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「30年間で子どもの数50%以上減少」都道府県別にみる子どもが産まれず、若者が消えていく現象

荒川和久独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター
(写真:アフロ)

子どもの数の減少

「少子化が決定づけられたのは、1990年代後半から2000年代にかけて「第三次ベビーブーム」が起きなかったからである」

この話は、取材や講演でも何度もしているが、1990年から2020年の30年間に、子ども(0-14歳)の人口がどれくらい変化したかをまとめてみる。

全国でいえば、1990年子どもの人口は約2250万人だった。それが、15年後、つまり0-14歳がすべて入れ替わった時点では、約1760万人に減っている。人数で500万人近く減少。15年間の減少率は▲22%である。

2005年から2020年の15年間では、子どもの人口はさらに約250万人減って、約1500万人となった。15年間での減少率は▲15%となる。

30年間トータルでは約▲33%、子どもの数が減っていることになる。

そうはいっても、全国で見ると、30年間でまだ3割減で済んでいるのかと思うかもしれない。しかし、この3割減は全国の数値であり、都道府県別に見るとエリアによって大きく異なる。

都道府県別の減少比較

1990-2005-2020年に渡って、15年単位での子どもの人口増減と1990-2020年のトータルの増減率を都道府県別に示したのが以下のグラフである。

まず、目立つのは2005-2020年にかけて唯一子どもの人口が増えているのが東京だけという点である。

「東京の合計特殊出生率は全国最下位なのにおかしくないか?」と思うかもしれないが、2000年以降出生数を増やしているのは全国で東京だけなのである(参照→合計特殊出生率全国最下位でも「東京だけが唯一出生数を増やしている」という事実)。

そのため東京だけは30年間で10%弱しか減っていない。出生率が全国トップの沖縄より子どもの減少率は少ないのだ。

これも、何度も言っている通り、出生数とは、出産対象年齢のしかも既婚女性の絶対人口で決まるからだ。一人当たりの母親が産む子どもの数は1980年代から全く変化していない。つまりは、出生減=子どもの数の減少とは、産む母親の数が減っているからによる、私が「少子化ではなく少母化」といっているものである。

東京は確かに未婚率も全国1位だが、それを上回る女性の人口集中がある。特に、東日本の各エリアの20代女性は東京に一極集中する。

子どもの減少率を見ても、東京の他首都圏三県や愛知、大阪、福岡など20代女性が流入する大都市だけが減少率が低い。大阪は減少数は多いが、それは1990年の子ども数自体が多かったためで、減少率としてそれほど大きくない。

子どもが5割以上減った

深刻なのは、そうした大都会へ20代女性が流出してしまう地方である。甲信越、北陸や四国、福岡以外の九州などもそうだが、意外に近畿圏の奈良や和歌山の減少率も高い。何より宮城を除く東北の落ち込みが激しい。

30年間の減少率ボトム5は以下である。

1位 秋田県
2位 青森県
3位 岩手県
4位 福島県
5位 山形県

5位まですべて東北勢が独占している。

しかも、5位の山形だけはかろうじて減少率49%だが、他の4県はすべて50%超えである。30年間で子どもの数が半減したということは、15年後子どもを産む対象年齢の女性人口そのものが半減することと等しい。さらに東北エリアでは、20歳以上で故郷を離れて東京など都会へ流出する社会減もあるので猶更減少するだろう。

20代女性が流出するエリアは、当然20代男性の男余りが加速する。ただでさえ出生性比が1.05で男の方が多い上に、社会減で女性が流出することで地方の男性は「結婚したくても相手がいない」という状況になる(参照→ますます結婚がきつくなる「地方の男女マッチング不全」20年間で大変化した20代の男女比格差)。

しかし、地方からの若者流出を強制的に止めることはできない。

江戸時代でさえ、農村からの人口流出が深刻となった際に、帰農令人返し令などが出されたことがあったが何の効果もなかった。人口は経済力のあるところに吸い寄せられるものだからである。

写真:イメージマート

少子化の問題を出生率だけで判断して、とある村落で出生率が2.0を超えたなどというニュースがたまに出るが、絶対人口の少ないエリアで出生率が2.0になろうと3.0になろうと、日本全体の出生数にはまったく影響しない。出生数は人口に依存するものなので、すでに大きく減少している子どもの数を見れば、少なくとも15年後の子どもの数はかなり高い精度で予測可能なのである。

東京もこれから減少する

それでも「東京をはじめとする大都市では子どもの数が減っていないのならいいではないか」という見方もあるが、残念ながら、2020年以降(正確には2015年以降)は東京ですら減少基調に突入しており、15年後の2035年には全国すべての都道府県の子どもの数が減っているだろう。

人口の多い大都市では、ある程度の裕福層しか結婚できなくなりつつあり、中間層の未婚化と無子化が進んでいるからだ。人口の多い大都市の出生減は、全国的にも大きな影響を及ぼすが、それが今や現実化している。

こう言うと「少子化は受け入れるしかないとか、最早手遅れといった諦観論を言うな」という大学教授とかがいるのだが、諦観ではなく、正確かつ客観的現実認識を諦観とか悲観とか主観の問題にすり替える事の方が害悪

不都合な事実を「見ないフリ」するのは限界にきている。なかったことにして、いつまでも先延ばしにして「できもしない事をさもできるかのように言い続ける」事の方が無責任だろう。

有名な漫画の台詞を持ち出して「諦めたらそこで試合終了なので」などという精神論まで出てくるに至っては、何か太平洋戦争時の竹槍論を彷彿とさせる。そうした根拠なき精神論こそが若者を諦観させてしまうことになる。

写真:イメージマート

何度もいうように出生対象年齢の女性の人口が右肩下がりの時代において、人口が右肩上がりの時代の考え方はすべて通用しない。選択的非婚や選択的無子も増えるだろうし(参照→「生涯無子率」今の日本の20代男の5割、女の4割は生涯子無しで人生を終えるかもしれない未来)、一方で、結婚や子どもを欲しているのにできないという不本意未婚の若者が4割以上もいることを忘れてはならない。

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独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター

広告会社において、数多くの企業のマーケティング戦略立案やクリエイティブ実務を担当した後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者としてメディアに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』『結婚滅亡』『ソロエコノミーの襲来』『超ソロ社会』『結婚しない男たち』『「一人で生きる」が当たり前になる社会』などがある。

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