加齢黄斑変性 なぜ発症? 症状は視力が下がる、中心部が暗くなる、ゆがんで見える 失明の恐れも
網膜の中心部に異常が生じ、視力の低下などの視覚障害が起こる加齢黄斑変性は、日本人の失明原因の第4位になっています。早期に治療を開始すれば、視力の低下を抑えることができます。(松田祐哉) 【図解】加齢黄斑変性 二つのタイプとは?
視力は0.1以下に
目の構造はカメラに似ていて、角膜や水晶体がレンズに当たり、網膜は目の中に入った光が像を結ぶフィルムの役割を果たしています。その網膜の真ん中にある直径1・5ミリの円い部分が「黄斑部」で、光を電気信号に変える視細胞がたくさん集まっています。 加齢黄斑変性はこの黄斑部に出血や組織の萎縮(いしゅく)などが起きる病気です。視力低下のほか、視野の中心部が暗くなったり、ゆがんで見えたりといった症状が出ます。黄斑部が機能しなくなると視力は0・1以下になり、進行すると失明の恐れもあります。50歳代から発症する人が現れ、高齢になるほど増えます。男性に多いとされています。
加齢黄斑変性は、発症までの仕組みによって二つのタイプに分けられます。 一つは「新生血管型」と呼ばれるものです。網膜は視細胞などとそれを支える土台となる網膜色素上皮細胞からできています。網膜の下には脈絡膜(みゃくらくまく)という膜があり、ここには網膜に栄養を送る血管が通っています。網膜で炎症が起きるなどして脈絡膜に細い血管が新しくでき、伸びてきます。 この影響で黄斑部が盛り上がり、物がゆがんで見えます。また、新しくできた細い血管は破れやすく、血液の成分がしみ出して視細胞にダメージを与えます。日本では加齢黄斑変性の患者の9割をこのタイプが占めます。 もう一つが「萎縮型」で、土台になる網膜色素上皮細胞が萎縮することで、視細胞が失われていきます。 いずれも原因は加齢のほか喫煙や肥満などの環境的要因と、遺伝的要因もあると考えられています。
新生血管型は適切に治療を受ければ、完全に失明することを防げます。新しく血管ができるのを防いだり、消失させたりする薬を目に注射します。目に麻酔をした上で、細い針で硝子体内に治療薬を投与します。現在、6種類の薬が保険適用されています。視力の低下を防ぐには数か月に1回注射を続ける必要があり、治療は長期にわたります。 注射が使えない人には、光に反応する薬を点滴し、新たにできた血管にレーザーを当てて閉じる治療法を選びます。 萎縮型には現在、有効な治療法はありません。iPS細胞(人工多能性幹細胞)から網膜色素上皮細胞をつくり、移植する治療法が期待されています。
予防にはまず禁煙
病気の予防にはまずは禁煙です。帽子やサングラスを着用して、目を紫外線から守ることも重要です。適度な運動や栄養バランスの取れた食事など生活習慣の見直しも有効です。早期発見のため、40歳を過ぎたら一度、眼底検査を受けてください。 大阪公立大視覚病態学講師の山本学さんは「新生血管型の治療で用いる薬は眼球に注射するため、負担も大きいですが、続けることで病状を安定させることができます。主治医と相談して治療計画を立ててください」と話しています。