なぜEUROでV候補の仏が敗退するなど大波乱が起きているのか…ベスト8を勝ち抜き頂点に立つのはイングランド?
北マケドニアはネーションズリーグでは一番下のリーグDだったが、グループ4で1位になったため次回からはリーグCに昇格した。リーグBを見れば今大会でベスト8に進出したウクライナとデンマークがリーグAへの昇格を決め、さらに最高峰のリーグAではスイスがベルギー、アイスランド両代表を抑えてグループ2を制した。 大陸全体で新たに構築したシステムが好循環している状況を、南米をはじめとする他大陸との格差がさらに広がっている意味で、鈴木氏は「正直、ヨーロッパがうらやましい」と指摘する。実力が伯仲している構図はフランスとドイツ、ポルトガルが顔を合わせ、いわゆる「死の組」と言われた今大会のグループFにも当てはまる。 「もうひとつのハンガリー代表が、決してアウトサイダーにならなかった。グループリーグの最終戦でドイツに後半終了間際に追いつかれ、結果的には最下位で姿を消したが、あのまま勝っていればドイツを逆転していた。すべての国が強かったことで、グループリーグで消耗したのか。グループFを勝ち抜いた3ヵ国がすべて1回戦で敗退している。 ベルギーに負けたポルトガルはある意味において不運で、4倍近いシュートを放つなど内容的には圧倒していた。しかし、ドイツは今大会を最後に退任するヨアヒム・レーヴ監督の頑固な一面が、たとえば周囲から猛反対された3バックを採用した点や、バイエルン・ミュンヘンのサッカーを踏襲しない点などが完全に裏目に出た。 スイスに負けた後にメディアから『思い上がっていた』と批判されたフランスは、途中出場したキングスレイ・コマン(バイエルン・ミュンヘン)が足の筋肉を痛め、(交代を打診した)ディディエ・デシャン監督と『大丈夫だ。やれる』とかなり口論した末に、結局は延長後半に交代している。レジェンドと呼ばれる監督でもまとめられない点に、スター軍団の難しさを感じさせられた」 フランスは3-1と一時はリードを奪いながら、後半36分にFWハリス・セフェロビッチ(ベンフィカ)にこの試合で2点目を、同終了直前にはFWマリオ・ガブラノビッチ(ディナモ・ザグレブ)にまさかの同点ゴールを決められた。 特に後者は高い位置でポール・ポグバ(マンチェスター・ユナイテッド)からボールを奪うと素早く縦につけて、フランスの守備陣形が整う前にガブラノビッチがゴールを陥れた。スイスが土壇場で実践し、鮮やかに成功させたハイプレスとショートカウンターを、鈴木氏も「ヨーロッパサッカー界のトレンドと言っていい」とこう続ける。 「サッカーは特に守備の戦術がどんどん進歩していく。そのなかでどのようにしてゴールを奪うかと言えば、やはりカウンターとなる。それも高い位置で奪い、一気にカウンターにつなげる。引いてブロックを作って守る昔のスタイルはもう通用しない。どのようにしてボールを奪うのかがメインになっているし、それができないときに最終ラインをできるだけ下げないようにしながら、スペースを消す戦法に初めて出るわけです」