健康の元凶はストレス!1日たった10分で、言葉によりリラックスを導くセルフコントロール術/ハーバード大学・根来秀行教授
自律訓練法の最後は消去運動で意識レベルを戻して終了
「自律訓練法をおこなっている間は、眠りと目覚めの中間のような状態になっているので、意識や筋肉の状態を通常レベルに引き上げるための消去運動を行なって、日常生活にスムーズに戻れるようにします」 寝る前に布団に入って仰臥姿勢で行ったら、そのまま眠れそうだが、やはり消去運動をしてから眠らないといけないのだろうか? 「いいえ、就寝時ならとくに問題ありませんから、途中で目が覚めても消去運動をする必要もありません。自律訓練法をしながらそのまま入眠する習慣がついて、睡眠障害を克服する人もいます。 ただ日中に自律訓練を行う場合は、そのまま30分以上眠ってしまうと体内時計が乱れて夜の睡眠に支障が出てくることもあります。 昼ごはんを食べて副交感神経が優位になったときに椅子に座って行い、最後に消去運動でリセットすれば、脳がスッキリして午後からの活動もはかどりますよ」
《消去運動のやり方》 1 瞼を閉じたまま、両手を握って開く(グーの状態からパーの状態にする)をゆっくり繰り返す
2 両手を握ったまま、腕の曲げ伸ばしを繰り返す
3 大きく伸びをしながら鼻から深呼吸を繰り返し、最後に目を開ける
根来教授ご自身も自律訓練法をリラックス法として取り入れているのだろうか? 「僕自身は自律訓練法だけでなく、マインドフルネスや瞑想、呼吸法やウォーキングなど、いろいろ組み合わせてやっています。本質さえ理解すればどんなメソッドも自分で応用が効くようになりますから」 初心者の場合、自律訓練法のような自分と向き合う系ってやっぱり雑念が浮かんじゃって挫折することが多い気が。根来教授クラスになると、雑念は浮かばないのだろうか? 「もちろん浮かびますよ! 空海じゃないんだから(笑) 瞑想やマインドフルネスもそうですけど、雑念が湧くのは当たり前のこと。雑念が浮かんできたら浮かぶにまかせて、気にせず言語公式を繰り返してください。 どうしても気になるようなら、いったん消去運動をすませて、すぐに練習に戻るといいですよ。 雑念が浮かぶのは心の奥底にあるものが自然に解放されているからで、いい方向に向かっている過程です。いい方向は直線ではなく波型に進むのでがっかりしないで、焦らず気楽に続けてください。 自律訓練法をおこなうと体の緊張がほどけるため、血流が良くなったり、筋肉がゆるんだり、内臓が活発に動いたりと、さまざまな変化が起こり、その人の持病や状態によっては何らかの症状が出ることがあります。 よく頭痛が生じる人、糖尿病、心臓疾患、妄想の出る精神疾患のある人などは、状態が悪化してしまう場合もあるため、自律訓練法を試みる前に医師に相談するようにしてください」 自律訓練法のレッスンはこれにて終了。そして、この連載も完結。10年間にわたりお教えいただいた根来教授に深謝する。 年を重ねると思いもよらぬ不具合が出てきて不安になりがちだが、この連載を通じて自分の体に未知の世界が広がっていることを細胞レベルで教えていただき、いくつになっても体には秘めた可能性があるということを信じられるようになった。 「こちらこそ、楽しかったです! これまでいろいろなテーマを取り上げてきましたが、その根幹にあったのは『ビヘイビア・ヘルス』~自分の行動や生活習慣を変えることで、すこやかな体と心を自分自身で築いていくという考えでした。僕のお伝えしたことが、その一助になればうれしいです。またどこかでお会いしましょう。皆さん、今日も素敵な一日を!」