「自分のお尻から内視鏡」「人肉食のカロリー研究」イグノーベル賞、独創的な研究
今年も日本人受賞で盛り上がっている「ノーベル賞」ですが、それに先立って発表された「イグノーベル賞」でも日本人研究者が注目を集めました。日本人の受賞はなんと12年連続。長野県の昭和伊南総合病院の消化器病センター長の堀内朗(ほりうち・あきら)氏が、自らの身体を使って研究した「座った姿勢のまま行う大腸の内視鏡検査」に「医療教育賞」が与えられました。人々を笑わせ、考えさせる研究に贈られるイグノーベル賞には、今年もユーモアと独創性あふれるテーマが並びました。 【図】他にもいる?オスとメスで生殖器が逆の虫 イグノーベル賞の吉澤氏に聞く
内視鏡検査を受ける人を増やしたい
堀内氏の研究は、正確には「座位での大腸鏡(大腸検査用の内視鏡)検査-セルフ大腸鏡検査から学んだ教訓」。右手で内視鏡を持ち、自分のお尻から大腸に入れて、モニターを見ながら左手でコントローラーを操作する、“セルフ大腸鏡検査”の見た目の面白さが受賞の決め手になったようです。9月14日に米ハーバード大で行われた授賞式のスピーチで堀内氏が実演を見せようとしたところで、ミス・スウィーティー・プー(スピーチが制限時間の1分を過ぎると「もうやめて!飽きちゃった!」と止めにくる8歳の女の子)に制止されてしまいました。 イグノーベル賞だけに、絵面の面白さだけに目が行きがちですが、研究の目的は至って真面目、そして考えさせられるものです。 多くの人が、胃や腸などの体の中で起きる腫瘍や潰瘍などの病気で苦しんだり亡くなったりしています。そして、内視鏡検査は、その確実な発見のためにとても重要な技術です。しかし、例えば胃を調べる「胃カメラ」は通常、のどや鼻から内視鏡を入れますが、大腸の内視鏡検査では、肛門から入れます。検査を受ける人にとっては、痛かったり、恥ずかしかったりして、敬遠されがちです。そうして内視鏡検査を敬遠した結果、病気が進んで手遅れになることも少なくありません。したがって、少しでも負担の少ない内視鏡検査技術を開発することは、たくさんの人を救うことにつながります。 この負担の少ない新しい内視鏡技術を、自らの身体を実験台にして見つけた、というのが本当の研究業績なのです。 授賞式に参加した日本科学未来館の元科学コミュニケーターだった古澤輝由氏に対し、堀内氏は、「より多くの人が内視鏡検査を受けて、ポリープの段階で対処すれば、大腸がんで亡くなる人はずっと減るはず」だと語ったといいます。苦痛が伴う検査を少しでも受けやすいものにするために、自分で試してみたという発想が今回の受賞につながりました。