改正入管法で現場は変わったか? 「長期収容」の解消目指すも「監理人」創設で支援者に葛藤 #令和の人権
昨年6月、出入国管理及び難民認定法(入管法)の改正案が国会審議の場を騒然とさせた。送還忌避や長期収容などの問題を解決するという政府・与党側に対し、難民認定申請が実質3回目以降できなくなるなどの制度が「改悪だ」とする一部野党側の主張で参院の法務委員会は紛糾。採決の際、れいわ新選組の山本太郎代表がダイブして阻止しようとする場面も報じられた。 その改正入管法が今年6月に全面施行されてから半年余り。過去最高の約359万人(6月末時点)という在留外国人に対応する入管の現場では何が変わったのか。3年前にスリランカ人女性、ウィシュマ・サンダマリさんの死亡事案が起こった名古屋出入国在留管理局(名古屋入管)の内外を取材し、難民や在留外国人の問題をどう考えるべきかを探った。(取材・文:関口威人/撮影:加藤直人/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
難民申請も認められず「ゴー・ホーム」と言い放たれ
12月3日。アデバ・トレゾワさんの「出頭日」がやって来た。月に一度、名古屋入管3階の「審判部門」の窓口に顔を出す日だ。 「いつものこと。緊張はしない」 そう言ってトレゾワさんは窓口前のベンチに座って順番を待った。 アフリカ・コンゴ民主共和国で生まれ、紛争の混乱を逃れながら2019年に就労ビザで来日。岐阜県内のリサイクル会社で働き、2年後には自分で会社を立ち上げた。しかし、同時に申請していた難民認定は認められず、やがて在留資格も更新できなくなった。 「ゴー・ホーム(国に帰れ)」。当時の入管職員はこう言い放ったという。トレゾワさんは「ショックだった」と今も寂しそうに振り返る。
孤児として育ったトレゾワさんには身寄りがない。母国に戻ったら一度入隊していた反政府軍にまた引き込まれてしまう。そう訴えて帰国を拒み、本来は入管施設に収容されてもおかしくはないが、一時的に収容を解かれる「仮放免」状態が認められて1年余り。 愛知県内でアパート暮らしはできるものの、働くことも、許可なく県外に移動することもできない。近くの畑を借りて作る野菜を子ども食堂などに届けたり、講演会でアフリカの現状を訴えたりするのが生きがいだ。日常生活は隣町で日本語教室のボランティアをする古池幸生さんが「身元保証人」となって援助してくれており、仮放免の延長に必要な手続きである出頭にも付き添ってくれる。