現役世代が残らない…「復興住宅」2つの誤算 震災12年、石巻市で進む空き家化と高齢化 #知り続ける
高い高齢化率が大きな問題に
石巻市の人口は約13万7千人(2023年1月時点)、そのうち65歳以上が占める割合の「高齢化率」は約34%だ。だが、市の復興住宅の高齢化率は49.2%(2022年宮城県の調査)とさらに高く、ほぼ半数に近い。 高齢化率が高い理由は単純だ。収入の多い現役世代にとって復興住宅の賃料は高い。であれば、自ら家を建てる「自立再建」を選び、退去する人が増える。結果、復興住宅に残る高齢者の比率は上がっていく。 一般社団法人「石巻じちれん」は蛇田地区の復興住宅の一角に事務所を構え、日々住民と接している。主な活動は、復興住宅で暮らす人々の孤独・孤立化を防ぐことだ。 じちれん事務局長の田上琢磨さん(35)は高齢化に伴う問題を数多く目にしてきた。
「元気だった人でも、突如足腰が弱って買い物等が困難になり、福祉や移送サービスを利用するようになった方もいます。また、運動する機会が減少したことが認知機能の低下につながり、ひとり歩きで道に迷ったり、家から出なくなりで交流が途絶えることもあります。近隣の目に触れなくなった方が孤独死に至り、その中には死後1週間発見されなかったという例もありました」 また、一人暮らしの高齢者が亡くなった後、遺族が相続放棄し、部屋の荷物や車が数年放置される例も複数あった。法的には、一人の相続人が放棄しても相続人全員に確認が取れない限り、簡単に荷物を片付けるわけにもいかないためだ。 田上さんはこうした問題に対処するためにも、復興住宅内のコミュニティーが機能することが重要だと考える。 「復興住宅は抽選で入居者が決まるので、ゼロからコミュニティーをつくらないといけないですが、入居者同士が顔見知りになっていない復興住宅も多くあります」
難航する住民同士の交流促進
石巻市が2021年に復興住宅の住民を対象として行った調査によると、約2割が「相談相手がいない」と答えている。特に「60代男性」では36.3%と高い。 その状態から住民同士でコミュニティーをつくるのは容易ではない。そこに追い打ちをかけたのがコロナ禍だ。