・アキモトの支援を知った。スワジランドには(仕事で)ちょくちょく出入りしていたが、お昼ぐらいになると、子どもがそのへんに座っている。運動するとお腹が減るので、道路ぎわに、ただ座っているのだという。そういう子どもたちに、なんとか、給食を小学校に届けてあげられないだろうか、ということを、秋元さんにお話ししたら、「じゃあ、やってみましょう」ということから始まった。

スワジランドというのは、アフリカ大陸にあって、ほくろみたいな、ちっちゃい国。面積も、北関東3県合わせたのより、さらにちっちゃい王国。国土は肥沃で農林業が盛んな国。製紙原料となるユーカリや、松の実の栽培が盛ん。

私たちの会社では、荷物を運ぶ時に使うパレット材に熱帯地区から切った木を使っていた。が、環境に良くないということで、それに代わる木はないか?ということで、スワジランドのユーカリを試してみることになった。毎日、車で国境を越えていく。お昼の時間になると、道路に子どもが座っている。「お腹が減って、座っているんだ」と。スワジランドの赤十字社に食料事情を聞いたところ、アフリカの中では食糧支援の予算がなく、成長期の子どもに食料があげられない。そこで、救缶鳥プロジェクトの話をした。会社は、アフリカに年間20航海、船が往復している。会社としてもCSRとして、スワジランドを全面的にサポートしましょう、ということになった。

パン・アキモトの救缶鳥プロジェクト(写真:パン・アキモト提供)
パン・アキモトの救缶鳥プロジェクト(写真:パン・アキモト提供)

スタートしたのが2014年の8月。10月頃、船で持ってくることにしましょう、となった。一回に、10,000缶、20,000缶を持ってくるのだが、大きな船の中に、ほんのちょこっとだけ載せる・・・ということになってしまった。どうやったらいいんだろうか?そこで、船の中に、蜘蛛の巣をはりめぐらせるような形で(紐で)固定し、運ぶことになった。

それは解決したのだが、今度は植物検疫に引っかかってしまった。なかなか理解してもらえず、秋元さんに成分表の英語版を作ってもらったりして、検査に通るのも1ヶ月くらいかかった。

そうしたら今度は、南アフリカの政府から、クレームがついた。寄付目的ということで「偽装して商売するんじゃないか?」と。簡単に(できると)考えていたことが、物事が、うまくいかなかった。

備蓄として使えるパン・アキモトの救缶鳥。賞味期限が残り1年になったところで再度購入すると、パン・アキモトがこれまで保管していたものを引き取って最貧国や被災地などへ送ってくれる(パン・アキモトHPより)
備蓄として使えるパン・アキモトの救缶鳥。賞味期限が残り1年になったところで再度購入すると、パン・アキモトがこれまで保管していたものを引き取って最貧国や被災地などへ送ってくれる(パン・アキモトHPより)

そして、2014年の暮れ。最初の救缶鳥が届いた。現地の小学生や先生たちが大喜び。 黒人の子どもたちの笑顔は、とてもまぶしい。ここまで運ぶまでが大変だったけど、子どもたちの笑顔を見たら、すべてリセットされた。

パン・アキモトの講演が行なわれた会場。ランチやドリンクが振舞われた(筆者撮影)
パン・アキモトの講演が行なわれた会場。ランチやドリンクが振舞われた(筆者撮影)

この2月にも28,000缶を届け、スワジランドにはこれまで77,000缶を届けてきた。現地からも大変感謝された。

5年前に帰ってきて、このプロジェクトに参加した。引き続き、秋元さんを支えていきたいと思っているし、今後とも関わっていきたいと思っている。

左から、司会進行のレイチェル・チャンさん、秋元義彦氏、荒井芳晴氏(筆者撮影)
左から、司会進行のレイチェル・チャンさん、秋元義彦氏、荒井芳晴氏(筆者撮影)

参考記事:

「9・9・9」(スリーナイン)に始めた 9(救)缶鳥プロジェクト

防災食「入れたら出す」仕組みで無駄なく活用