「生まれてくる子は、絶対にかわいい!」 わが子の障害を知った夫婦が、次の一歩を踏み出すまで
「彼の子どもが欲しいと思ったし、絶対にかわいいと思える自信があった」生まれてくる子どもに障害があることを知った上で、前向きに次の一歩を踏みだした夫婦がいる。2021年の東京パラリンピックで、シッティングバレー日本代表選手として出場した経験を持つ嵯峨根(さがね)望さんと、妻のももこさんだ。2人は長女の出生に際して、障害の遺伝という現実に直面した。悩みや葛藤を抱えた彼らは、時に感情を表に出し、時に寄り添いながら、未来に向かって進み始めた。(取材・文・写真:NHK「超多様性トークショー!なれそめ」取材班/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
それぞれ違う思いを抱いた“なれそめ”から、結婚へ
1987年生まれの嵯峨根望さんは、先天性の四肢障害で、両足は義足。また両手の指にも障害がある。学生時代にシッティングバレーを始め、大学を卒業して大阪府和泉市職員になった望さんは、2014年、小学校の事務員として働いていた、3歳年下のももこさんと出会う。きっかけは、共通の友人を交えた食事会だった。望さんは、他人の悪口を言わずに前向きな発言が多いももこさんに「結婚相手はこんな子にしたいな」と好感を抱き、積極的にアプローチ。2次会のカラオケボックスでは、ももこさんの手をずっと握って、その日のうちに自分の思いを告げる。一方、真面目で誠実な人がタイプのももこさんは、望さんの行動に「この人ヤバい、チャラすぎる」と感じ、「絶対に断ろう」と思っていたと振り返る。 ももこ「でも、告白の最後に、彼が『俺、実は義足やねん』って、ひとこと言って。『右足が』『左足が』と説明してくれて、その話を聞きながら、本気で告白していることがわかったんです」 望さんの真剣な告白に誠意を感じたももこさんは「友達からなら」と、交際を受け入れた。話し上手で、優しさと行動力にあふれる望さんに、どんどん心を奪われていくももこさん。交際期間が3年に及ぼうとする2016年、2人は結婚を決めた。ももこさんの母親は望さんの障害を気にすることなく喜んだが、望さんの母親は子どもに障害が遺伝するのではないかと不安げな様子だったという。 それでも、ももこさんは「健常者同士の間に障害のある子どもが生まれる可能性もあるし、障害が必ずしも遺伝するわけではない」と考えていた。何より、彼との子どもが欲しいと強く願っていたのだ。望さんも、同じ障害のある友人の子どもが、障害がなく生まれたこともあり、さほど心配はしてなかった。