改正入管法で現場は変わったか? 「長期収容」の解消目指すも「監理人」創設で支援者に葛藤 #令和の人権
「早く出られるならいい」監理措置に肯定的な声も
しかし、実際に始まった運用を見て監理措置制度に一定の評価をする支援者もいる。名古屋入管での面会活動を続けているボランティアの西山誠子さんだ。 14年前、知人の誘いで入管に収容されている外国人の面会に付き添い、外国人の人権が軽視されている現実に衝撃を受けた。以来、名古屋市内の自宅から毎週のように入管に通い、収容中の外国人や家族に困りごとを聞く。 改正法の施行直後、西山さんは「監理措置なら早くここを出られる」「ハンストをすれば早い」と、監理措置申請をしながら食事を拒否する外国人が多く出たことを知った。実際に秋ごろの時点で「監理措置を申請したら3週間から1カ月ぐらいでみんな出られるようになった」と西山さんは実感している。
ただ、監理人は配偶者や親族であればなりやすいが、それ以外のケースでは監理人になってくれる人を見つけるのは難しい。10月下旬に西山さんが面会したブラジル人男性は「監理人になってくれないかと何人かの友達に頼んだけれど、みんなやってくれない。(罰則などがあり)コワイと言っている」と明かした。男性は「だから仮放免のほうがいい」と言う。 それに対して西山さんは「仮放免は、今は死にそうに弱った人にしか認められないよ」と諭す。監理措置が始まったことで仮放免の許可基準が「健康上、人道上その他これらに準ずる理由」によると明記されたからだ。「仮放免許可を待っていたら時間がかかり、ストレスで皆すぐ病気になってしまう。監理措置で早く出られるならそのほうがいい」と西山さんは考える。 一方で、懸念もある。制度上は、外国人側から監理人に報酬を払うこともできる。つまり「お金を払うので監理人になってほしい」と依頼できるということだ。 「見ず知らずのブローカーのような人が外国人をだまそうとしていたらどうするのか。入管側はちゃんとチェックできるのだろうか」と西山さん。同様の声は外国人支援に当たる弁護士からも上がり、「監理措置制度は貧困ビジネス化する」と指摘されていた。名古屋入管は今のところ制度の運用で大きな問題が起こったとの報告はなく、「監理措置決定の数(数字は現状、非公表)は増加しているが、職員配置を見直すなどして対応し、円滑かつ適切に制度を運用している」と取材に答えた。