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恋愛弱者の「恋愛力下剋上婚」の割合はどれくらいか?実際の夫婦調査から

荒川和久独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター
(写真:アフロ)

恋愛強者率はいつも同じ

当連載でも何度かお伝えしている「恋愛強者3割の法則」。

簡単におさらいすると、いつの時代も大抵「恋人がいる割合」というのは男女とも大体3割程度なもので、残りの7割には相手がいない。出生動向基本調査にもある通り、恋愛至上主義時代と呼ばれたバブル期の1980年代でさえ変わらないというものである。

細かく分布にすれば、恋愛強者は3割で、7割の恋愛弱者のうち4割は中間層で、恋愛最弱者は3割となる。

40年前から「恋愛強者は3割しかいない」のに「若い頃俺はモテた」という武勇伝おじさんが多い理由

恋愛強者論への反論

よく「最近の若者は草食化している」という識者もいるが、それは狡猾なことにもっとも値の高かった2002-2005年以降のデータだけ切り取って、「ほら、下がっているでしょ」と言っているに過ぎないので注意していただきたい。「数字は嘘をつかないが、嘘吐きは数字を使う」のである。

しかし、それとは別に、未婚者の統計だけで、恋愛強者3割と断じるのは乱暴ではないかというご指摘もある。

なぜなら、現代は恋愛結婚が9割を占める以上、既婚者は全員恋愛経験者であり、恋愛弱者とは言えないのではないか、というわけである。そもそも、日本の有配偶率は約6割なんだから3割しか恋愛強者がいないのはおかしい、と。

確かに、その指摘は一理ある。

それに反論するとすれば、「既婚者だからといって、全員が恋愛強者と言えるのか?」という点である。

恋愛を経験(付き合った経験)したことがある者が恋愛強者ではない。それは単に恋愛経験者に過ぎない。「野球をしたことがある人は全員プロ野球選手」というようなもので、論理が破綻しているといえよう。

写真:イメージマート

既婚者も恋愛強者は3割

ちなみに「恋愛強者3割の法則」を単に上記の出生動向基本調査の「恋人がいる率」だけで断定しているわけではない。私自身、2015年より毎年20~50代の未既婚男女に対する継続的な調査を行い、恋愛強者率を算定している。

具体的には、「自分は恋愛上手であるか否か」「恋愛に対して能動的であるか否か」「異性に対して告白したことがあるか否か」「異性から告白されたことがあるか否か」「自分の容姿に自信があるか否か」「これまで付き合ったことのある人数」など恋愛行動に関する複数の項目での主観調査結果を5段階評価に分け、全項目平均で4以上の対象者を恋愛強者として分類している。それらの割合が結果として「恋人がいる率」とほぼ一緒ということである。

なお、既婚者もまた未婚者と同様に恋愛強者率は、年代ごとのバラつきはあるものの平均して約3割である。

夫婦に関しては、実際に夫婦1000組の夫婦調査も実施している。夫婦のそれぞれの分布は以下のとおりである。

夫: 恋愛強者31%、中間層35%、恋愛最弱者34%

妻: 恋愛強者32%、中間層38%、恋愛最弱者30%

まさに「恋愛強者3割の法則」通り、未婚男女同様、強・中・弱の割合は3・4・3にきれいに分かれている。

恋愛強者はあくまで恋愛領域の強者であり、結婚とは相関はあっても完全一致しない。恋愛弱者であっても結婚はしている。現在の配偶者が最初の恋愛相手という夫婦も多い。

写真:アフロ

夫婦の恋愛力別組み合わせ

そうなると、実際に結婚している夫婦は、この恋愛の強者・弱者軸で見た時にどのようなマッチング形態になっているか、気になるところだ。

強者は強者同士でマッチングされると思いがちだが、実際はそうではなかった。

それぞれのマッチングを細かく見たのが以下のグラフである。

(C)ソロ経済・文化研究所 荒川和久
(C)ソロ経済・文化研究所 荒川和久

意外にも、恋愛強者同士の夫婦は全体の15%しかいない。恋愛強者3割のうち恋愛強者同士で夫婦となるのはその半分しかいないのだ。

恋愛強者夫は9%が中間者妻と、7%が最弱者妻と結婚する。同様に、恋愛強者妻も10%が中間者夫と、7%が最弱者夫と結婚する。夫婦ともに強者×最弱者のペアが7%もいることになる。

恋愛力だけで結婚のマッチングが成立するわけではないことがよくわかる。

恋愛力下剋上婚は? 

一方、それぞれの3つの恋愛力分布において、夫の方が強者で妻が弱者という、いわば恋愛力における下剋上的な「弱者女の恋愛上方婚」は全体の24%、逆の「弱者男の恋愛上方婚」は28%となっている。

経済力における上方婚(年収が夫の方が高い)は2017年就業構造基本調査によれば、30代夫婦で夫の個人年収が400~500万の場合、7~8割が夫>妻の年収の夫婦である。それと比べれば、恋愛力ではきわめて男女平等のマッチングとなっている。「破れ鍋に綴じ蓋」ではないが、互いの長所と短所を補完し合う形で夫婦となっている例も少なくないのだろう。

とはいえ、実は、強者同士・中間者同士・最弱者同士という同レベル同士がもっとも多く、全体の半数近い48%を占めている。

実際の婚姻においても、互いの年齢も年収も学歴も同じレベル同士の同類婚が増えている。無理な高望みはしない方が結婚できるのかもしれない。

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独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター

広告会社において、数多くの企業のマーケティング戦略立案やクリエイティブ実務を担当した後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者としてメディアに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』『結婚滅亡』『ソロエコノミーの襲来』『超ソロ社会』『結婚しない男たち』『「一人で生きる」が当たり前になる社会』などがある。

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