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高校時代モテモテだった恋愛強者女性が「モテるのに未婚」のまま30代後半を迎えてしまうワケ

荒川和久独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター
(写真:アフロ)

恋愛経験率による未既婚差・女性篇

前回の記事(「高校卒業までの恋愛経験率」の差は、未婚と既婚とを分けるのか?)の続きである。

前回は男性篇だったが、軽くおさらいをすると、「かつては、高校まで恋愛経験豊富かどうかはその後の結婚可否に影響はなかったが、近年は、恋愛強者じゃないとなかなか結婚もできなくなっている。しかし、強者男性であっても経済的理由で恋愛はできても結婚できていない場合も増えた。そのため、恋愛強者男性が独身無双状態となり、恋愛弱者男性がますます割を食って、男性全体が結婚できなくなっている」ということである。

さて、今回は女性篇である。

男性篇と同様に、高校卒業までの間に、恋愛経験(告白・デート・キス・セックス)をどれくらい実現させたかの結果を20-50代の未既婚別に集計した。男性とのデータの違いはこちらで確認していただきたい。→男性篇データ

(C)ソロ経済・文化研究所 荒川和久
(C)ソロ経済・文化研究所 荒川和久

まず、未婚女性を見ると、50代→20代と近年になってもほぼその傾向は変わっていない。しかし、既婚女性で見ると、明らかに30代既婚女性だけが恋愛経験率が低くなっている。むしろ30代に関しては未婚女性の方が恋愛値が高かったことになる。

これはどうしたことだろう。

既婚男女で比較

男女別にバラバラに見てもわかりにくいので、既婚男女の値をまとめてみた。それが以下のグラフである。

(C)ソロ経済・文化研究所 荒川和久
(C)ソロ経済・文化研究所 荒川和久

すると、既婚男女は40-50代ともに、恋愛経験率はほぼ同率といっていいほど一致しているが、20-30代は、男は恋愛経験率が高い方が結婚していて、女は逆に恋愛経験値の低い方が結婚しているのである。

わかりやすくいうと、30代の夫婦は高校時代までモテる男と高校時代まで恋愛に奥手だった女とが結婚しているということになる。

ちなみに、30代の女性だけが全体的に恋愛経験値が低いのではなく、前掲のグラフの通り、30代で高校までモテた女性は未婚者が多いのだ。

人口動態調査から、2020年時点の30代既婚女性が初婚割合の高い時期の25-29歳での初婚数を見ると、50代女性の時代より23%減、40代女性の時代と比べると30%以上も減少している。

巷では、女性の晩婚化といわれているが、実際は晩婚化などというものは起きておらず、20代のうちに未婚の女性は30代以降も未婚のままという非婚化となっている。晩婚化ならば、20代で結婚すべき数が30代にズレていなければならないが、そうはなっていないからである。

麻生副総裁のいう晩婚化など起きていない。起きているのは若者が結婚できない状況である

ここから考えられるのは、今の30代以上の女性の場合、なまじ高校時代まで恋愛強者でモテた女子ほど、20代のうちに結婚できていないことになる。そこには「私はモテていたのだから、それなりのレベルの相手と結婚できるはず」という心理が働いているのだろう。当然相手に求める条件も「年収400-500万」では満足しない。

しかし、何度も言うが、そんな年収条件にあてはまる未婚男性はそんなにいない。400万円以上の年収でさえ3割もいない。また、一流商社などの就職した一部の勝ち組男性はそれ以上に稼いでいるが、当たり前だがとっくに売約済みとなっている。

恋愛に苦労はしないが結婚に苦労する

元々恋愛強者女性なのだから言い寄る男性はたくさんいたはずだ。しかし、「もっといい男がいるはず」などと片っ端からフリまくっているうちに、20代は過ぎ去り、気が付いた時にはもう相手がいないという状況になっているのではないだろうか。だとしても条件を下げるなんてことはプライドが許さないのだ。

「あの子、ものすごいモテそうなのに…」と思われる人がずっと未婚のままという現象を皆さんの周りでも見たことがあるだろう。

写真:イメージマート

別に結婚がすべてではないし、結婚したいと思わない選択生的非婚もいると思うので、それがどうだという話ではないのだが、「恋愛強者の女性は恋愛には苦労しなくても、結婚には苦労してしまう」という要因の一端がここにあるような気がする。

あげるべきは恋愛力ではない

男性は、恋愛強者でないと恋愛も結婚もできないし、恋愛強者でさえ経済強者にならないと結婚できない。女性は、恋愛強者であれば恋愛相手に事欠かないが、いざ結婚相手となるともう存在しない。恋愛強者であっても男女とも結婚できなくなっているのだ。「婚姻を増やすには若者の恋愛力をあげよ」なんて内閣府の有識者会議の提案がいかにデタラメなものかがわかると思う。

あげるべきは恋愛力ではなく、若者の経済力である。

それでも、恋愛弱者女性は、まだ救いがある。実際、1000組の夫婦調査をしても、恋愛強者男性と結婚している相手の半数は恋愛弱者女性なのである。

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毎度、身も蓋もない話をするが、目も当てられないのが恋愛弱者男性たちである。恋愛強者男性が今後も結婚せず、独身無双を繰り返すのであれば、いつまでたってもお鉢が回ってこない。恋愛強者女性が恋愛弱者男性とマッチングするとすれば、それは経済強者男性一択である。

つまりは、恋愛弱者男性たちは恋愛力をあげるなんて無理な事を考えず、せめて経済力を高める努力をした方がまだ実現可能性が高いのではないか。あくまで結婚したいのなら。

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独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター

広告会社において、数多くの企業のマーケティング戦略立案やクリエイティブ実務を担当した後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者としてメディアに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』『結婚滅亡』『ソロエコノミーの襲来』『超ソロ社会』『結婚しない男たち』『「一人で生きる」が当たり前になる社会』などがある。

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