「大化の改新」「明治維新」に次ぐ日本史上3度目の「文明開化」とは? 頑固な年寄りの抵抗に負けずにマイナンバーを進めるべき理由
2024年秋に健康保険証を廃止し、マイナ保険証に完全移行する予定となっています。ただ、いろいろなトラブルが生じていることから、岸田文雄首相は24日、立憲民主党の泉健太代表への答弁で「さらなる期間が必要と判断されるなら必要な対応を行う」と述べました。 建築家で、文化論に関する多数の著書で知られる名古屋工業大学名誉教授・若山滋氏は、「新しい制度に切り替えるときはスパッとやった方がいい」と指摘します。若山氏が独自の視点で語ります。
「デジタル化」という課題
人はそれまでのやり方をなかなか変えないものである。成功体験があって現状に満足していればなおさら固執する。 マイナンバーカードを健康保険証として使うことで、いろいろトラブルがあったようだが、近所の医師にきいてみると「最初は抵抗があったが使ってみればとても便利だ」という。紙の保険証を見てデータを入力する手間が省けるからだろう。数年前、コロナの感染者数を把握するときに、保健所がデータを入力するのにてんてこまいだった。だいぶ前には、大量の年金の支払いデータを消失させるという大事件があった。厚労省をはじめ日本の公的機関はDX(デジタルによる改革)がたいへん遅れているようだ。 ICを内蔵したマイナンバーカードが普及すれば、早い上にヒューマンエラーがなくなる。野党は紙の保険証も残せといっているが、新しい制度に切り替えるときはスパッとやった方がいい。今の日本の政治は、抵抗勢力と妥協して中途半端になりがちだ。 実は、かくいう僕も、現役教官時代はデジタル化に対する抵抗勢力の雄であった。理系の大学であったから比較的早く教育と研究のデジタル化が進み、僕も「年のわりにコンピューターに強い」といわれたのだが、大学の運営制度がデジタル化することには抵抗があったのだ。 今考えれば、文科省が進める国立大学の法人化そのものが気に入らないのと、若手が進める改革に対する年長教授のワガママでもあった。年寄りとはそんなものだ。要するに頑固。だから若手に権力をもたせなければ改革など進むはずがない。 それにしても「デジタル化」というものの社会変革力は驚くべきものである。計算機と呼ばれたコンピューターから、パソコンが生まれ、インターネット時代となり、AIが登場する。社会そのものが巨大な電脳によって管理されるようになってきた。 この変革に日本は遅れている。アメリカにはもちろん、急速にデジタル化を進める中国にも、北欧の小国にも遅れている。日本は工業社会が熟成し、行政も、企業も、その他の組織も、社会制度が精密に管理されているので切り替えができないのだろう。一つ前の時代の覇者が、次の時代の敗者となるのはよくあることだ。 日本という国は今、この「デジタル化」という課題をどう評価し、どう取り組むべきかという正念場にある。この問題に答えるには大きな文明史的な視点が必要だろう。僕はこれを、日本史上3度目の「文明開化」と位置づけるべきではないかと考えている。日本人は史上3度目の「覚悟」を決めて取り組まなければならないということだ。