「新しい認知症観」打ち出し、社会との共生目指す 患者増加予測で政府が初の基本計画
高齢化社会の進行とともに認知症は確実に増えると予測されている。認知症の患者と軽度認知障害(MCI)の人を合わせると既に1000万人を超え、2040年には推計約1200万人に達するという。このような深刻な事態を受けて政府の「認知症施策推進本部(本部長・石破茂首相)」は「認知症施策推進基本計画」を策定し、12月3日の閣議で決定した。
基本計画は「認知症は誰もがなり得る」と明記し、「認知症になったら何もできなくなるのではなく、希望を持って自分らしく暮らし続けることができる」という「新しい認知症観」を打ち出している。
認知症の中でも7割近くを占めるアルツハイマー病の早期の診断、治療法の研究が近年進展している。基本計画は、進行性の病気であるアルツハイマー病をなるべく早く見つけ、孤立させることなく、本人を取り巻く家族、地域、自治体などが共に支え合う共生社会の実現を目指している。 基本計画を策定するために11月29日開かれた政府の認知症施策推進本部会合で、石破首相は「(認知症の人が)住み慣れた地域で、周囲の人とつながりながら希望を持って暮らし続けられる社会を実現していくことが必要だ」などと述べた。
既に高齢者の3.6人に1人が認知症か予備群
認知症は、脳の神経細胞の働きが悪くなって認知機能が低下し、日常生活にも支障をきたす状態。発症者の7割近くを占めるアルツハイマー病は脳内にアミロイドベータや「リン酸化タウ217(タウ)」というタンパク質がたまり、神経細胞が壊れて認知機能が次第に低下する進行性の病気で、物忘れや判断力の衰えなどの症状が出る。このほか、脳血管性やレビー小体型の認知症がある。
基本計画は今年1月1日に施行され、認知症施策を総合的かつ計画的に推進することを目的とした「認知症基本法」に基づいて策定された。この基本法は「認知症の人が尊厳を保持しつつ希望を持って暮らすことができる」社会の実現を基本理念にしていた。
基本計画に記載された厚生労働省の統計によると、2022年の認知症、「認知症予備群」と言えるMCIの高齢者はそれぞれ約443万人、約559万人で、約3.6人に1人は認知症かその予備群だ。そして40年にはこの数字はそれぞれ約584万人、約613万人になると推計されている。