NASAが火星ヘリ「Ingenuity」最終飛行時に起きたアクシデントの調査を完了 史上初“地球外航空事故”調査
アメリカ航空宇宙局(NASA)のジェット推進研究所(JPL)は2024年12月11日付で、ミッションを終えた火星ヘリコプター「Ingenuity(インジェニュイティ)」の最後の飛行で起きたアクシデントの詳細な調査が完了したと発表しました。いわば“史上初の地球外航空事故”となったIngenuityのアクシデントは、どのようにして引き起こされたのでしょうか。 NASAが火星ヘリコプター「Ingenuity」のミッション終了を発表 約3年間で火星の空を72回飛行(2024年1月26日) Ingenuityは日本時間2021年2月19日朝に着陸したNASAの火星探査車「Perseverance(パーシビアランス)」の下部に搭載される形で、火星のジェゼロ・クレーターへと運ばれました。 火星の環境は地球とは異なり、地表の重力は地球の約3分の1、地表の気圧は地球の約1パーセントしかありません。大気が薄い火星でも動力飛行できることを実証するのがIngenuityの使命であり、当初は30日間で最大5回の飛行が計画されていました。機体は高さ49cm、重量1.8kgと小型・軽量で、幅1.2mのカーボンファイバー製ローター(二重反転式)と太陽電池を搭載。2021年4月19日に実施された初飛行で、Ingenuityは高度3m・30秒間のホバリングを含む39.1秒間の飛行に成功し、火星における航空機の制御された動力飛行が可能であることを初めて証明しました。
この1分に満たない初飛行はIngenuityの旅の始まりに過ぎませんでした。3日後の2021年4月22日に実施された2回目の飛行で初めて水平方向の移動に成功したIngenuityは、「ライト兄弟飛行場(Wright Brothers Field)」と名付けられた離着陸地点を拠点に4回の飛行を重ねた後、5回目の飛行(2021年5月7日)では129m離れた場所に設定された新たな離発着地点へ移動することに成功。ミッションは技術実証から運用実証へと進み、IngenuityはPerseveranceの探査活動に役立てるための画像撮影を実際に行うようになりました。 NASAのジェット推進研究所(JPL)によると、Ingenuityは2024年1月18日までに合計72回の飛行を達成しました。総飛行時間は約128.8分、総飛行距離は約17kmで、最高速度は毎秒10m(毎時36km)、最高高度は24mを記録。Ingenuityはその間に危険な地形でも自律的に着陸場所を選べるようにするためのソフトウェアアップデートを受けた他に、バッテリーの電力が不足して夜の間ヒーターをオンにし続けられないためにフライトコンピューターが定期的にフリーズしリセットしてしまうような厳しい冬を乗り越え、3回の緊急着陸も経験しました。