「ワニにヘリウム」笑えるだけじゃない研究の真意 イグノーベル受賞者に聞く
ヘリウムでワニの声が高くなったということはつまり、ワニがうなる時にも音の共鳴が起こっているということになります。鳥類以外の爬虫類(現在、鳥類は爬虫類の中に含まれるという考え方が主流です)が共鳴させた声で鳴いていることを示した研究は、世界で初とのことです。 また、この論文ではワニの鳴き声の研究から、恐竜の声を推測する材料になるとも述べられています。ワニと恐竜は兄弟のように近い親戚関係にあるとされていることと、鳥類が恐竜の直系子孫だと考えられていることから、ワニと鳥類の鳴き声に共通点があるのであれば、恐竜の鳴き声とも共通点があった可能性が高くなる、という考察です。 動物にヘリウムを吸わせて鳴かせる最初の研究は1966年にマガモを対象に行われていて、この手法には実は半世紀の歴史があります。これまでに確認されてきた鳥類に加えて、今回ワニ類の声でも共鳴が確認できたことで、滅んでしまった恐竜の研究がまた一歩進むかもしれません。 「ワニにヘリウム」とだけ聞くと、笑いとともに「なぜ」という疑問が浮かんできますが、実際には分かっていない動物の性質を明らかにしていく、地道でまじめな研究なのです。
「ゲップのような」ワニの鳴き声で解析に苦労
――この度は受賞おめでとうございます。ご自身の研究が、イグノーベル賞の「笑える」という選考基準に当てはめられることに抵抗はなかったでしょうか。 西村:素直に笑えますよね。受賞したメンバーで「おめでとう」「おもしろいじゃん」と言い合っています。本人たちは別に狙っているわけではなくて、いたってまじめにやっているんですが。 ――専門のサルの研究ではなく、ワニの研究でイグノーベル賞を受賞したことはどう受け止められていますか? 西村:サルでの研究を発表した時に「この研究はイグノーベルがとれるよ」とよく言われていました。でもやっぱり、さすがにワニには面白さで勝てんなぁ、と思います。なんと言っても恐竜の研究やで、と。