伊藤英明が語る演技の醍醐味「経験に勝るものはない」
撮影現場にはコロナ禍ならではの苦心も
今作に限らず、最近の撮影現場にはコロナ禍ならではの苦心もあるようだ。 「やはりテストのときマスクやフェイスガードをしながらですから声がどれくらい出ているのかもわからないし、ひと手間多くかかりますね。休憩時間やお弁当を食べる時間は唯一、素になってコミュニケーションがとれる時間だったのですが、今はそれも出来なくなっている状態ですね。演技って気を合わせるところがあるじゃないですか。マスクをしていると気が合わせられないというか、口元が隠れているのでスタッフさんの顔も忘れがちになったりもします。そういった意味では従来とは環境がまったく違いますね」 それは映画の公開や宣伝にも影響しているという。 「映画館もソーシャルディスタンスなどを考慮しなくてはいけませんから、観客動員も厳しいですよね。もし公開日が1年前だったらお客さんをもっと入れられていたかもしれない。だから撮り始めていたけれど途中でやめてしまった作品とか、もう撮り終わってはいるけど公開日が未定とか、そういう作品もたくさんあると思うんです」 逆境にある興行エンターテインメントの世界だが、伊藤の表情には強い気持ちがにじみ出ている。 「僕らは作品が公開されてお客さんに観てもらえる時が一番報われる瞬間なんです。撮っている間も観てくださるお客さんたちの顔を想像しながらやっていますから」 (写真と文・志和浩司) ■伊藤英明(いとう・ひであき) 1975年岐阜県岐阜市出身。97年、ドラマ「デッサン」(日本テレビ系)で俳優デビュー。2000年「YASHA-夜叉-」(テレビ朝日系)で連続ドラマ初主演、映画「Blister」で映画初主演を飾る。また、第29回ベストドレッサー賞も受賞した。04年、ヒット作となった映画「海猿 ウミザル」公開。翌05年には「海猿 EVOLUTION」として連続ドラマ化された。その後06年には映画「LIMIT OF LOVE 海猿」へとシリーズ化。2012年、サイコパスの教師役で主演した映画「悪の教典」が話題に。14年、映画「WOOD JOB!~神去なあなあ日常~」で第69回毎日映画コンクール最優秀助演男優賞、第38回日本アカデミー賞優秀助演男優賞に輝いた。21年映画「燃えよ剣」(10月15日公開・東宝)で新選組・芹沢鴨を好演。22年にはハリウッド共同制作オリジナルドラマ「TOKYO VICE」が控えている。