園子温監督の映画人生 心筋梗塞からハリウッドデビューへ
「一回死んでよみがえってきました」とは映画監督・園子温(その・しおん)さんの言葉だ。2019年2月に自宅で倒れ救急搬送、心筋梗塞の診断を受け手術を受けて一命をとりとめた。退院後、出席したイベントで発したのが冒頭の言葉だった。無事“生還”した園さんは悲願だったハリウッドデビューをすることになる。何が園さんを支え続けているのか。映画への思い、ハリウッドへの思いを聞いた。
インパクトある作風のルーツにアメリカ映画
「15年以上前からアメリカ映画を撮りたくて何度もロサンゼルスへ行ってプロモ-ション活動を続けて、実現しそうな作品もいくつかあったんですけどうまくいかず、15年以上かかってしまいました」 なぜそこまで時間をかけてでもアメリカ映画を撮りたかったのか。 「小さいころからアメリカ映画ばかり観ていたんです。だいぶ昔の監督ですがジョン・フォードの作品は小学生のときからジョン・ウェイン主演の『駅馬車』はじめ全部観ています。他にもゲイリー・クーパーとかめちゃくちゃ古い俳優の作品から『イージー・ライダー』(デニス・ホッパー監督)のようなアメリカン・ニューシネマまで幅広く観ていたんですよ」 そのため映画といえばアメリカ映画、ハリウッドというイメージがあるという。 「僕にとってハリウッドそのものが映画で、ヨーロッパ映画は映画の一部なんですね。僕が中学のときスティーブン・スピルバーグ監督の『ジョーズ』がやってきて。『エクソシスト』(ウィリアム・フリードキン監督)とか話題になるのはアメリカ映画でしたからね」 園さんの作品は個性的でセリフ、アクションともに鮮烈なまでにメリハリがはっきりしている。そのルーツはアメリカ映画にあったようだ。 「小さな頃からアメリカ映画ばかり観ていたんで感情の出し方も非常にはっきりと出していくのが、DNAに刷り込まれちゃって。日本映画によくあるボソボソとしゃべったり、感情をあまり出さないっていうのは僕は受け付けられないんです」 作品の内容自体、ヴィジュアル面でも残酷な描写などインパクトあるものが多く、万人受けするというよりは観る人を選んでしまうようなものが多い。 「そのほうが世界中に広がりやすいんです。全員に向けて、みたいなことをやると味が薄くなってあまり伝わっていかない。嫌われてもいいと思って作った作品もありますが、そのほうが結果的には広く残っていくんですよ。やっぱり切り込み方ですよね。エッジが強いと逆に広がる、残る。そういうものだと思います」