伊藤英明が語る演技の醍醐味「経験に勝るものはない」
伊藤英明が高崎映画祭新人賞を受賞したのが2000年。役者として20年を超えるキャリアを重ねてきたことになる。人命救助を使命とするヒーローから残忍でサイコパスな殺人鬼までさまざまな役を演じてきたが、役者をしていて喜びを感じる瞬間は作品に携わるさまざまな人や要素が一つになって心が動く瞬間だと話す。その言葉には伊藤の芝居に取り組む姿勢がうかがえる。 【写真特集】「“このワンシーン観たい”作品に」伊藤英明
経験してきたことと台本の人物が共鳴し真実になる
「演じるにあたっては経験に勝るものはないと思うんです。今まで自分が経験してきたことと台本に描かれている人物が共鳴し合い、自分の中で真実になる。そして相手役とも一緒になってその場面の空気が出来上がる。そんな瞬間を感じられた時が役者として一番面白いし楽しいですね。そんな瞬間には監督はもとより照明部、録音部、衣装、メイク…作品に関わるみんなの気持ちが一緒になって作品づくりの醍醐味を感じます」 1975年 、岐阜県岐阜市出身で現在46歳。役者として円熟味を増しつつあるが、芸能のキャリアのスタートは1993年の「第6回ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」で準グランプリを受賞したことがきっかけでモデルやCMの仕事が中心だったという。 「最初の頃は俳優になりたいとか仕事の方向性についてこだわりはなかったんです。ただ、小さな頃から興味だけはありました。小学校の時に学校教育の一環として体育館で『敦煌』という映画を観る機会があったのですが、甲冑を着た西田敏行さんが馬に乗りながら適役を追いかけるシーンがすごく心に残って自分もやってみたいと思ったんです。その後もお小遣いで映画館に行ってトム・クルーズの『トップガン』を観たりしていましたから、役者という仕事に漠然とした憧れはあったのだと思います」 俳優デビュー後は映画にドラマに数多くの作品に恵まれた。 「どんな作品でも『このワンカットを観たいよね』『このシーンを観たいよね』っていうものになれば良いかなって、いつも思っています。たくさんの人に観てもらってヒットするのが一番良いのかもしれませんが、やっぱり100%完璧にやるのは難しいし、自分が良いと思った作品が必ずしもヒットするわけでもないですし。何か力が抜けてるように見えるけれどもそれが逆に良かったという場合もあるだろうし、時代性にも左右されたりしますね。なので最近は『このシーン観たいよね』『あのシーンが良かったよね』って、1つでも心に残る部分があればいいなと思いながらやっています」