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「結婚したいと気持ちが高ぶった時に相手がいない」現代の結婚のマッチング不全

荒川和久独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター
(写真:イメージマート)

Xの字の法則

前回の記事で、女性だけではなく、男性にも結婚の限界年齢があるという話をした。

100年前も若者の未婚「男余り」人口は現代と同じくらい多かったのに皆婚だったワケ

特に、結婚したいという願望のある男性はなるべく早めに相手を見つけた方がいいのだが、それは決して「男余り」だからというわけではない。むしろ、若い時の結婚願望のある者だけに限定すれば、「女余り」になっている。

20代の婚活女子であれば、婚活の現場に「同じ年代の若い男がいない」と感じた人は多いと思うが、それは錯覚ではなく、実際に少ないのだ。なぜなら、年代別で結婚願望がある割合は、男女と乖離があるからである。

結婚願望は、男女年代別で「Xの字」傾向になる。

20代の頃は女性の結婚前向き度が高い割に、男性は低い。その差は15ポイントもある。これは20代で結婚したい女性が約34%も多いということになる。30代でもその差は7ポイントで、約2割多くなっている。

(C)ソロ経済・文化研究所 荒川和久
(C)ソロ経済・文化研究所 荒川和久

40代でやっと男女逆転して、今度は男の方の結婚願望が女を上回る。

これは、女性の方が40歳を過ぎると急激に結婚願望を喪失するからである。この中には、元から結婚意欲のない人も含まれるが、若い時に漠然と「結婚したい」と思っていても、40歳を過ぎて「結婚する必要性がなくなった」という人も多いだろう。

20代の男性が結婚に後ろ向きなのは、「自由でいたい」というポジティブな理由というより、そもそも「結婚にふんぎれるほど経済的余裕がない」という人も多いのではないだろうか。実際、20代未婚男性の約半分は年収300万円に到達していない。

婚活の現場は「女余り」

このように、男女とも加齢とともに結婚意欲を失うのだが、その変化は男女で微妙に乖離があるのだが、かつてのような結婚の社会的お膳立てシステムというのは、こうした男女の年代による「結婚意欲の違い」を補正していたものである。年齢差があっても、結婚意欲の高い者同士をマッチングさせる力があったのだ。

だからこそ、皆婚時代は夫年上婚が大部分を占めていたのであり、若い未婚男性は大正時代でも余っていたわけである。

昨今、結婚のお膳立てが崩壊し、初婚夫婦は同年齢婚が増えたといわれる。実は、実数として同年齢婚が増えたのではなく、戦後~ベビーブーム期~現代にいたるまで、数としては変化はない。夫年上婚の実数が大幅に減少したために、比率として同年齢婚が増えたにすぎない。

20代の未婚男女の人口を比べれば、約69万人もの「男余り」であるのに対して、いざ結婚願望のある20代の未婚男女同士で比べると、逆に約42万人の「女余り」になってしまうのである。

これが、お膳立てなき今の婚姻のマッチング不全を起こしている元である。「婚活現場におじさんしかいない」と感じるのはそういうことによる。

写真:イメージマート

一方、男性の側からしても、40歳を過ぎて結婚意欲満々になったところで、年の差のある20代の女性と結婚できる確率はほぼない。同年代に目を向けても、結婚したい女性の数は圧倒的に少ない。

男女ともに、年齢の違いしあれ「結婚したいと思った時に相手はいない」という状況に陥るわけで、20-34歳で不本意未婚(結婚したいのにできない)が4割も結果的に生まれてしまうのは当然なのかもれない。

解決方法はあるのか?

さて、それではどうすればいいのだろうか。

20代のうちに結婚したいと思っている女性は、「結婚に前向き」な男性だけを見ているとマッチングしない。とはいえ、「結婚に後ろ向き」な男性にアプローチしたところでそれも効果があるとは思えない。しかし、前向きではないが後ろ向きでもない「どちらともいえない」優柔不断層が15%いる。ここを足せば、丁度不足分の15%は穴埋めできる計算になる。

結婚において女性が主導権を握った方がいいというのは間違いではなく、受身で男性側からのプロポーズを待っていると時期を逸することが多い。

対して、男性はどうすればいいか、というと、マーケティングに見れば20代のうちは完全に売り手市場にあるわけで、どうしても「結婚したい」と考えているなら20代のうちに相手を見つけてしまった方が得策ではある。

しかし、現実にはここに3割の恋愛強者男が大きな壁として立ちはだかる。

写真:アフロ

恋愛強者は強者であるがゆえに、一人の相手としか付き合わないわけではない。マッチングアプリなどはまさに強者男性の格好の狩場となっている。

彼らが複数の女性と同時多発的恋愛を楽しんでいるがゆえに、数字上「女余り」となっているにも関わらず、「気になった女性には全員彼氏がいる」という状況になるのである。

そう考えると、婚活の最期の砦として結婚相談所という選択をしている婚活男女がいるが、20代のうちに結婚相談所で相手を見つけるという方法が男女にとっても良い結果を生むかもしれない。

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独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター

広告会社において、数多くの企業のマーケティング戦略立案やクリエイティブ実務を担当した後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者としてメディアに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』『結婚滅亡』『ソロエコノミーの襲来』『超ソロ社会』『結婚しない男たち』『「一人で生きる」が当たり前になる社会』などがある。

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