なぜFC東京に帰ってきた長友佑都は背番号「50」を選んだのか
究極のポジティブ思考がなせる業と言っていい。森保ジャパン全体の戦いぶりが精彩を欠いた先の最終予選でも、批判の矛先は無所属のまま招集された長友にも向けられた。すでに「仙豆」と化しているのだろう。今後へ向けて長友は再び笑顔を浮かべた。 「みなさんが想像もできないような長友佑都を見せられるように頑張るだけです」 夜には味の素スタジアムへ足を運び、前半9分に喫した失点を取り返せないまま、覇気なく柏に敗れた仲間たちの姿を目の当たりにした。沈滞ムードのなかで始まった加入セレモニー。青赤のユニフォーム姿の長友が最後に「よっしゃあ!」と吠えた。 「僕は本気ですから。優勝しましょうよ、みんな!」 今シーズンで言えば、9位に甘んじるリーグ戦での逆転優勝は現実的ではない。天皇杯も初戦で敗退したが、来シーズンのACL出場権を得られる3位はまだ狙える。連覇がかかるYBCルヴァンカップでもベスト4進出を決めている。 その上で「来年はリーグ戦で優勝できるように」と目標を掲げた長友は、入団会見や囲み取材のなかでこんな言葉もつけ加えている。 「まずは気持ちと魂の入った、チームのために走って戦えるプレーを見せるのはもちろんですけど、プレーに言葉が乗ればさらに深いところにまで届く。モチベーターというか、精神的にもチームを支えるようなメンター的な存在になりたい。長友がいれば大丈夫だよね、とみんなに思わせながら、士気を高められる選手になりたい」 ライブ配信された入団会見からオンラインによる囲み取材、柏戦の観戦にセレモニーとおそらく一生忘れられない慌ただしさとともに35歳の誕生日を終えた。 「サッカーの世界ではベテランと言われる年齢ですけど、自分ではハタチぐらいだと思っています。そのくらいのエネルギーと野心を持って戦っていきます」 所属クラブで結果を残さなければ、もちろん代表への道も開けない。ヨーロッパの第一線でプレーした、11年もの歳月を経ての古巣への復帰を挑戦と位置づける鉄人は、内面を真っ赤なマグマのようにたぎらせながら全力で走り出そうとしている。 (文責・藤江直人/スポーツライター)