9年で668社の神社が減少 危機の「祭り」に女性や地域外の人たちの参加、マッチングサービスも #絶滅危惧文化
神社がなくなるとは何を意味するのか。 「法的には、宗教法人格が一つ減ることを意味します。単に解散だけのケースもありますが、多くの場合、解散と同時に企業の吸収合併に相当する神社合併が行われます」 そう語るのは、宗教法人の行政手続きを専門に扱う行政書士で、自身も富士浅間神社(群馬県)で神職の役職の一つである禰宜(ねぎ)を務める小峯孝洋さんだ。神社合併では、その神社の氏神に他の神社へ遷(うつ)ってもらう合祀祭と呼ばれる儀式が執り行われるという。 その前に必要なのが宗教法人法に基づく法律上の手続きだ。まず対象となる神社が所属する包括団体(多くの場合は神社本庁)に合併を申請する。次いで、神社の掲示板などに公告文を貼りつけて地域に合併を周知する。最後に各都道府県庁に申請し、審査が通ったら、法務局で合併の登記を行う。その段階で合併される側の元の宗教法人が解散される。 ただし、法的手続きだけですべて解決するわけではない。減少中とはいえ、今なおコンビニエンスストアの数(2024年11月現在、5万5692店)より多い約8万の神社が全国各所に鎮座している。それに対し、宮司など神職の数は約2万人。じつは、神職はその人数の4倍にあたる神社を管理している。それを可能にしているのが複数の神社の兼務だ。多いと30社以上を兼務している宮司もいると小峯さんは言う。
「地域で神社を支えるのは氏子ですが、その氏子が極端に減ってしまうと、祭りや境内の維持管理もできなくなっていく。資金不足状態に陥り、宮司は周辺の神社との合併を考え始めます」 法的手続きを行わず、管理者である宮司がいなくなった神社は不活動宗教法人となる。そうなると、乗っ取られて脱税などに悪用される恐れがある。したがって、実質的な活動がなくなった段階で、解散・合併手続きをするのが望ましいが、実際には合併せず、放置されている神社が多いという。 「合併の手続きは煩雑で、費用もかかるからです。数は少ないとはいえ残っている氏子にとって愛着のある神社から氏神がいなくなるのはつらいことでしょうから、宮司から『もう合祀しましょう』となかなか切り出しにくい事情もある。私も神職なのでその気持ちはよく分かります」