改正入管法で現場は変わったか? 「長期収容」の解消目指すも「監理人」創設で支援者に葛藤 #令和の人権
収容はしないが…支援者らに報告求める「監理人」制度
改正法では、古池さんのような支援者にとっても選択を迫られる「監理措置」という制度が新設された。 入管では無期限に続く長期収容や、ウィシュマさんの事件が象徴するように収容中の不十分な医療提供体制などが問題となってきた。監理措置とは、収容はせずに「監理人」のもとで社会生活をしながら退去強制手続きを進める制度だ。 監理措置を受ける外国人(被監理者)は、退去強制令書が出る前に一定の条件を満たせば「報酬を受ける活動」、つまり就労が認められる。 一方で、監理人になるには入管に身分を証明する資料を提出した上で、被監理者である外国人の生活状況などを把握し、必要な届け出や報告をしなければならない。それに違反すれば処罰(10万円以下の過料)を受けることもある。古池さんは「罰則があるようなら監理人にはなれない」と抵抗感を示す。
入管収容中のウィシュマさんを支援していた名古屋市の支援団体START(スタート)も、改正法の施行前から一貫して監理措置制度に反対する。代表の本間鮎美さんは「監理人になれば入管の求めに応じて被監理者のプライバシーも報告しなければならない。人権侵害を強要させるような制度は絶対に認められない」として10月、他の団体とともに監理措置制度の廃止を求める申入書を名古屋入管の局長宛てに提出した。 そもそもの問題の根源は、入管による送還ありきの方針だと本間さんは指摘する。入管の狙いは監理措置や仮放免、収容を「アメとムチ」として運用しながら、日本への在留をあきらめさせて母国に送還すること。ウィシュマさんが「見殺し」にされたのも、人命より送還を優先したからだと訴える。 「私たちは衰弱するウィシュマさんに点滴や入院などの措置をするよう入管に求めたが、何の対処もされなかった。裁判でも、なぜこんなことが起こったのかという問題点が明らかになっていない。監理措置ができても、いずれまた収容された人たちに同じ問題が繰り返される。入管の送還一本やりの方針は変わらないどころか、むしろ強化されていると感じる」