現役世代が残らない…「復興住宅」2つの誤算 震災12年、石巻市で進む空き家化と高齢化 #知り続ける
「新型コロナにより集会所を閉じてしまった復興住宅が多かった。それが3年も続くと、それまで開かれていた交流のためのイベントもなくなり、外に出たり近隣の人と話したりする機会が大幅に減ってしまいました」 コロナ禍の前はとても元気だった高齢者が、外部との交流が失われたために一気に弱ってしまった例は珍しくないという。
住民の自助努力だけでなく、サポートする体制づくりが必要
だが、地域コミュニティーの構築を住民のみに求めるのも難しい。住民からは「震災以来、ずっと『助け合い』と言って頑張ってきた。これ以上何を頑張ればいいのか」という当惑の声もある。 田上さんは、住民の努力だけではどうにもならない部分を見極めて、周囲が支援する体制をつくっていくべきだと語る。 「知らない人同士が入居した復興住宅でも、何人かのつながりが生まれれば、その中で『隣の人を数日見かけない』というような話が出てきます。そうした日々の情報を第三者が把握することが重要です。また、人の輪をつくるには、きっかけが必要です。そのきっかけは住民だけで生まれるものもあれば、第三者のサポートが必要なものもあります。そういうところで私たち支援団体も力になれると思うのです」 津波で家を失った人たちのために計画された復興住宅。住民たちの意向を尊重し、設置を急いだのは当時としてはやむを得ない判断だったかもしれない。ただ、高齢化に伴い、空き家や住民の孤立といった問題が発生する結果に陥ってしまった。実は、こうした問題は被災地に限らず全国の地方で起こっている課題でもある。今後、大規模災害が起きたとき、復興住宅はどうあるべきか。石巻の悩みは今後の教訓にもなっている。
--------- 小川匡則(おがわ・まさのり) ジャーナリスト。1984年、東京都生まれ。講談社「週刊現代」記者。北海道大学農学部卒、同大学院農学院修了。政治、経済、社会問題などを中心に取材している