「おじさんの聖地だったのに…」「カフェじゃないんだから」との声も。吉野家の「おしゃれ化」に抱く“モヤモヤ”の正体とは?
デフレが終わり、あらゆるものが高くなっていく東京。企業は訪日客に目を向け、金のない日本人は“静かに排除”されつつある。この狂った街を、我々はどう生き抜けばいいのか? 新著『ニセコ化するニッポン』が話題を集める、“今一番、東京に詳しい”気鋭の都市ジャーナリストによる短期集中連載。 【画像で見る】黒い吉野家で提供されている、おしゃれなメニューや、内装の様子 平成には熾烈な安値競争を繰り広げ、デフレの象徴とされてきた牛丼。現在では各社の値上げが進んだほか、「ワンオペ」と批判を集めた一部の会社の労働環境も改善するなど、様々な点で変化が生じている。
牛丼チェーンを愛するひとりとして、筆者も定期的に記事を書いており、例えば10月に東洋経済オンラインに寄稿した記事「牛丼チェーン『深夜料金』に不満の声が続出する訳 外食チェーンのインフラ化に我々は慣れてしまった」では、深夜料金に不満の声が出る理由を、牛丼チェーンのインフラ化という観点から論じた。 そんななか、今回取り上げるのは「吉野家のオシャレ化」である。明るく、清潔感のある空間に変わるのは良いことに思えるが、ネット上では「おじさんの聖地だったのに……」「カフェじゃないんだから」といった、どこか変化を嘆く声が上がっているのだ。一体なぜなのだろうか?
■吉野家が女性やファミリー層も入りやすい店に変化? 現在、吉野家で広がっている、新しい店舗のスタイルである「クッキング&コンフォート」。 これは「黒吉野家」とも呼ばれ、従来のカウンター席オンリーの「ザ・牛丼屋」のイメージ(オレンジ吉野家)から脱却を図り、カフェとしての利用もできる。 【画像8枚】まるでカフェのごはん? 黒い吉野家で提供されている、おしゃれなメニューや、内装の様子 モダンでオシャレな店内には植物が植えられていて、ウェル・ビーイングな雰囲気。筆者も作業をするためにたびたび訪れるのだが、実に居心地がいい。
実はこうした吉野家の「変化」の裏には、吉野家のみならず牛丼チェーン全体の「客層のシフト」が隠されている。その変化と、ビジネスとしての成否を考えたい。 吉野家「クッキング&コンフォート」店舗は、現在436店舗ある。国内1249店舗(11月現在)のうち、約35パーセントがこの業態だ。2025年2月末までに、532店舗を目指していて、出店拡大に意欲を見せる。 この店舗は、吉野家のこれまでの方向性から大きな変化を見せている。具体的に言えば、「1人で黙々と食事をする空間」から「女性やファミリーがゆったり居られる空間」への転換だ。