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「一人で牛丼屋でメシを食うのはおじさんだらけ」と思いきや、案外女性も行っていることが判明

荒川和久独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター
(写真:アフロ)

ソロ牛丼屋率を調べてみた件

独身人口の増加だけではなく、「消費の個人化」が進むことによって、今後ますます活性化するであろうソロ活市場。今までも以下のようなジャンルのソロ活市場の成長について書いてきた。

ソロ旅市場→顕在化したソロ旅需要~「一人で旅行して何が楽しいの?」に対するソロ旅の利点

ソロ温泉市場→「ソロ温泉」に行ったことがある現役世代人口は推計1620万人~今後ますます拡大の予感

ソロ外食市場全般→「孤独のグルメ」が支えてきた外食産業の「一人ずつだけれど大きなチカラ」

今回は、ソロ外食市場のひとつを構成する「ソロ牛丼屋」にフォーカスしてみたい。

写真:アフロ

牛丼屋に行ったことのない男

そもそも、牛丼屋には行ったことがあるだろうか?

男性陣はほぼ「行ったことがある」と答えると思うかもしれないが、それでも完全100%ではない。生まれてから一度も牛丼屋に行ったことがないという男性も存在する。

「一人で牛丼屋に行ったことがある」というソロ牛丼屋体験率となるとさらに下がる。いつも一人で牛丼屋を利用する層にしてみれば「え?牛丼屋なんて一人で行く以外に誰と行くの?周りにいる客もほとんど一人だけど?」と疑問に思うかもしれないが、誘われて誰かと一緒に行った経験はあっても、一人では入ったことがないという男性もいるのである。

女性になればなおさら「入りにくい」という理由で、一人でも誰かと一緒でも行ったことがない割合は多い。

写真:イメージマート

男性の利用率は高いものの…

ソロ牛丼屋体験率を男女年代別及び配偶関係別に調査した結果が以下である。いつもは未婚と既婚のふたつだけだが、今回は離婚者も含めている。

(C)ソロ経済・文化研究所 荒川和久
(C)ソロ経済・文化研究所 荒川和久

もっとも「ソロ牛丼屋」率が高いのは、40代未婚男性で87%。次に高いのが、50代離婚男性の86%、続いて30-40代の既婚男性と続く。いずれにしても、当然だが中高年の男性が上位を独占である。

興味深いのは、未婚も既婚も離婚の男性も20代の経験率がもっとも低い点である。離婚の20代男性に至っては、女性と同様、3割程度しか「ソロ牛丼屋」経験がない。

しかし、その一方で、離婚男性は年代があがるごとに急激に「一人で牛丼屋に行く」ようになるのはなぜだろうか。

概して、独身者は既婚者と比べて不幸度が高いのだが、未婚よりも離婚の方が不幸度は高い。年代的にも40-50代がもっとも不幸度が高い。別に不幸な人間が好んで行きたがるところが牛丼屋という因果はない。

が、もしそうだとしても、不幸感を抱える男たちが、一杯の牛丼をかきこむことで束の間の幸せを得ることができるのだとしたら、それはそれで牛丼屋の社会的意義はあると言える。

実際のところ、男がひとりで食事をするのにもっとも気軽で、財布にもやさしいのが牛丼屋というところなのだろう。

写真:イメージマート

女性も意外に利用経験あり

さて、女性の方であるが、こちらは既婚の40-50代を除けば、年代や配偶関係に関係なく、大体3割程度の経験率である。

特に、男性が40-50代層が多いのに対し、女性はむしろ20-30代若年層の方が多いのが特徴である。

中でも30代未婚女性の利用率がもっとも高く44%である。男性と比較すると少ないように思えるが、ソロ牛丼経験率44%は高い方である。30代未婚女性のほぼ半分は経験済みということなのである。

遅くまで仕事した女性が、疲れて自炊する気も失せて、帰り道に牛丼屋に入り、山盛りの紅しょうがをのせてかっくらうのであろうか。別途記事化する予定だが、女性は「ソロ立ち食いソバ屋」率より「ソロ牛丼屋」率の方が高いのだ。

繰り返すが、これはあくまで「一人で牛丼屋に行った」割合なので、既婚女性の家族と一緒の利用やテイクアウト利用率はもっと高いだろう。

ソロ利用ではないが、意外に、「デートで牛丼屋にはじめて入った」という女性の声もある。しかも、自ら「望んで」である。

行きたいと思っていたものの、一人では入りにくいし、女性の友達を誘うのも気が引ける。そんな時に、付き合っている男性に対して「牛丼屋に行きたい」と頼む女性もいるとか。機会があれば「行きたい」という女性も少なくはない

とはいえ、女性の場合は、行ったとか、ソロ牛丼を経験したといってもたった1回しかない場合もあるだろう。

しかし、男性の場合は利用率も高い上にリピート率も高いはずだ。結果、いつ見ても「一人のおじさん客だらけ」に見えてしまうのかもしれない。

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独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター

広告会社において、数多くの企業のマーケティング戦略立案やクリエイティブ実務を担当した後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者としてメディアに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』『結婚滅亡』『ソロエコノミーの襲来』『超ソロ社会』『結婚しない男たち』『「一人で生きる」が当たり前になる社会』などがある。

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