「生涯無子率」今の日本の20代男の5割、女の4割は生涯子無しで人生を終えるかもしれない未来
少母化と生涯無子
日本に限らず、欧米もアジア諸国も先進諸国は軒並み出生率を下げ続けている。これらの要因を「子どもが生まれない問題」という視点からしか見ないのは間違いであり、そもそも出産する対象年齢の女性の絶対人口の減少によるものである。
つまり、問題は「少子化ではなく少母化」であることは当連載でも繰り返し述べてきた。
→フランスでも北欧でも減り続ける出生の要因「少母化」現象が世界を席巻する
欧米出羽守たちが飽きもせず「フランスを見習え」というが、当のフランスのINSEE(フランス国立統計経済研究所)ですら、「近年の出生率低下の要因は、フランス人の出産・育児年代に当たる女性の絶対人口の減少=少母化」であると明言している。
さて、その中で、経済協力開発機構(OECD)が公開した、世界各国のチャイルドレス統計を以前日経新聞が報じたことがある。いわゆる「生涯無子率」である。
日本における生涯未婚率を50歳時未婚率というように、50歳時点で子のない女性は生涯無子として分類される。
世界の生涯無子率
日本を含む世界各国の生涯無子率(生まれ年別50歳時点の無子率)をグラフ化したのが以下である。
日本の2020年時点(1970年生まれ対象)の生涯無子率は27%で、世界一高い。何より、この15年で一気に他国をごぼう抜きしている。
しかし、これをもって、「日本は子どもが産めない国」という論調にするのはかなり無理がある。日本より出生率の低いイタリアやスペインなども無子率は急激に上昇中であり、今後は日本を追い抜くかもしれない。いつも引き合いに出される北欧のフィンランドも20%超えである。決して日本だけの傾向ではない。
少子化が続くということはこういうことである。
世界各国、生涯無子率が上昇している中で、唯一アメリカだけは16.3%から11.9%へと減少しているが、そのアメリカとて、同じスパンでの出生率は2.02から1.64へと下げているので、生涯無子の女性の割合は減ったかもしれないが、その分一人当たりの出生数は減っているということになる。アメリカとして少子化は避けられない。
→日本・中国・韓国・台湾の東アジアの出生率は低いが、アメリカでも急減しているアジア系の出生率
男の生涯無子率
このニュースでは、日本の生涯無子率が27%、つまり、約3割の女性が生涯子無しであることばかりが注目されたが、出生は男女それぞれ1人ずつの共同によるものなので、当然男性の生涯無子率もある。そして、それは女性より高い。
勘違いしないでほしいのは、生涯無子とは、結婚して子のいない夫婦の割合ではない。結婚しても子どものいない「婚歴有の無子」に加えて、未婚のままで子どもがいない「未婚無子」の両方を合算したものである。
日本の場合は、極端に婚外子が少ないので、未婚はほぼ無子とみなしてもいい。婚歴有の無子の場合は、男女ともほぼ同じ数値になるが、未婚の場合は男女とで大きく差がある。
2020年の国勢調査(不詳補完値)による生涯未婚率は、男28.3%、女17.8%だった。つまり、OECD統計の女性の生涯無子率27%というのは、婚歴有の無子率が、27%-17.8%=9.2%であることを意味する。この婚歴有の無子率を男性の生涯未婚率と足し上げると、男性の生涯無子率は37%超という計算になる。これは、男性のほぼ4割が生涯無子であることを意味する。
さらにいえば、これが天井ではなく、さらに生涯未婚率は今後上昇しすると推計されているので、やがて日本の男性の5割は子を持つことなく生涯を終える時代になるだろう。裏返せば、次世代に自分の子孫を残せる男は半分しかいないということである。同時に、女も4割は生涯無子になる。2040年以降の話なのて、今の20代の若者の話である。
無子率の大部分は未婚率
日本おける生涯無子率という正式な統計はないが、出生動向基本調査において、45-49歳時点の夫婦の子無し割合については長期的に統計をとっている。OECDの統計と多少の誤差はあるが、ほぼイコールと考えていいだろう。
それによれば、婚歴有の無子率は1980年代と比べて上昇しているとはいえ、3.5%が9.9%へと6.4ポイントあがったにすぎない。一方で、女性の生涯未婚率は13.4ポイント、男性は25.7ポイントも上昇している。
生涯無子率をあげている要因のほとんどは、生涯未婚率が上昇分であると結論づけられる。
つまり、出生数が減り続けているのは、ただでさえ出産対象年齢の女性人口が減っていることに加え、この未婚率の上昇こそが大きな比重を占めているのであり、それはすなわち婚姻数(それも若者の)を増やさなければ子どもの数は絶対に増えないということを示唆している。
子育て支援では少子化対策にならないというのはそういうことである。
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