「神絵が1分で生成される」 進化するAI、イラストレーターの仕事を奪うのか
文字を入力するだけで絵を出力してくれるAIサービスのリリースが相次ぎ、話題になっている。プロのイラストレーターや「絵師」と呼ばれる創作活動をする人たちにとっては、どのように影響するかがまだはっきりせず、漠然とした脅威となっている。批判が相次ぎ、取り下げとなったサービスも。一方で、AIを味方につけようとする動きもある。(取材・文:長瀬千雅/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
「炎上」続くAIサービス
昨年8月、イラスト生成AIサービス「mimic」がβ版を公開すると、イラストレーターの間から「悪用されるおそれがある」と批判の声が上がり、翌日閉鎖に追い込まれた。mimicは機能改修のうえ11月にβ2.0版をリリースした。開発者の話を本稿の後半でお届けするが、mimic騒動以後も動揺は続く。 11月にイラスト制作アプリ大手「CLIP STUDIO PAINT(クリスタ)」が、画像生成AIを試験的に実装することを発表すると、ユーザーから批判を浴び、翌月撤回した。クリスタを手がけるセルシスによれば、「誰かの著作物を利用して画像が生成されており、その由来が不明であるアプリは使いたくない」「画像生成AI機能はむしろアーティストを苦境に追い込み、その活動を阻害する」といった声が寄せられたという(HPより一部抜粋)。 しかし、技術開発の時計の針が巻き戻ることはないだろう。イラストレーターや絵師は、AIと共生できるのか。
「神絵が1分で生成される」AIサービスの衝撃
イラストレーターの852話(はこにわ)さんは、多いときで一日に数千枚のAIイラスト(AIを使って生成したイラスト)を出力する。やみくもに吐き出させているわけではない。 「(既存のAIをベースに)自分のモデルをつくっているんです。いま流行しているサービスは、すでにある絵を学習データとして読み込ませたものですが、『AIが出力した絵を追加学習させたAI』を実験的につくっています」
852話さんはツイッターで「AIイラスト」が流行するきっかけをつくった一人だ。7月31日に廃墟をモチーフとしたイラストを〈神絵が1分で生成される 参った〉と書き添えて投稿。1万回以上リツイートされ、6万以上の「いいね」を集めた。 9月にはAIイラスト集を刊行。また、ノベルゲームをつくったり、自作の楽曲と組み合わせて動画をつくったりするなど、AIとの共同制作に取り組んでいる。 「もともと終末世界を描いたコンセプトアートが好きで、廃墟にぽつんと人間がいるような絵を自分でも描いていたんです。コンセプトアートは、重厚感やリアリティーを表現するために、写真を組み合わせてさらに背景画と合成するといった手法がとられることが多いんですが、そういうプロセスを経ずに、AIがどーんと出した絵がものすごくいい絵だったので驚きました。人間である自分が、AIが描いた絵をこんなに魅力的だと思えるんだと」