現役世代が残らない…「復興住宅」2つの誤算 震災12年、石巻市で進む空き家化と高齢化 #知り続ける
「まず住居を失った方に意向調査を行い、『ここで暮らしたい』という希望者の声を集めた上で復興住宅をつくっていくことにしました。仕事の都合などで入居をやめたり、亡くなられたりということもありますが、もともとの市営住宅に住んでいた人を一緒に復興住宅に移すという政策もやっていました」 こうして2012年から復興住宅は整備され始めた。被災者が順に入居していき、当初の入居率は95%前後で推移していた。だが、2020年に整備が完了したのもつかの間、思わぬ課題が持ち上がってきた。「空き家」と「高齢化」だ。 石巻市議会議員の都甲マリ子さんは「石巻市内でも中心市街地と半島沿岸部の復興住宅ではかなり違う問題を抱えています」と語る。 現在の石巻市は2005年に旧石巻市と牡鹿半島(おしか)を含む6つの町が合併した自治体だ。旧石巻市の市街地部と牡鹿半島など沿岸部の二つの地域では生活環境が大きく異なる。
そこで、住民の意向調査とともに、復興住宅も地域事情に合わせて設置計画が立てられた。市街地にはマンションタイプの集合住宅で、スーパーや病院などに近く、利便性の高い場所が選ばれた。一方、山と海が近い半島沿岸部では津波の被害を受けにくい高台を立地とし、戸建て住宅が数軒立ち並ぶタイプにした。こちらは沿岸部に長く住んできた住民の「元いた地域に戻って住みたい」という意向に沿ってつくられたものが大半だ。 だが、そうした半島沿岸部の復興住宅で、空き家が目立ち始めている。
石巻市中心部から7キロほど離れた万石橋(まんごくばし)。そこを渡ると、太平洋に突き出した形の牡鹿半島に入る。その半島の先端部分にあたるのが「牡鹿地域」である。同地域の鮎川浜にある復興住宅からは石巻市市街地の中心部まで車で1時間近くかかる。こうした半島地域の復興住宅では、例えば鮎川浜の隣、十八成浜(くぐなりはま)には、2016年までに24戸の平屋の復興住宅(1LDKと2LDK)が建てられたが、2021年末には8戸が空き家となったという。その他の半島地域でも30戸近くの部屋が空くことになった。 もともと入居した住民の多くは地元に住んできた高齢者だが、震災からさらに年を重ねる中で、高齢者施設に転居したり、亡くなったりして空き家が増えていったのだ。