Yahoo!ニュース

フランスと日本の出生率の差~日本の20代が結婚できない問題

荒川和久独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター
(写真:イメージマート)

期待できない政府の少子化対策

本日31日、政府の少子化対策のたたき台が発表される予定である。

しかし、今まで漏れ伝わってきている内容を総合するに、期待はできない。基本的には「子育て支援の拡充」ばかりであり、新たな出生を促進するような本来の少子化対策にはなりえないだろう。少子化対策案というより、次の選挙対策でしかない。

もちろん子育て支援そのものは大いに賛成で否定はしない。しかし、それをどれだけ拡充しても抜本的な出生増には直結しない。

何度もいうが、家族関係政府支出GDP比をどれだけ増やしてもそれは出生増にはならない。机上の空論的な算数で、子育て予算いくら増で出生率いくらアップなどという妄言は勘弁してもらいたい。

それが本当なら、すでに日本の出生率はずいぶんとあがっていないとおかしい。家族関係政府支出GDP比は、1990年の0.3%から2019年は1.7%まで5倍以上に増額しているにもかかわらず同出生数は30%も減少している。

フランスと日本の違い

「フランスを見習え」とよく言われるが、そもそもフランスの出生率1.83と日本の1.34(ともに2020年実績)の0.5の差はどこにあるのかについてあまり知っている人も少ない。年代別の合計特殊出生率の累積値で比較すればそれがよくわかる。同時に、日本同様低出生率にあえぐ国との共通点も見いだせる。

フランス以外、日本より出生率の低い韓国、台湾とで、年代別の累積出生率を比較してみよう。

フランスと比較すれば他国はすべてどの年代も低いのであるが、30代の日本に関してはそれほどの差はない。しかし、圧倒的に差があるのが20代の出生率である。

フランスとの差は日本で0.3、韓国で0.5もある。たらればの話をしても無意味だが、もし日本の20代の出生率がフランスと同等なら、日本の出生率は1.64程度になる。これは、皆婚時代であった1988年の出生率とほぼ一緒である。

ちなみに、出生率1.6は社人研が推計する「高位推計」の指標であり、言い方をかえれば「どんなに上昇してもここまでは上昇しない」という意味であることを理解しておいてほしい。

日本の出生率は、2.0を超えることは不可能で、1.8はおろか、1.6すら困難なのである。「できもしないことをさもできるかのように」数字を提示してくれる輩には注意されたい。

フランスを見習うのであれば、それは政府支出の予算ではなく、大きく差の開いた20代での出生率をあげることに注力した方が妥当といえる。30代をこれからあげようとしても、すでに日本も高い水準であり、最大0.1程度の改善しか見込めないからである。そもそも、30代の出生率は20代での第一子出生率をあげれば自然と増加する。

フランスと日本との出生率の違いとは、この第一子出産の年齢が20代か、30代かという部分が大きいのである。

出生減は婚姻減

20代での出生率の差を生んでいるのは、日本を含む東アジアでの婚姻の減少につきる。

日本に限らず、東アジア圏においては、中国も韓国も台湾もすべて同じだが、出生数の減少はすべて婚姻数の減少で説明がつく。子育て支援云々以前に、結婚できない状況が出生減の要因なのである。つまりは、20代の出生が少ないのは、20代の結婚が少ないからだというわけだ。

某政治家が、「日本の少子化は女性の晩婚化のせいだ」などと言ったそうだが、晩婚化などは起きていない。後ろにズレる晩婚化ではなく、20代のうちに結婚しなかった分がそっくりそのまま非婚として残っただけである。

それについては以前こちらの記事で書いたが、エビデンスを出しても「そんなことはない」という者がいるので、別のグラフを提示する。

人口動態調査に基づき、2000年と2020年の女性の年代別初婚数と出生数とを比較したものである。

以下のグラフを見てわかる通り、30代の婚姻数は20年前とほぼ変わっていない。同時に、30代の出生数もほぼ同じである。対して、20代では、婚姻数は約59%減の28.3万組減少、出生数はそれを上回る34.8万人の減少である。全年齢の減少分が婚姻数で約30万組 出生数で約35万人であることから、婚姻も出生も減少させているのはほぼ20代の数字だけなのである。

つまり、今の日本で出生数があがらないのは、20代のうちに結婚して出産する数の減少であると断言してもいいくらいだ。

いつまで「見なかったことにする」つもり?

20代の女性の結婚意欲が低いわけではない。むしろ、20代同士で比べれば、男性より女性の方が結婚意欲は高い。

「結婚したいと気持ちが高ぶった時に相手がいない」現代の結婚のマッチング不全

それでも、20代の婚姻数だけがこれほど減少しているのはなぜか?という本質の部分をいつまでも見ないことにしていいのだろうか。

はっきり言ってしまえば、20代の未婚女性が結婚したいと思っても、相手となりえる同年代の未婚男性の経済力が十分ではないからだ。20代後半でも年収300万にさえ到達しない未婚男性が半分もいるのである。

20代後半で年収300万円にも満たない若者が半分もいる経済環境では結婚できない

甲斐性のない男など女性の方から願い下げという部分もあるだろうし、男性の側からも「こんな収入では結婚できない」と思う部分もあるだろう。

男性の不本意未婚4割のうち、半分は「経済的理由で結婚できない」と言っている。この20代での収入(特に可処分所得)の底上げが実現されなければ、結婚は減り続けるし、同時にそれは出生も減ることになる

もちろん、結婚は経済力だけで決まるものではない。しかし、一方で、経済力を度外視した結婚は破綻することが目に見えている。妻からの離婚申し立て理由の一位は、もはや「性格の不一致」などではなく「経済問題」である。

結婚意欲があっても、見合う経済力のある男性が20代のうちには見つからない。気が付いたら自分の年齢も35歳を超えている。それでもまだ結婚に踏み切れる場合はまだいいが、「もうこの年齢になったら結婚も出産もいいか」とあきらめてしまう女性も少なくない。

そうした遠因は、20代の若いうちに結婚も出産もできないという現状にあるといえるだろう。本当に支援が必要なのは誰なんだろう?

写真:イメージマート

関連記事

給料は増えない、税や社会保障費はあがる、おまけにインフレまでやってくる地獄

女性の管理職の未婚率が男性と比較して圧倒的に高いという事実

「金がないからイライラ?」現代夫婦の離婚事情がハードボイルド化

-

※記事内グラフの商用無断転載は固くお断りします。

※記事の引用は歓迎しますが、著者名と出典記載(当記事URLなど)をお願いします。

独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター

広告会社において、数多くの企業のマーケティング戦略立案やクリエイティブ実務を担当した後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者としてメディアに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』『結婚滅亡』『ソロエコノミーの襲来』『超ソロ社会』『結婚しない男たち』『「一人で生きる」が当たり前になる社会』などがある。

荒川和久の最近の記事